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森と林業と田舎の本

2023/03/23

木製家具の輸出が増える理由

そろそろ、立ち直らなければ。

 

このグラフを見ていただきたい。

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林産物輸出額の推移なのだが、これから何を読み取るべきか。

私が注目したのは、緑の部分だ。2020年から突然登場して、しかも伸び調子。輸出総額の約1割を占めている。これは有望ではないのか。その品とは、木製家具である。

これまで林産物輸出=木材輸出であた。製材も多少はあるが、多くは丸太の、それもB材C材が中心だ。価格は安く、安いから売れるという日本産業の凋落を示すような代物だと思っていた。

だが、家具とは? 家具は輸入一辺倒かと思っていた。事実、ニトリなどの家具は中国やベトナムで作っているものが多い。国内製造としても、肝心の木材は外材となりがちだ。なぜなら家具になるのは広葉樹材が中心だが、国産み微々たる量しかないからだ。スギやヒノキの家具は、量も貧弱だが性能的にも期待されていない。

だが、家具は加工品であり、原木で売るよりずっと利益率が高い。そして木肌を前面に出すから愛着を持ってもらえる用途だ。本当に日本製の木製家具の輸出が増えているの? 何かからくりはない? 

そう思って調べてみると、どうやら本当に国産家具の人気が高まり、海外、それも中産階級以上で売れているようなのだ。

なぜか。どうやらメーカーの努力によってデザインなどが評価され始めたらしい。実際、木材加工の技術は、日本が世界的にも高いという評価がある。木工職人の数も欧米などよりずっと多い。ただ家具作家の一点ものの作品となってしまい、販売ルートも確保していなかった。

だから高品質でデザイン性も高い。にもかかわらずブランディングが未熟で安い…。富裕層はイタリア製などの超高級家具を買うが、その一つ下のランクで価格も安いが、品質的には高級家具に近い。デザインもかなり富裕層ウケするように磨かれてきた。
なかには海外輸出を前提に、デザイナーも一新してブランディングを進めたメーカーもある。そのおかげで海外のバイヤーから関心を集めてきたことが、輸出実績も出たのであった。

なんとも悩ましい話ではあるが、家具そのものが評価されているのであり、妙なからくりはなさそうだ。それに安いと言っても原木で売るのに比べるとはるかに利益は出るだろう。

ただ国産広葉樹材は供給が不安定で、量もないから、結局は外材に走る可能性もある。その中で未利用のコナラ材なども取り入れた家具も生み出されている。あるいはスギやヒノキで高級家具をつくる挑戦も行われている。

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コナラ材の椅子(ワイスワイス)

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吉野杉の曲面椅子(スタジオジグ)

さらにフランウッド(ケボニー)化することで、スギも広葉樹材なみのハードウッドにするという手もあるかもしれない。ケボニーの家具も、ノルウェーでは作られている。その分野も期待できるかもしれない。

久々にまともに日本林業の明るい話題だと思えた。これまで「輸出が増えています~」と言ったら曲がった丸太ばかりを捨て値で売っているし、「木材生産量が増えました!」というのもバイオマス燃料として燃やす用途ばかり。「国産広葉樹の利用も注目されています」と自慢するが、なんのことはない、使い道は製紙チップや菌床用のチップがほとんど。クソのような商売やっているな、と思ったのだが、日本の木工技術で世界に売り出せるなら、そこにこそ希望がある。

2023/03/22

本日も…呪いの廃神社

今日も家から出ず、ゆるゆると寝っぱなし。おかげで多少は身体が楽になった。

せっかくだから、昨日に続いて呪いの?廃寺廃神社を。

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生駒山中にあったのだが、わりと規模が大きい。いくつもの建物があって、泊まり込み修行のできるような滝行場がいくつもある。しかし、人気はない。なんだか人物の石像があったので、設立した教祖?像かもしれない。しかし、いくつもの神社と寺の名前があって、みんな合祀しているのか。よくわからん構造である。

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誰か、謎解きをしてくれ。かつて実業界で財産を膨らませて、最後は宗教にのめり込む…なんてケースを妄想するなあ。

こんなところばかり歩いて、中をごそごそ探っているから呪いをかけたのかもしれない。

 

2023/03/21

最凶パワースポットの呪い

ここ数日、体調が下り坂。昨日は遠出していたのだが、帰って来たら身体が動かなかった。今日になると喉の痛みに鼻水。まさか、いまさらのコロナではないだろうが、風邪を引いたか。

とうとう午後は寝込んでいだのだが、そんなときに限って仕事上の重大ミスが発覚して、始末になんだかんだやらねばならないことが出てくる。

なんだかなあ、ついていないなあ、と思っていたら思い出した。このところ、なぜか廃墟じみた神社仏閣を訪ねることを重ねていたのだが、そのうちの一つが白鷹大神だったのだ。

奈良の最凶パワースポットとか心霊スポットとして全国的に有名とか。。。私は、そんなこと知らずに、たまたまグーグルマップに記されていたので、なんだ、いつも森歩きしている近くじゃないか、行ってみるか、と軽いノリで出かけたのであった。が、白鷹大神でググってもらったらわかるように、心霊スポット探検記がずらりと並んでいるような有様で、その手のファンが通っているところらしい。

多少説明すると、戦前から戦後まで、ここに強烈なシャーマンとして世に知られた巫女・中井シゲノが開いた霊場だった。かつては大賑わいの地だったのである。それが本人が亡くなると、後継者もいなくて荒れ放題……となり、いつしかパワースボットだの心霊スポット扱いされるようになったそう。

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私が山道を抜けてたどり着くと、以外や参拝者?はほかにもいた。それも若いのに黒装束の巡礼者ぽいカッコした人とか、何かとそれらしい雰囲気。思っていたより荒れていず、最近はまた地元の人たちが清掃して真っ当な神社になりつつあるようだ。

ああ、ここを訪れたころから体調が下り坂になったんだ、と気付く。

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この鳥居の奥に洞窟があって、奥が見えない。そこに潜入しようとしたからなあ。人がいなかったら、匍匐前進でもぐり込んでいた。呪いをかぶったか。

今日明日は寝て暮らすことにする。『山林王』発売日に寝込んでいたら、今度は土倉家の呪いをおうてしまったことになるわ。

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ちなみに、同じ森の中に、「滝寺磨崖仏」。滝寺はなくて、廃寺になったか。ただ岩に線刻の仏像だけがある。これ、8世紀の建造と鑑定されていて、日本最古級の磨崖仏なのだ。こちらにも参拝して拝んでおいたから、白鷹大神の呪術は、抑え込んでくれるだろう。こんなのが身近にあるのって、どうよ?

 

2023/03/20

薬師寺の台湾紅檜

なぜか薬師寺に行ってきた。

用事があったからだが、その件はさておき、せっかくだから参拝する。実は、薬師寺をちゃんと見た記憶がない。自宅からは比較的近いのだが……30年ぐらい前に取材で訪れているのだが、その際の印象が最悪というか、クズ坊主に出会ったから忌避感があるのだ。

今回は、30年経って多少は癒えた心の傷(^^;)ワハハ のつもりで見て回った。

そこで目についたのが、この巨木。

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直径2メートルはあるか。樹種は台湾紅檜である。薬師寺は白鳳文化の仏像や建築物が多くて国宝ぞろいだが、昭和~平成に復原修復したものも多い。講堂や回り登楼、そして西搭などはみな復原である。その木材をどうやって手に入れたかという話は端折るが、ここでは台湾から寄贈を請けた巨木が展示されている。樹齢2500年だという。

どうやら芯は抜けていたようだが、その周辺部分だけでも直径80センチ級の柱が取れたようだ。年輪の細かいこと。紅檜はタイワンヒノキの近縁種だが、ちょっと違う。ただどちらも巨木になり銘木なので、戦前から日本が切りまくった。さらに戦後の国民党政府も伐り尽くして、もはや輸出禁止になっているものだ。それを台湾人の好意で寄贈されたらしい。でも、もうダメだよ。

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これは土倉龍次郎が阿里山を探検した際に撮影したとされる写真。真ん中に小さく写っている人物を見つけてほしい。背後の木がいかに大きいかわかるはずだ。タイワンヒノキ、ベニヒの森も龍次郎が発見したのかもしれないのだけどなあ。

それはともかく、いつか日本各地に残るタイワンの木材の軌跡を追いかけたいと思っている。

 

2023/03/19

カラスに襲われる女

近隣の森林公園を歩いてきたのだが、そこで見かけたのが「カラスに襲われる女」。

女性二人組なのだが、カラスはそのうちの一人を執拗に襲う。目の前まで近づき、ときに羽ばたいて襲いかかる。とうせんぼする。女性は、最初懐かれていると思ったみたいだ。しかし、凶暴なので持て余し、危険を感じ始めたみたい。私はというと、少し離れたところから見学(^^;)。

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さて、ヒッチコックの「鳥」のようになるか。。。。なんとかやり過ごしたかに見えた。

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カラスはハシボソか。森に棲むカラスだが、この公園では人になれているみたいだ。

が、この後、カラスはまたも女性に襲いかかり、手にしていたバッグの中に顔を突っ込んで袋をつまみ出した。そしてさっと高みに飛び去る。

どうやらごみ袋だったようだ。ペットボトルなどが散乱する。カラスがつまんだのは、オニギリの包み紙(プラスチック)のよう。中身は入っていなかったが、臭いがしたのだろう。なるほど、これを狙っていたのか。女性も、食べた後の品だから、狙われるとは思わなかったみたい。カラスだって、プラ包みを食べられるわけなく(食べたら死ぬ)、臭いを嗅いだだけで終わるだろうが。

しかし、ここまでカラスも増長しているだね。人を襲って餌を取ることを覚えているのだ。

ちょうど同じ日にテレビで人里出てきたニホンザルのニュースをやっていたが、カラスやサルだけでなく野生動物が頻繁に人里、というより人そのものを狙いだしたようだ。私の予言は当たっているぞ、と喜んでいる場合じゃないが、今後もっと厄介な事件を引き起こすかもしれない。獣害は、農作物や森林だけではない。人そのものを襲う確率は高まっていく。

もっとも、そのうちカラスもプラゴミを食べて苦しむ個体が増えるかもしれない。イタチごっこ? イタチは、どうだろうか。

 

2023/03/18

木製マグカップが作られた場所と価格

たまたま訪れたショッピングセンターで、「刑務所作業所」の製品販売会が開かれていた。製品なんだな、作品でもよいと思うが。

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主な作品は木工品。刑務所では、職業訓練も行われているが、その一つに木工技術がある。小は靴べらやスプーンから、大はタンス・テーブルまで結構幅広く作れるようだ。なかには巨大なケヤキ一枚板テーブルもあって、価格も40数万円とそこそこの金額になっているが、こうした材料の仕入れから考えると、結構な(刑務所側の)手間と、職人(つまり受刑者)の技量が求められるだろう。

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細部を見ると、技量的には悪くない。まあ、デザインがイマイチな気はしたが……。今、この手の家具は需要ないだろ。

もちろん、この手の家具に私の手が出るはずはなく、小物を物色する。まな板の様なシンプルなものもある。カエデ材を使っているから重い。ちょっと分厚いかな。結局は、器系に目がむく。

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選んだのはこれ。ちょうど今使っているマグカップは塗料が少し禿げてきたと感じていたので、新しくするのもよいか、と。把手と一体型だ。無垢から削りだすのだからわりと難しいものだ。価格的には一番高かったが、多分、国産木工品としては安いからお得感はあるかな。私の木製マグカップ・コレクションが増えていく。。。

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税込み2750円。あ、この価格は………あと5日で発売される『山林王』と一緒ではないか!

安いよ、これは。お買い得だ。『山林王』と同じ(^_^)\(^O^)/みんな、買いましょう。(どっちを?)

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2023/03/17

古紙回収から知る価格決定要素

なじみの古紙回収のおっちゃんがいて、いつも出すときに世間話をする。

今回は、古紙の扱い方とお値段について聞く。

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新聞紙と広告チラシは分けた方がいいの?
「これ、後から分けているんだよ。昔は持ち込んだ古紙の引き取り先が分けていたんだけど、いまはこっちでやれって」

なんか、世知辛くなっているようだ。でも、やっぱり広告チラシの方が高くて、新聞紙は安いから分けないと値段がつかないのだろうな。
「今は新聞紙の方が高いよ。広告チラシは半値」。

えっ、これは驚いた。もともとチラシの方が高いと聞いていたのだけど、普通に考えてもチラシ用のコート紙などは紙としての品質も高いパルプを多く使っているはずだ。新聞紙はリグニンも抜いていないクラフトパルプである。それなのに……。
「一時期、新聞紙がキロ4円、チラシが2円になって、さすがに食えない、もうやめだってなったけど、元締めが値段が元にもどるまでと10万円の貸し付けをしてくれたんだ。さもないと収集する人がいなくなっちゃうからね。今は、新聞紙で11円」

なんで、そんな値段が逆転してしまったのか。
「結局、流通の問題なのよ。チラシはだぶついて新聞紙は足りない状態だから。すると新聞紙の方が高くなる」

これは、目からうろこだ。そうか、ものの価値は需要と供給のバランスで決まり、それを流通が左右しているのだ。素材の品質だけで価格は決まらない。どんなに優秀でもだぶつけば下落する。品質が悪くても欲する人が多ければ価格は上がる。紙だけではない。すべての商品の基本だ。

意外とこの事実に気付かない人が多いのではなかろうか。「こんなにいい品なのに、安すぎる」と文句いうケースをよく目にする。それに流通コストを忘れてもいけない。ペットボトル1本の中に含まれる飲料の価値は、1、2円だ。ジュースとか茶など、実はたいして高くない。しかし、ペットボトルはもちろん飲料を詰めて封印する機械や場所、そして輸送コストなどが入る。実はその後に売れ残る量も計算して、その分を上乗せする。全部合わせて1本当たりの値段が決まる。

気になって、古紙の価格推移を調べてみた。すると、新聞紙の価格が高騰していた。その理由は韓国で品不足のためらしい。なんと、日本の新聞紙は韓国に輸出されているのだ。しかし、4月から下落する恐れが強いとか。高値を呼べば、大量に集まり、それがだぶつくと下落する。なんとも経済学の基礎のような話。

思えばウッドショックも同じだろう。高騰したかと思えば下落し始め、そこにウクライナショックも加わってまた高止まり。木材だけでなくロシアのパルプが入ってこない国は紙価が暴騰しているらしい。

古紙回収も楽じゃない。かつて25円まで暴騰したときは、トラック一杯持っていったら札束が縦に立ったそうだ。ざっと数百万円か。その頃は、電車に入場券で乗って、網棚の新聞を集めて回ったという。「もう、あんな時代は来ないだろうなあ」というが、さて。

しかし新聞の講読数が激減しているのだから、徐々に回収量も減るのは間違いない。すると業者が成り立たなくなって一斉廃業。そうなると再生紙業界全体が破綻する。ボランティアなどで集めていてはダメなのだ。

 

2023/03/16

離島の思い出~黄島

昨夜、NHKで「離島で発見 ラストファミリー」という番組を見た人はいるだろうか。そこで登場したのが五島列島福江島近くの黄島(おうしま)。

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山下住職とは、今も年賀状のやり取りを続けている。しかし、年をとって貫祿がついたな(私もだ)。初めて会ったときは住職になったばかりの頃ではなかったか。彼は、すでに島内の洞窟を探検し尽くしていて、どこにあるのか教えてもらったものである。

小さな火山島なのだが、私には強烈な思い出の場所である。

最初に訪れたのは20代の時で、この黄島の沖合の無人島(大板部島)に洞窟があると聞いて、その探検のためだった。海を渡って島のジャングルをかき分けて洞窟を探すのは楽しかったのだが、実は黄島でも洞窟調査を行っていて、さらにそこで冬にはお祭りを開くと聞いて、これは行かねば! と奮い立って行ったのが20年後(笑)。

その記録は、こちらをどうぞ。

黄島探検

なかなか貴重な記録だと思うよ。洞窟内で観音祭(法要というべきか。しかし昔は、この中で宴会もしたらしい。)を開くというだけでも民俗的に価値があるし、戦前は捕鯨基地があったそうだ。さらに隠れキリシタン伝説もある。ただ、現在は島民も減って島外から来る人が増えているとか。私が行ったときは14,5人全員島民だった。
当時は、各雑誌に持ち込んでも興味を示されなかったけど、編集者に見る目がなかったと思いたい(笑)。そういや本ブログにも記している。

ヒミツの黄島・大板部島 

実際、それから数十年?してテレビなどに取り上げられることも出てきたのだ。二番煎じだね( ̄ー ̄)ニヤ。

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また行きたい、と猛烈に思う。そろそろ20年経つし(^^;)。

観音祭は冬だから1年後になるが、暖かい時期に行けば、海も楽しめるなあ。ただ、初めて行くときに一緒に行った洞窟探検家は、数年前に急逝したのだった。。。

 

2023/03/15

林業産出額全国一位は長野県! なぜ?

ちょうど1カ月ほど前に、「宮崎県が木材生産額日本一になった」と紹介した。

宮崎県が木材生産額日本一になった裏側

ところが、本日発表になった林野庁の「モクレポ№18」を見ていると……。

まず2021林業産出額のグラフがあるのだが。

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その次に、林業産出額及び部門別産出額の上位10県 という表がある。

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これを見ると、なんと全国一位は、長野県であった! 宮崎県は4位だったのである。

あれえ、だよな。理由は、グラフを見ればわかることだが、林業産出額と言えばキノコや薪炭、その他特用林産物も加わるわけだ。
そして長野県はキノコ栽培額が非常に多い。木材生産額では10位以内に入っていないのに、総額で一位になってしまう。また林野副産物と分類するマツタケや生漆などが長野県は一位なのだ。そうかマツタケか……。

おかげで長野県がもっとも林業が盛んな県ということになるのだろう。

そうか、もはや林業とはキノコと漆でいいのではないか。金額も木材をはるかに引き離している。木材は副産物ということで(^^;)。

(ちなみに、この都道府県統計では、木材産出額にパルプ工場が直接入荷するパルプ用素材、輸出丸太及び燃料用チップ素材の産出額、薪の産出額が含まないそう。)

 

 

2023/03/14

読まずに書く「マザーツリー」論

マザーツリー  森に隠された「知性」をめぐる冒険」という本が売れているようだ。

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私は読んでいないが、内容はだいたい知っている、つもりになっている(^^;)。まあ、テレビや雑誌、ネットでも多く紹介されているからね。そこで読まずに評論するという無茶に挑んでみる。(こんなアホな真似ができるのは、自分の趣味のブログだからだ。公的な文章として書いたら大馬鹿野郎になってしまうよ。)

まず、内容の胆となっているのは、森の木々は菌根のネットワークでつながれているという指摘だろう。これも、すでに多くの研究が出ているので意外感はない。大いに賛同する。この場合、樹木の根が先か、菌根が先かという疑問はあるのだが。この点は共進化ということにして納得しておこう。なにしろ読んでいないからね。。。

私がもっとも気になるのは、なぜタイトルをマザーツリーしたのか、という点だ。マザーツリーと言えば、偉大なる母なる樹を指すだろう。そうした巨木を中心に森林生態系が成り立っているという話なのか。なにしろ読んでいないのでわからない(^^;)。が、そんな前提より、多種多様な生命体の共生がテーマではないのか。異種同士が助け合うことに知性を発達させて、森全体が一つの生命体である……少し前のガイヤ理論を発達させたかのよう。そういや映画「アバター」でも、マザーツリーと言える巨木があり、生命体はみなつながっている(アクセスできる)というのが前提の世界観だった。こうした「中心となる母なるもの」は一部の人には感動を与えるよう。

たしかに巨木があると、その陰に守られて生きる生物がいたり、また巨木のもたらす恵み(果実や樹液など)を求める動物も少なくない。
だが生態系は、むしろ様々な大きさ、樹種、性格の違う生命体の集まりと思った方がよくないか。菌糸はそれらを仲立ちしているが、それは上下関係ではなく並列につながる関係だろう。巨木は必ずしも必要ないはずだ。巨木は土の養分や光を大量に奪うから、周辺の若木にとっては成長の障害になることもあると思う。まあ、老害だね(^^;)。そんなことは書いていないとは思うが、読んでいないのでわからない

それとも、菌根ネットワークこそがマザーツリーという見立てなのだろうか。いやいや著者が女性だから、著者そのものがマザーツリーを演じているのか。わからん。なにしろ読んでいないからね……。

ただ、森林の生物多様性が、より重要であるということを主張しているようだ。同じものばかりが並ぶのではなく、多種多様な生物……樹木に草に昆虫に動物、そして菌類。また細菌やウイルスも加えるべきだろう。そして、それらがお互い助け合うことでより高次元な生態系を作っているし、それが知性を生み出すということを書いているらしい。なにしろ読んでいないので詳しいことはわからないのだが、そうであるなら、余計にマザーツリーは必要ないのではないか。

とはいえ、きっといい本だよ。人々が森林を見る目をガラリと変えたと言われている。ただ思うに、一般の人にとって、そんなにショックだったろうか。木と木は認識し合い、助け合っているのよ、なんて擬人化したスピリチュアルな説明の方が深く考えずに納得できる。そして、ああやっぱり!としっくり来るのではないか。だからヒットしたのかもしれない。
むしろ単体の動物や植物の研究者とか、役に立つ植物の部分(木材、果実、樹液、葉……)だけを扱ってきた林業人の方が、「多様な種」が大切と言われることにショックなのではないか。読んでいないからわからないけど

 

ところで、こんな論文もある。「わずかな広葉樹の大きな役割 —人工林内の広葉樹の保持は効率的に鳥類を保全する—

これは森と鳥類にスポットを当てているが、北海道で、トドマツ林で皆伐区、ヘクタールあたり10本の広葉樹を残す少量保持区、50本残す中量保持区、100本残す大量保持区を設定して実験を行っている。そして鳥類の数と種類を蝶さしたところ、針葉樹人工林でも、わずかに広葉樹を残すだけで、鳥類の生息はずっと増えるという結論に達している。つまり多様性が大事ということ。

まあ、読まずに書くというのは妄想みたいなものだが、さて、本書の内容からは的外れかな? 意外や……?

2023/03/13

Y!ニュース「割り箸が熱い!……」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「割り箸が熱い!今世界と国内で起きていること」を執筆しました。

このところ、また割り箸に触れる機会が増えた。また海外事情のニュースも目にした。

一部は毎日新聞奈良県版で記事にしたのだが、これだけでは「もったいない」、割り箸だってもったいない、ということで今回の記事を書くことにした。

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この記事を書きながら思ったのだが、割り箸を「箸」と決めつけなくてもよいのではないか。そもそも自分で割らない割り箸があるように、2本の木片でなくてもよいかもしれない。もっと定義を広げて、「素の木製のカトラリー」としてしまえば。すると木製スプーンやフォーク、ナイフも入れられる。長持ちさせるための塗料を使わない素の木肌のままのカトラリーとしたら、何年も使うものではなくなる。塗り箸とも差別化できる(^o^)。

そして海外市場も狙える。箸ではなく、飲食店向きの簡易カトラリーだ。

と、まあ、そこまで話を広げるのは、また別の機会に(笑)。


 

 

 

 

 

2023/03/12

木馬の再現実験をした頃

『山林王』出版記念に、本づくりの過程で探し出した写真を紹介しているのだが、そこで木馬を取り上げた。木の橇に丸太を積んで、橇が滑るように横木を並べた木馬道を曳く搬出方法だ。今は全国どこにもないと思われる。

その中で、京都府亀山市の山だったと思うが、私は木馬の再現実験に参加したことがある。正確に言えば、私はお邪魔虫の取材であるが。

木馬の復元、木馬道の新設、そして実際の木馬曳き。また川に丸太を落として流す、筏を作って流すまでやった。また木馬とは別に筏流しも再現実験をしている。など、わりとみっちり工程を目にすることができた。

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実験の際に、私も木馬の横木を並べたりと手伝ったが、実際に曳いてみたところ、びくともしなかった。それなのに70歳を超えた経験者(木馬再現の技術指導もした林業家)が曳くと、するする動く。これは力だけでなくコツがあるのだ。動かすときに揺すって摩擦を減らして一気に曳くそうである。

ところで、これらの実験を行ったのは2011年の冬。とくに木馬が完成して曳いてみたのは3月13日だった。つまり丸12年前。

その2日前に東日本大震災が起きて、前日には福島第一原発第1号機が爆発した。私は、そのシーンを目にして、東日本壊滅を意識したのを覚えている。脳のどこかが白くなったような気がした。避難民は西日本に殺到するだろうな、日本全体も経済的に破綻する。どうすべきか? そんなことまで考えた。その後、建屋の爆発は水蒸気爆発であって、原子炉格納容器はまだ無事だろう、という解説があって、多少ホッとした。しかし、いずれにしても日本のダメージは大きい。そして、その後連続して2、3、4号機も爆発した……。

……そんな最中、早くから予定していたからではあるが、木馬の再現と木馬曳きをしていたのである(´Д`)。。。

 

それから12年。原発再稼働を進める現政権は、当時の緊迫感を忘れられるのだなあ。

2023/03/11

『山林王』到着!

『山林王』が届いた。

見本が出来上がったのである。まだ書店(リアルもネットも)には届いていないので、実物はこれが初めてとなる。

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どうだ!苦節18年……(だと思う。取材を初めてからの年月)。

第一印象は、分厚いことである。実際に原稿量で言えば前回『森と近代日本を動かした男』の1・4倍以上になる。そこに写真なども加わるからかなりの分量感がある。情報も、その分てんこ盛り。前回わからなかったことが、この10年の間でかなり解明したのだ。土倉庄三郎に関する資料は、ほぼ出尽くしたのではないか、と思いたくなるほどだ。

それでいて、価格は2500円+税。前回と一緒だ。消費税が8%から10%に上がったから実買価格は50円だけ上がったが。お得感もあると思うよ。ぜひ店頭に並びだしたら手にとってほしい。重いから(^o^)。

内容は、まったく新しい章に加えて、前回も書いた同じエピソードも、かなり情報密度が高めて新たな姿に書き換えている。また構成を徹底的に見直したので、前より読みやすくなっていると思う。

ちなみにAmazonでは予約受付中だが、今日の順位は……売れ筋ランキング: - 自伝・伝記部門で416位! なんでや! いきなり落ちたわ。一時期10位前後だったのに(> <;)。そもそも、まだ予約期間中なのに、なんで順位がつくのだ?

 

2023/03/10

古墳時代に飛行機?

奈良県の橿原考古学研究所付属博物館には、発掘されたなかなかの逸品が揃う。わりとそっけなく展示されているものでも、その気で見れば楽しめる要素がいっぱい。石器に土器に木製品、金属まで。

たとえば、こんな展示があったのだが。

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単純に奈良盆地の遺跡で発掘される巨大建造物に使われる木材はどこから? という説明であるが、広葉樹から針葉樹に移ったことを示している。なぜ先に広葉樹を使ったのだろうか。身近にあったのか。しかし伐採はどうした。広葉樹なら石器でも切れたのか。針葉樹の方が割って板などにしやすいことに気付いたとして、身近にはなくて遠方の山に取りにいったのか。すると輸送方法を考えないといけない。それは個人技ではなく、多数の人の協力作業がないとできない。これこそ、林業の始まりではなかろうか……なんて想像を広げていくと、古墳時代の林業の萌芽が見られて面白い。

もっとも、私が気に入ったのは、こちら。

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これ、鳥形木製品なんて記されていたが、どう見ても飛行機ではないか。とくに2枚目は胴体部分だけなのか、翼が左右に突き抜ける構造だったらしい。モノコック構造の単発プロペラ機に見えてくる。

古墳時代に飛行機なんて、と思うなかれ。

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これはコロンビアのインカ遺跡で発見された黄金のジェット機と呼ばれるもの。こうした模型が多数出土するらしい。インカ時代に飛行機?それもジェット機? というわけでオーパーツと呼ばれている。オーパーツとは、発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる出土品や加工品のこと。

奈良の古墳のオーパーツとして飛行機の模型だと売り出せないかなあ、と。そういや日本の古墳時代と黄金のジェット機が出土したプレインカ時代は、だいたい同時期だ。

 

 

 

 

2023/03/09

木材搬出、間違い探し

川上村の森と水の源流館に、このような展示がある。

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一昔前の吉野林業で行われていた木材搬出の様子のミニチュアだ。木馬で丸太を運び、斜面は修羅で滑り落とす仕組みを説明している。なかなか上手い模型を作ったな、と思わせるのだが、これを見学した村民からクレームが入ってそうな。その人は、かつて林業に従事していて、まさに木馬や修羅を経験していたのである。だから、この模型には間違いがある、と言ったのである。こんなことしたら、絶対にダメ。そこで

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という間違い探しコーナーをつくった(笑)。しかし70年近く林業やっていたって……すごいね。

さて、その間違いを探していただきたい。この模型の描き方のどこがおかしいか。

 

ヒントとしては、人物がらみである。そこで、その部分をアップしてみる。

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さて、わかるかな。指摘されれば、なるほど! ということだ。わかった人はコメント欄に書き込んでね。

やはり安全第一だよなあ。こんな作業したらアカンわ、という間違い。


2023/03/08

山道の遷移

裏山を歩いたのだが、こんな道がある。

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どう感じるだろうか。わりと広めの通りやすい道で、ハイカーが多いのだろうか……。

とまあ、そんな想像をするのがせいぜいではないか。しかし、ここはハイカーの少ない裏道で、幹線でもない。我が家から稜線のスカイラインに到達するルートではあるが、マイナールートだろう。それなのに、なぜ幅広なのか。

実は、かつてトラックが走っていたのである。山の中なのだが、そこにため池からの水路を改築するために資材を運び込んだようだ。完成直前に見に行ったことがあるのだが、こんな感じ。

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それから1年ぐらい経ったのかなあ。その道がこのようになっていた。

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4_20230308134501ここはトラックの回転場だったように思う。

工事中に通り掛かると、森の散策の気分がそがれたのだが、工事が終わると、道は放置された。いや、手入れしなくてもよいのだが。いずれにしても、そこに草が生えて、法面も穏やかに崩れたのだろう。わりとあっさりと自然の景観になってしまった。以前の山道より広くはなったが、それも時間とともに、草木が生えて、人が歩く部分だけが残されて元の幅に近くなるのかもしれない。

植生だけでなく道も遷移する。まあ、林業用の作業道のように表土をめくり掘削したらそうはならないかもしれないが、上手くすると復元はわりと早いのではないか。もちろん、丁寧に地形を見ると過去の道の輪郭が現れるのだろうし、植生も以前と微妙に違うだろうが、そんなに気にするほどではない。植生こそ、どんどん遷移して、元にもどるのは早いはずだ。

山の変化を定点観測すると、こんな事象にも気付くよ。

 

 

2023/03/07

サルのナラシカ化

今日は1日、吉野周辺。車で走っていたら、出会いました。

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サル。道端の建物の階段上に堂々といましたな。

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こんな環境である。車を止めてカメラを向けて、しばし。なかなかサルない、いや去らない。

しかし、1匹だけである。ハグレザルだろうか。若者には見えないので大人のサルだ。ボス争いでもしたのか、逃げ出したのか、自ら出奔したのかただ毛並みはよいから、食べ物に苦労はしていない模様。だいたい農作物なんだろうが……。

今回は、人家のサルならちょっと珍しいと思って車を止めて写真を撮ったが、シカなら今更だし、サルだって山中では何回も出会っている。もはや奈良公園のシカに近くなって来ている。

そのうち写真も撮らなくなるんだろう。日常に溶け込んで。ある意味、ナラシカと一緒だ。町を歩いていてフツーになる時代も遅くはない。害さえなければ、野生動物と人間がお互いに距離をおいて触れ合う機会として好ましいのだが、残念ながらそうもいかない。

 

2023/03/06

毎日新聞の源流・立憲政党新聞

現在、毎日新聞と言えば、3大全国紙の一角であり、日本でもっとも古く歴史のある新聞である。その源流は、大阪毎日新聞東京日日新聞として知られる。

とくに東京日日新聞は、1872年3月29日(2月21日)に発行されており、それが現在も発行を続ける日本の新聞としてもっとも古いとされる(日刊紙としては、前年の71年に横浜毎日新聞が発行された模様だが、消えている。)だが、発行号数の原点は1882年2月1日である。なぜなら大阪毎日新聞が東京日日新聞を吸収合併しているので、大阪毎日新聞が毎日新聞の原点としているからだ。そして大阪毎日新聞の源流は日本立憲政党新聞であり、その創刊号の日付が82年2月1日なのだ。

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日本立憲政党とは自由党の別動隊・近畿自由党のこと。当時は通信交通事情もよくなかったので、別組織にしたらしい。後に改名したが、その機関紙として日本立憲政党新聞は生まれた。日本最初の政党機関紙とされるが、発行母体は大阪日報だった。それを買収して新たな新聞を発行したのである。ちなみに日本立憲政党新聞は、発行後すぐに政府より発行禁止処分を受けて、新聞名を変えたり、ほかの新聞と合併したりを繰り返しながら、大阪毎日新聞-毎日新聞となる。

ややこしいが、その日本立憲政党新聞の発行に深く係わった……というより、発行資金の多くを拠出したのが土倉庄三郎だ。本人は5万円まで出すと言い、当時の報道では6万円出したともある。なお庄三郎名以外の出資者の資金も、実は庄三郎が払っていたという話もあって、いったいいくら出したのやら。ちなみに明治初年時の5万円なら、現在の10億円を超えるだろう。

後に大阪毎日と東京日日は紙名も統一して毎日新聞となった。

つまり、土倉庄三郎が毎日新聞の源流と言うこともできる。

面白いのは、奈良県でもっとも講読部数が多いのが毎日新聞であること。奈良新聞など地方紙でもほかの全国紙でもないのだ。吉野の山林王・土倉庄三郎が発行した新聞だから、というわけではない(だいたい県民のほとんどが、そんな事実を知らない)だろうに、なぜかそうなっている。

そんなエピソードも3月23日発行予定の『山林王』(新泉社)には記してある。

 

2023/03/05

Y!ニュース「今年のスギ花粉は、全国で450万トン以上…」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「今年のスギ花粉は、全国で450万トン以上飛散する?」を書きました。

今日は日曜日で、Yahoo!ニュースを読む人は減る。だから記事の更新も少なめ。それなのに、なぜ、よりによって今日アップしたのか?

それは、まず今週末が花粉の盛りだという予報があったこと。
もう一つは、明日は自動車免許更新に朝から出かけるので、記事のアップはできないから(^^;)。

これが理由でした(笑)。この際、アクセス数の伸びはあまり気にしないことにする。だいたい私の記事は、ゆっくり伸びる傾向がある。最近とみにその傾向が多い。ネットストアのロングテール理論みたいなものか。ちなみに、このところ不思議と読まれる私の記事は、

花粉症対策の嘘。間伐すればするほど花粉飛散量は増え補助金で潤うカラクリ

スギ花粉は世界中に舞っていた!

4年、7年前の記事なのである。ほかにも花粉症関係の古記事が多数。花粉症の季節に検索でもしたらヒットしたのだろう。これぞ、ロングテール。

珍しいところでは、この記事も、なぜかリバイバル。

スギやヒノキを脱炭素の旗手に!独自技術で生まれ変わらせる

これも2年以上前の記事だけど。

コツコツやりましょ。目先のアクセス数を追わずに。これ、どこぞの業界にも言いたい。

2023/03/04

興福寺五重塔の修復と法隆寺の古材

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写真は、いわずと知れた、奈良の興福寺五重塔。国宝である。あまりの青空に映えた姿を見て、思わずパチリ。

実は、五重塔は今年1月から修繕を始める予定だった。屋根の経年劣化が激しくて、全面葺き替えるため修理現場を覆う「素屋根」の設置を行う。解体はしない。つまり今年から五重塔は見られなくなるはずだったのだが……直前に延期になった。昨今の資材高騰して予算が足りないことと、修理前の調査に時間が必要という点から、来年以降に延期が決まった。おかげで今も塔は見られるのだが……ただ、足元をよく見てほしいのだが、櫓というか足場を組み掛けていた。この足場は、調査のためかな?

今年始めたら2030年3月に修理工事が終わる予定だったが、始まりもはっきりしないとなると、いつまでかわからない。ちなみに五重塔は、これまで5回焼失していて、現在の塔は1426年ごろに再建されたとされる。大規模な修理も120年ぶりとか。

木造建築物は、常にメンテナンスと修理交換が必要である。傷んだ木の部位は新たな木に交換される。つまり、すべてが建築当初のものではないということだ。法隆寺は建築1300年を超えるとされるが、創建当初の木材は、全体で3分の1~2だという。工法も少し変わったところがある。

実は、先日知り合ったは美術関係者と話していたら、法隆寺などの修理のために交換した古い木材を大量にもらったという。交換した木は意外とあっさり下げ渡されるらしい。そして私にも分けてくれるというのだ\(^o^)/。えええと、いつもらうか、どこで受け取るか決まっていないけど、楽しみにしておこう。あ、オフレコだよ(^^;)。

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こちらは、法隆寺と正倉院の古材とか。吉野高校林業博物館より。

 

 

2023/03/03

「木造ビルを建てるから、山は荒れる」

タイトルを書いて、これが一昔前なら「当たり前のことだ、いまさら」と言われただろうな、と思った。木を使うために木を伐る、木を伐るから山は荒れる、という一定の連想と論理があった。当時は割箸やかまぼこ板まで森林破壊と言われていたのだから。

が、今ではこのタイトルの意味がわからないどころか反発する人も多いのではないか。世を挙げて「木を使え」という運動が行われ、木を使うことで林業振興になり、炭素を街に溜めて都市の森をつくり、伐採跡地に次世代の木が育って「二酸化炭素吸収!」と謳われているから。その音頭をとっているのが林野庁に環境省である。

だが、はっきり言おう。木造ビルなんてものをせっせと建てようとすることで山は荒れ、はげ山が増えるのだ。山の現場を知らなさすぎる。

実は先日、奈良にある大和ハウスの施設・未来価値共創センター「コトクリエ」に行ってきた。平城京遺蹟の上に建つ巨大な研修センターだ。曲線を多用し内装には木がたっぷり使われ、豪華絢爛?木の匂いのするような施設である。ここで開かれたセミナー「森林・木材みらい価値共創研究会セミナー」(今回のテーマは「木造・木質のまちづくりに向けて」)を見学したのだが、その後に参加者を囲む会があり、私も参加させていただいた。

内容は面白かった。なかなか刺激的な話もあって、たとえばCLTに関しては〇〇××(オフレコ笑)と国の裏事情と建設側の本音を聞かせていただいた。

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ただ登壇した人の多くは大和ハウス関連の研究所などにいる人で、建築側の視点に立つ。

そこで私は思わす口を開いてしまった。それがタイトルである。「大和ハウスが家を建てるから、山が禿げてしまう」。

正確には大和ハウスは鉄骨ハウスが主体なので、木造建築の会社ではないのだが、国の煽りを受け入れて、低層木造ビルに入れていこうとしているらしい。やはり森林の科学的事情・林業の現場事情には疎いようだ。国産材をどんどん使えば、林業振興、脱炭素につながると信じている。(ついでに国産材が使われないのは価格が高いから、急斜面の山で林業やっているから、と毎度おなじみの思い込みがある。)

私も低層木造建築物を増やすこと自体は反対ではない。しかし、伐採された山で再造林されているのは3割しかないのだ。国産材を使えば使うほど、伐採すればするほど、山は禿げていく。全国の山で皆伐が進み、木がなくなって荒れていく。なぜ伐採跡地に植えないかと言えば、木材価格が安すぎるからだ。

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折しも本日の朝日新聞にこんな記事が。「純木造」ビルとは妙な言葉だが、ようは木材をたくさん使おうと無理しているビルが増えていることが取り上げられている。実はCLT工場も、今やフル稼働していると聞く。閑古鳥が鳴いていた時代をようやく乗り越えたか。

本当に山のこと、森のことを考えるなら、川下である建築側は、木を使う量を増やすのではなく、購入する木材の価格を上げろ、高く買い取れ、というのが私の提案であるが、それは受け入れられないようである(笑)。川下は、いくら川上に興味を持っても、川上の事情に疎く、川上の願いが利益相反する……自分たちに不利になることは取り入れないのだ。かくして両者の溝は埋まらない。

 

 

 

 

2023/03/02

Amazonに『山林王』

Amazonに『山林王』の発売予約が掲載されました。

山林王 単行本(ソフトカバー) – 2023/3/23

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かなり詳しく内容が紹介されています。最後までスクロールしてください。また写真も複数掲載されています。

なお「版元ドットコム」にも『山林王』の紹介ページ

どちらも目次付き。

ちなみに表紙カバーにも注目していただきたい。これ、見たらわかるとおり絵なんだけど、この中に動物が何体描かれているか、それは何かを当てるクイズになっている(笑)。さて、わかるかな。ヒントは、奈良にちなんだ動物。それが何かも当てねばならない(^_^)。さらにヒントを言えば、シカではない!

答えは、ずーと下の方に書いておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンサー・鳥二羽と、哺乳類1頭。

 

 

 

 

 

鳥は、古事記に登場する。
哺乳類は、前世紀まで生きていた。

 

 

 

答え。金の鴟(トビ)と八咫烏。神武天皇を案内し、光る宿敵・長髄彦を倒した。そして吉野で捕らわれた最後のニホンオオカミ。

 

 

 

 

2023/03/01

AIに負けない記事は書けるか

先日、某週刊誌の取材を受けた。テーマは、ちょっと生臭い地方政治の話。私の専門ではないのだが、それなりに長く住むと、裏事情に通じるのだよ。それをめざとく見つけて? 取材を申し込まれた。

もうすぐ統一地方選挙だが、私の地元では奈良知事選・県議会議員選、生駒市長選・市議会議員選と4つもある。そんな中の某候補者の裏側について突っ込むそうで、私としては、そんなテーマ?そんな人物を? それを全国雑誌が取り上げる意外感もある。中央政界でも、奈良知事選は注目されているのかしらん。まあ保守分裂に加えて、日本維新の会の参戦で3者睨み合い状態だからなあ。(ちょうど今、自宅前を維新の会の候補者が街宣車でがなりながら通った。もう選挙運動してもいいのか? 弁護士なのに。)

奈良知事選を取り上げる、こんな記事も出た(週刊現代より転載)。
高市早苗の孤立で「おひとりさま」の無情…奈良県知事選でみんな「二階氏に忖度」

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これは過去の選挙風景。イメージです。

さて、文春ではどんな記事になるか知らないが、好き放題にしゃべって結構気分はすっきりした(笑)。情報は持っているだけだと腹が膨れる。放出したくなるものだ。でも、終わってふと感じたのは、「私も取材者なんだけど……」である。気付いたら取材を受ける側になっているではないか。近頃、とみに多い。ヤバくない?

実は文春の記者とも、後半はつい脱線して文筆業で生きる悲哀と将来展望(^^;)などを語り合う。彼も悩んでいるのか(笑)。

そういや先日の東京でも同じライター仲間と飲んで、うだうだ言い合ったよなあ。書きたいことと世間の興味にはズレがあるし、評価も想定外の方向に行くことも多い。

私なんかはもう枯れてきて、世間にウケない記事を書くことに喜び?を感じてしまうのだが。ウケないということは、知られていないテーマだったからだと思えば、それを発掘したことを楽しめる。

文章はAIでも書ける時代だ。情報も世界に満ちあふれている。単に取材に歩いて情報を集めるだけではAIと区別がつかない。

となると公開情報からいかに裏に隠された部分を読み取るか、という感度が重要になってくるだろう。情報の切り口、分析、重要性評価……そこに意外性、センスオブワンダーを描けるか。今後は「情報感度」がジャーナリストの勝負どころになるかもしれない。とまあ、そんなことを考えてしまうのである。

そんなライターの末路もとい老後としては、知られざる情報を提供する側、切り口や分析を提供する側に回るという道もあるのかもしれない。……なんだかなあ、と思うけど。

2023/02/28

ナラシカは赤信号で。

奈良公園のシカ、ナラシカは信号待ちすることで知られている。私も何度も確認しているのだが……。

今回も観察した。ほどなくシカが現れ、ちゃんと赤信号に止まった。よし、伝説は正しいのだ。

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と、ところが車が途切れたかと思うと歩き始めたではないか。こら伝説を守れ、いや信号を守れ。人間の教育に悪い。赤信号、シカと渡れば怖くない、となってしまう。

焦ったのだが、なんと信号の方が青に変わる。そうか、信号の変わる時間を読んでいたのか。ナラシカも大阪人並みにいらち(せっかち)であった。

2023/02/27

ファミリーヒストリーと改名

たまたま目にしたNHKの「ファミリーヒストリー」。矢嶋智人の回である。奈良の古い町並みが映る。

実は我が家も、ちょっとしたファミリーヒストリーに触れた。父が亡くなり、その相続のために戸籍謄本(除籍簿)を手に入れたのだが、ちょっと複雑な面があった。生まれた時は祖父(私の曾祖父)の籍にあり、その後父(私の祖父)の籍に入るも、早死にしたので兄の籍に移る……という段取りがあったのだ。これは昔は家長制度のため、生まれたときの家長は祖父だったからだろう。父が亡くなれば兄が家長になり、その一族になるわけだ。

それはいい。ただ目に止まったのは、私の曾祖父は安政六年生まれになっていたこと。そうか、江戸時代の生まれなのか。

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そして、前戸籍名があったこと。そう、曾祖父は養子として田中家に入っているのだ。その点はうっすら聞いていたのだが、養子に来る前には別名だったとは。これは興味深い。養子だから名字が変わるわけだが、同時に名前も変えたのだ。

そして思い出したのである。

『山林王』のタイトルで出版を予定する土倉庄三郎伝には、多彩な土倉一族が登場するわけだが、資料をたどっていくと不思議な名前がいくつかあった。同人物を指すと思われるのに、名前が違う。別人なのか。

かなり悩まされて、なかには戸籍抄本をとってもらって確認した人もいるのだが、やがてわかってきたことは、結婚や養子などに行くと名前が変わっていたのである。

小菊は容志に、修子はナラエに。亀三郎はいったん三郎になったから2代目新治郎に。また喜三郎は篤ノスケに。そもそも庄三郎だって、実は二人いるのだ。父の庄右衛門は晩年か死後、庄三郎に改名している。墓石名は庄三郎だ。

さらに容志なのか容志子なのか。政なのか政子なのか。いや満佐子なのか。漢字の表記もかなり変わる。龍次郎の戸籍名は龍治郎だし、辰次郎なる表記もある。それが他人の勝手な当て字かと思えば、当の本人の署名までバラバラ (゚o゚;) 。

ついでに言えば明治の元勲の板垣退助は乾退助だったし、原六郎は進藤俊三郎だった。維新時に勝手に改名している。折原静六は本多家に養子に入って本多静六になった。

思えば戦前は、名前はわりと軽く改名したり、漢字は何を使うかいい加減だったようだ。今なら、改名するのはトンデモな手間がかかるのだが。名前は我がアイデンティティである! と気張るほどのものではなかったのではないか。

この改名のおかげで記録を辿る苦労もあるのだが、明治社会の風土というか世間の雰囲気が感じられて興味深かった。

 

 

2023/02/26

明治神宮は恒続林になり得るか

先日訪れた明治神宮。何も鳥居ばかりを眺めていたのではなく、森も見て歩いた。

そして気付く。

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照葉樹林とされている森には、意外と針葉樹(スギやヒノキ)や落葉樹も混ざっていることに。つまり針広混交林だった。スギやヒノキも大木になっていたから木材生産ができるのではないか。

そもそも明治神宮の成り立ちからすると、明治天皇を顕彰するのが目的で、大隈重信は壮麗な杉並木のある神社を望んでいたらしい。しかし、設計を担当した本多静六や川瀬善太郎は、ここの地質ではスギは育ちにくいと反対し、いろいろな資料を作成して大隈を説得した。ようやく納得させて、潜在植生的な照葉樹林となるような樹種を植えたのである。当時、少しはあったスギなども歳月とともに枯れて、残るのは照葉樹ばかり……となるはずだった。本多は、手入れせずに放置しても維持できる森として照葉樹林を選んだというが……。

だが、今日的には意外とスギやヒノキも目立つのである。これは自然に生えたのか?

そもそも川瀬は、日本に森林美学を導入した一人だ。そして森林美学という言葉を生み出したのは本多だとされる。原語は「森林美の保続」だが、それを森林美学と訳すなんてオシャレ。美しい森こそ、もっとも収穫多い森という理念だ。森林美学は、やがて恒続林思想へと発展するが、その要諦は針広混交林で維持に人の手を極小にしつつ木材生産できる森のこと。だから明治神宮は、恒続林のひな型と言えるかもしれない。

ちなみに、まったく手を入れないわけではない。

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今回目立ったのは、こうした切り株である。かなり太い木が多く伐採されている。おそらくナラ枯れ対策だろう。大木ほどカシノナガキクイムシが侵入して枯らしてしまう(ナラやカシ類。スギやヒノキは大丈夫)。写真のバックに写っているのは、カシナガにやられないようラップ巻きしたのかね。

このように、そこそこ伐採など手を入れつつ、明治神宮の森は作られる。伐られた大木は、何かに利用しているのだろうか。

 

2023/02/25

宮崎県が木材生産額日本一になった裏側

宮崎県の一昨年の木材生産額は、初の日本一となったというニュースが流れた。

農水省発表の林業産出額によると、2021年の木材生産額は321億7000万円。前年を124億円上回り、初めて全国1位だった。素材生産量は193万1000立方メートルで全国の約15%を占めた。

なお木材生産量では、宮崎県は針葉樹材と広葉樹材を合わせると204万2000立方メートル。北海道は316万3000立方メートルと宮崎より多いが、ウッドショックにより九州の木材価格が高騰したため、北海道を額で上回ったとみられる。

本当に望ましい成果なのか。材価が上がったのは悪くない。ただ北海道材だって等しく価格は上がったはずなのに、なぜ宮崎が(九州が)より高かったのか疑問だ。おそらくだが、宮崎県の方が出荷態勢が整っていて、ウッドショックで木材を求めている業者に素早く提供できたからだろう。製材業もたくさんある。これを喜ぶのは勝手だが、しわ寄せはどこに、いつ現れるかだね。

ただ宮崎県の木材生産量は、近年徐々に落ちていたはずだ。そろそろ伐るところが減ってきたからだろうと言われていた。が、ウッドショックで増強したのだろうな。どんな伐り方をしたのか……。これまで増産できないと言っていたのに増産したのだから、どこを伐ったのか。まさか盗伐を増やしたのではないだろうな……。

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おりしも宮崎地検は、盗伐容疑者を不起訴にしてばかりいる。被害者の会が不起訴理由を聞きに行くと、話の途中で警察を呼んで排除したそうだ。盗伐(森林窃盗)は犯罪として扱わないということなのだろうか。。。。

 

2023/02/24

「山林王」色校!

本日、なぜかいるのは新泉社の会議室。

何をしているかと言えば、来月に出版する本の色校。色校というのは印刷前の、いわば見本刷り段階の校正だ。通常、出版までに行う著者の内容チェックは初校と再校の2回である。それに外部の校閲も加える。

ところが今回は、再校終えた後に編集者の見る3校目に私も参加した。それを終えて、もう終わりのはずのところに出てきた色校。そこに私が東京にいたものだから、また参加する。

さすがにこの段階では、よほどの誤字とか事実誤認部分しか直さない。版を刷り直すことになればコストも膨れ上がる。それは承知なのだが。なのだが。

結構直しを入れてしまったよ(´ω`)。。。間違いではないが、気になるところまで。

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つまり、実質4校だね。

やりすぎ。表紙デザインもやり直してもらったし(((^^;)。

ここまでやったんだ。コスト膨れ上がらせたんだ、売れないと大変。

「山林王」。覚えておいてください。発売は3月25日予定。

 

 

2023/02/23

一の鳥居は

なぜか明治神宮を訪れている。そこで最初に目にしたのは、一の鳥居だ。

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新しい。

知っているかな、この鳥居は吉野杉製だ。そもそも木製の鳥居はヒノキ製が普通なので、スギで作ったことが、珍しいのだ。だから、表面の木肌が微妙に違う。匂いも違う。私は完成した鳥居を見るのは始めて。

ほかにも神宮ミュージアムもできているし、少しずつ変化している令和の時代の明治神宮であった。

私も神楽殿の地下2階に侵入したぜ(^^)v

 

2023/02/22

今、なぜか植村直己を振り替える

今日はなぜか東京にいる。

で、訪れたのが、なぜか植村冒険館(^_^;)。

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グリーンランド縦断をした犬橇。残念ながらレプリカであったが、わりと大きく感じた。もちろん木製である。極寒地では金属使えない。

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マッキンリ―山頂に残された旗、これは本物が展示されていた。

私以外も来館者がポツポツ来るところを見ると、根強い人気なんだろう。もう何十年も前に亡くなったのに、今改めて振り替える彼の人生であった。

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