トランプ米大統領と、緑の植民地主義
トランプ氏が米大統領に就任したニュースを見て、頭に浮かんだのはスターウォーズだった。それも「エピソード3 シスの復讐」。
それまで混乱しつつも曲がりなりにも保ってきた銀河共和国が、シス暗黒卿によって銀河帝国へと変貌し、ダース・ベイダーも誕生する回だ。私としてはエピソード2とともにかなり好きな回。能天気な勧善懲悪的アクション満載回のエピソード4~6より気持ちがしみ入る。
トランプ大統領は、シス卿やダース・ベイダーに見立てるほどの大物ではないが、合議制の共和国より独裁的な帝国を好む人物ではあるだろう。彼を生み出したのは、差別、嘘、罵り、暴力……などに快感を覚える暗黒面に落ちた人々だ。そして共和国的な「過激な理想」と手間とコストのうさん臭さに背を向けた時勢が求める世界でもある。もちろん、これはアメリカだけではなく世界的な傾向と言える。
思えば、世界の歴史は、いや日本の歴史、そして森林の歴史は、常に極端から極端に揺れ動いてきた。とくに森林史・林業史を古代から現代まで追いかけた経験から言えば、ちょうどよい中庸の政策、世論なんかなかったのではないか、と思える。
木材を過剰に求めて伐りすぎてはげ山になると、今度は厳格な禁伐政策が取られて人々を苦しめ、回復基調になれば厳格さゆえに反発が生まれて盗伐が横行、そして大々的な伐採が進行する。日本史で見れば、奈良時代、戦国時代、江戸初期とあった大伐採の時期。その合間に、できるだけ伐らない、代替マテリアルを探す……などがあって、現在は次の伐採の方に過剰に偏った時代だろう。木がほしい、伐採するのは快楽だという“暗黒面”に落ちている(笑)。
世界史的には、気候変動対策、生物多様性対策として森林保護が進められている時代だが、そんな保護の過剰さは反発を呼ぶ。その結果、劇的に転換するかもしれない。トランプ大統領のような人物の登場によって。
ここでは、「緑の植民地主義」について記しておこう。
簡単に言えば、脱炭素や自然保護を掲げる政策が、先住民などの伝統や文化を圧迫するケースだ。「持続可能な経済」「持続可能な開発」といった緑の大義名分によって、長くその土地に暮らしてきた先住民は、一方的に生活を無視した自然保護政策を押し付けられる。
スカンジナビア半島のフィンランド、スウェーデン、ノルウェーに住む遊牧民サーミは、グリーントランスフォーメーション政策によって圧迫されている。ノルウェー政府は、2013年にサーミのトナカイ放牧地に風力発電の風車を約150基建設する計画を認可した。サーミによって反対運動が起き裁判に持ち込まれたが、ノルウェー最高裁は21年にこの言い分を認め、最終的に政府がサーミ側に補償金を払い、新たな放牧地を提供することで和解した。
アメリカのアラスカは2021年、ユーコン川でのサケ漁を禁じた。個体数を回復させるためという名目だ。しかし、その結果、アラスカ州の229の先住民族の半数が「食料不足の危機」に陥った。しかもサケの数は改善せず、30年まで禁漁を継続することになった。だが、サケの数が減ったのは、先住民による乱獲が原因ではなく、温暖化に伴い、寒冷な北極圏に移動したせいとみられる。
フィリピンで欧米流のフォレスターが森林を禁伐し、地元の人々が森から食料や生活物資を得られなくして生活を破壊した例もある。おそらく、このような事例が重なり、環境政策に対する反感が高まるのではないか。
今、必要とされているのは、生態系文化多様性だという。主に先住民が自然とともに生きることは、多少の環境破壊を含みつつ、その攪乱がむしろ環境を多様にして、また多様な文化を生み出す基になっている。それを環境一辺倒にしてしまうと奪ってしまう。それが揺り戻しを呼び込み、逆に人間優先を掲げて欲望の資本主義に走れば、それはそれで自然環境のみならず人間社会も破壊してしまうだろう。
「緑の植民地主義」に反発が生み出すのは、伝統的生活を守る道ではなく、自然を破壊して人間の我が儘を追求する道かもしれない。その節目にシス暗黒卿が登場するのさ(⌒ー⌒)。
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