トランプがイラン相手に馬鹿なこと……を通り越して下劣、暗愚なことを始めたおかげでホルムズ海峡が封鎖され、石油価格が高騰している。それに右往左往する世界。
そんなときに頭に浮かんだのが、小松左京の『紙か髪か』という短編小説である。
ある日、いきなり紙が世界から消えるのだ。書類はもちろん、電車の切符も紙幣も、みんな消える。いやテレビの音声が出なくなったと思えば、マイクは紙質だった。そのほか、意外な品、部品が紙製であり、世界中は大パニックになる。
1960年代の作品だ。つまり、まだ30代の頃だろう。
執筆当時の小松左京
石油が高騰すれば、ガソリン代が上がる。灯油も軽油も上がるだろう。そして、プラスチック製品も作れなくなる……ここまでは誰でも想像したはずだ。が、農業資材や肥料が高騰して農業が行き詰まる、医薬品、医療用、例えば手袋もなくなる、接着剤だって品不足。輸送費の値上がりは全商品に波及し、食品や建設資材も爆上がりする。銭湯が休業する。意外な品がプラスチック製で、石油に依存していた。
そして木材も。新たなウッドショックを心配する声も高まっている。
前回のコロナ禍におけるウッドショックは生産が滞り需給バランスが狂ったためだったが、今度は伐採・搬出などの燃料費が高まるし、製材も困る。輸入木材の輸送費も上がるだろう。いや、欧州材の海上輸送ルートはスエズ運河を通るはずで、不安定化が進めば、輸入できなくなる。今や欧州材抜きでは、日本の建築現場は立ち行かなくなるだろう。
そして接着剤がなくなれば合板、ボードだって作れなくなる。CLTだって。もともと建築費は高騰していたが、いよいよ暴騰するだろう。

林野庁は、例によって「国産材シフトを」と言っているが、コロナ禍ウッドショック明けのことを思い出してほしい。
値上がりした分の利益は、木材市場や建築資材メーカー、つまり流通の川中や川下がごっそり取ってしまい、川上の山元に還元されなかったと林業団体が指摘している。それでも増産するか?
その後、木材価格は下落し、需要はあっさり外材にもどったから、木材を増産した頃には買手がつかず、安値で買いたたかれる……という目にあっている。業界が国産材シフトを潰したのである。
本当は、石油を高値のまま放置した方が、脱炭素、脱プラスチックを進めるチャンスかもしれないのだけどね。
ちなみに『紙か髪か』で紙が消えた理由は、火星からもたらされたウイルスが変異して紙を食べたからだった。
そこで、紙製品にある種の薬品を添付することで紙を守ることに成功。ところが、その薬品によって、ウイルスはまた変異して、次は髪を食べだした……というオチであった。全人類は、禿げ頭になるのである。
さて、今回の石油ショックと、それに連なる様々な商品供給不安(もちろん木材を含む)は、事態終了後に何をもたらすだろうか。木造壊滅、土壁復活…とか。
禿げ頭くらいならいいかもね。
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