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森と林業と田舎の本

2019/08/18

銘木揃いの住宅のお値段

初対面の人からSNSで誘われて、大和郡山市の建築現場に行く。

ここで使われる木材をコーディネートしたのだというが……。もう、銘木がてんこ盛り。

まず外装側壁。

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これ、スギの赤身?しかも和釘。

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仏間の框には、黒柿を入れている。

天井には太い曲がり松の梁が入っているし、すごい伝統的和風建築か、と言えばそうでもなく、洋室もある。

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これはダイニングキッチン。扉やカウンターはアパの大木だ。フローリングはカリン。ほかにも国産材だけでなく外材も含めて銘木がてんこ盛り。トイレにはクス。30種は超えるんじゃないか。わざと和室に外材も使っているし、国産ヒノキも巨大節のあるものを利用していたりする。部屋数も2階を含めて数多い。

なんとも贅沢な家……とても下々の人間には手が出せない豪華な住宅。と思いかけたが、聞いてみると、施主は30代のサラリーマン夫婦だという。普通にローンを組んで建てているのだそうだ。私の想定では4000万円前後か。

銘木を探して取り寄せて使うととてつもなく高くつくが、在庫を上手く使えば十分収まるそうだ。これこそ適正価格。
銘木・役物の名で時価になりがちな日本の不合理な流通価格を見直すことはできるのではないか。

 

「喪失の国、日本」で知る木の文化

ブックオフだったかで見つけた古書『喪失の国、日本・エリートビジネスマンの「日本体験記」』(文春文庫)。

Photo_20190818100201 M.K.シャルマ著 山田和訳

インド文化というか、インド人のメンタリティを知りたくて購入。日本は近年、インド経済圏に食い込もうとしている。だが、中国人も音を上げるインドビジネスの厳しさに、日本人が太刀打ちできるのか? ちょうどカシミール地方で起きている不穏な動きも気になるところ。多文化が混濁?しているイメージのあったインド文化だが、今やヒンズー至上主義が席巻しているらしい……が、私は肝心のヒンズー文化をよく理解していない。新たな世界のホットスポットだけに注視したい。……という気持ちであった。

これは1990年代前半に日本に滞在したインド人の記録なのだが、訳者の奇跡的な著者との出会い、余りに詳しい日本社会の描写などから想像するに、訳者の意訳?部分が相当入っている気配はする。原著は私家版だとかで、他者が確認することもできないだろう。ただヒンズー教徒インド人のメンタリティを知るには恰好の書となった。

一つ一つのしぐさや思考方法がここまで違うのか!と感動するほどで、カーストの文化?も、いかに根深いか思い知る。一つ一つを取り上げても侃々諤々の議論ができそうだが、まず奈良を訪れた際の感想を紹介したい。

おどろいたことに、いたるところに鹿がいた。牛も、馬も、ラクダも、象もまったく見かけなかった日本で、突然鹿があふれているのを見て、私はどう理解していいのかわからず、佐藤氏に「これは食用か」と訊ねて笑われてしまった。」

この一節だけでも楽しい(^o^)。奈良の鹿に関しては、「インドだって牛が町中を歩いているじゃないか」という声があるのだが、発想が違う。

その後、法隆寺や中宮寺などを訪れて、日本人の樹木への深い理解に驚嘆したという。

日本は、思想と美学のすべてが木への解釈と共振している国なのである。
インドでは、大樹の樹上はジャッカルや魔物の棲む所だが、日本では神が降りる場となっている
インドやヨーロッパでは、古くから「生命樹」という紋様が愛された。しかし日本では生きた樹木そのものが愛された。抽象と具象との差は大きい。日本では、樹木は生活の中に「生命」のイメージをもって深く浸透し、精神世界で大きな規矩の役割を果たした。
日本人が木を生きたまま捉えようとした証拠は、「白木」と呼ぶ塗装されていない状態を好むことにもよく現れている。

その後、大阪に行くが、コンクリートだらけで「木の文化」の片鱗も見られず、別の国みたいだと、不協和音を感じている。

そして日本の木の文化を論じる。

日本人はこの二千年、何を作るにも木を用い、木と向かい合って生きてきた。木と相対する無限の時間の中で、人生と美とを学んだ。木の中に神を見、木の中に心を見た。木は人生の教師であり伴侶であった。そのような木との交感の中に、日本文化が生まれたのだと私は考える。」

さて、どうだろうか。本当に2年足らずの滞在だったインド人がここまで深い考察ができるのか?なんか日本人が望んでいる日本文化論ぽくないか?……という疑問はさておき、インド的視点を知るつもりで読めば興味深い。

ちなみに、彼の滞在中(1992年~)にインドではヒンズー至上主義者がモスクを焼き討ちするアヨーディヤー事件が起きる。それは各地に飛火し、パキスタンの核保有へと広がり世界を震撼させたのだが、それについて彼の見解も面白い。ただ、当時は過激派の犯行とも言えたが、今や国の指導者が同じようなことを口にするのだから、現在の方がより深刻だろう。

著者は、当初日本の文化に感動していたのだが、やがて幻滅し始め、インドと日本の文化的狭間に落ち込んでいく。そして文明社会への危惧・絶望を強めていった……らしい。

若干古い本(初出2001年)だが、インドとの結びつきを強めようとしている今だから読んでも面白いのではないか。

 

 

2019/08/17

林野庁マンガ「女神コウリン」

突然だが、ブログのデザインを変えた。と言っても、これまでの図案テンプレートが、来月には使用できなくなるかもしれない、という案内が来たから。うちのが該当するかどうかもはっきりしないが、ここ数年変えていない気がしたので、新しくすることにした。もっとも、従来のテンプレートの流用だから、あまり変わらない。そのうち思いっきり斬新にしようかと思うが……。


さて、林業界の広報にもイラストやマンガが多用され出した。とくに林業マンガがよく登場する。これは、たまたま林野庁の女性職員の中にマンガを描く人がいたからだ。その一つが広報誌RINYAで発表された「お山ん画(おやまん が)」だ。その紹介もした。

これを描いているのは平田美紗子さんだそうだが、今年4月に北海道森林管理局に異動したそう。こちらの企画課事業企画係長なのだが、本庁の林野図書資料館にも籍を残すとか。これはマンガを書き続けるだめだろう(^^;)。

で、今回連載を始めたのが「林業のススメ」
テーマは高性能林業機械(通称コウリン)に焦点を当てている。そして主人公?が「女神みどり」という女性。つまり「女神コウリン」。降臨でも光臨でもない。その機能を解説しながら、林業の現場を紹介する。。

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ほかにも何種類か、林業マンガを書いているようだ。詳しくは、林野庁ホームページのイベント情報欄


最近は、さまざまなニッチな職業をマンガに取り上げるのが流行っているのだから、林業を舞台にしたマンガが登場してもよいはずなのに、イマイチありませんね。書き手が林業を知らないのか、取材も難しいからか。
ちなみに私も林業マンガの原作を提案したことがある。調べたら10年も前だった。

せっかくだから、誰か『絶望の林業』をマンガ化してくれないかなあ。いかに林業界が理不尽で不条理で危険で、暗黒面に満ちているかを描く。タッチは絶望感の溢れる諸星大二郎みたいなのがいいわ。

 

 

2019/08/16

『絶望の林業』をHP掲載

ふと、『絶望の林業』をホームページに掲載していないことに気づく。

最近は、わりと放置状態だが、私のホームページもあるのですよ。実は二段仕込みで趣味と仕事の両方なのだが、「仕事館」にはこれまで出版してきた著作を紹介している。そこに『絶望の林業』を追加することにした。

森林ジャーナリストの仕事館 絶望の林業

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あわてて作ったので、何の工夫もない。背景を珍しい紫にした程度(^^;)。
ただ「目次」は全部載せたうえに、「はじめに」を全文掲載。ここでしか(無料で)読めないから、ご笑覧あれ。
ここを読んでから本物の本を手にとるかどうか決めていただいたらよい。

今後、手直しを続けようと思うが、まずは告知しておく。さらに無料で読める章を入れようかと思案中。

なお、趣味の「安楽椅子探検家のヴァーチャル書斎」もよろしく。今後は、こちらにも力を入れていく所存だ。趣味を仕事にして、両方を合体させようという魂胆。

 

2019/08/15

森林オフィスとリゾートオフィスの違い

台風直撃の日。不思議と生駒は雨も風もほとんどない。やはり霊山に守られているなあ~と思った1日であるが、ここ数日は帰省していた娘のアテンド係(^o^)。そして、本日、東京にもどる日でもあった。
帰る夕刻の新幹線便の動向を探る。「無理なら、もどってきていいんだよ~」と何度も繰り返しつつ、娘を見送る。そして娘は道中をLINEで実況。幸い、どこの電車も止まることなく、無事に走ったようだ。


世間はお盆であり仕事は休みだろう。私も、娘の帰省中はほとんど仕事をしない。が、そんなときでも仕事したくなるオフィスはないか。

そこで、私が講演などで時折使っている写真。

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森林オフィス……と呼んでいいいと思うが、ようは森の中に儲けられた半地下のオフィスだ。

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これは、内部から外を見た様子。仕事場としては、極めてスタイリッシュというか、人工的な清潔・便利さを追求しているが、窓?の外には里山の木々の風景が広がっている。こんなオフィスが身近にあれば飛びついてしまう。

残念ながら、この写真の施設はスペインにある模様。でも、日本でもつくれば人気を呼ぶのではないか。サテライトオフィスとして売り出せないか……という提案用に使っている。

それに似た施設が長野県信濃町に生まれたらしい。ノマドワークセンターだ。安らぎの森オートキャンプ場内にあり、自然の中で仕事のできるリモートオフィスというコンセプトである。運営は埼玉県のNPOだ。

もっとも、上記の森林オフィスほどスタイリッシュではなくて、ようは遊休の体験施設を改造したもの。施設内にはコワーキングスペースや会議室、3Dプリンタや各種工作機をあるラボを揃え、wifiも完備でネットで仕事ができるということだが……あんまり詳しい内容は掲載されていない。ノマド(遊牧民)のように移動するビジネスマン狙いのよう。リゾートオフィスとでも形容すべきか。

ただ、私の感想としては、ここでは仕事したくならないなあ。やっぱりリゾート施設ぽい。周りは遊ぶところばかり。多分、滞在したらだらけるだろう(笑)。

オフィスなんだから、仕事モードにハマるオフィス・デザインにしてほしい。リゾートで仕事というのは矛盾している。あくまで仕事環境としての自然(森林)を取り込んだ環境。。。どこか本気で森林オフィスをつくれないだろうか。

 

 

2019/08/14

サバイバル植物、玄関編

拙宅の玄関前の石に草が伸びてきた。

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どこから生えたのか。

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これが根元。完全に石から生えている。正確に言えば窪みがあるのだが、とくに深くもなく、さほど土も溜まっていない。せいぜい5ミリぐらいか。だが太い茎。どうやら窪みの底にひびが入っていて、そこに根を伸ばしたらしい。しかし、少々引っ張っても抜けないほど、しっかり生えている。一時は高さ50センチくらいになっていたが、折り取ったのにまた復活するのだから、たいした生命力だ。

これぞ、久々のサバイバル植物に認定しよう。

2019/08/13

空撮・謎の帯状皆伐?

友人のカメラマンが、九州へ空撮に行き、そこで見かけた写真を送ってきてくれた。

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なんだかわかるだろうか。佐世保市里見町上空だそうである。よく見ると、貯水池?上の森が妙な形に伐られている。

拡大してみよう。

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見事に列状に伐られている。ただし間伐というには幅が広すぎる。さらに拡大すると……。

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おそらく伐採地の幅は数十メートルになる。跡地に造林も行われている。
あえて言えば帯状皆伐だろうか。漸伐……順次、皆伐をしていくやり方かもしれない。これぐらいの幅があれば、苗にも光が射し込んで生長するかもてしれない。複層林化を狙っているのだろうか。ただ伐採跡地に植えた部分は一部ではげているから、成績はあまりよろしくないように思える。植えた本数も少なめ。疎植だろうか。
これを施業として行ったとは思いにくいので、何かの実験地だろうか。主体は、長崎県かな。簡単に検索してみたが、この伐採地に関する記載はネットでは見つからなかった。

せっかくだからグーグルマップでも見てみた。

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かなり整然と、意図的に伐採したことがわかるね。さて、なんだろうか。ご存じの方は教えてください。

 

2019/08/12

思い出す、ガダルカナル島の旅

昨夜,NHKスペシャルで「激闘ガダルカナル悲劇の指揮官」を放送していた。

南太平洋ソロモン諸島のガダルカナル島。太平洋戦争の構図が変わった南洋の島だ。日本軍が建設し完成直前の飛行場をアメリカ軍に奪われ、それを取り返そうと派遣されたのが一木支隊。先遣隊916人が1万人を超すアメリカ軍に攻撃を仕掛け、全滅した。ま、その裏で陸海軍の思惑の違い(というより足の引っ張り合い)や情報の途絶までグダグダの内実が示されるのだが……。

私がガダルカナル島を初めて訪れたのは30数年前。かつての激戦地は、現在ソロモン諸島の首都ホニアラになっている。飛行場もホニアラ国際空港だ。ここに降り立った時は、やはり感慨深いものがあった。当時はヘンダーソン飛行場と呼んだような気がする。アメリカ軍時代のままの名前である。ちょうどアメリカ軍との死闘が始まった8月だった。
これはメラネシア一人旅であり、私の目的はまったく別のところにあったのだが、否応なしに過去の戦争と向き合う旅だった。

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ガダルカナル島レッドビーチ。アメリカ軍の上陸地点。日本軍の血で赤く染まったから……と言われているが、実は血と全然関係なく、単に地点名を色で示しただけであった。だが、ここで多くの人が亡くなったのは間違いなかろう。海辺に残されていたのは、重機関銃の残骸だろうか。

ホニアラの沖合、サボ島やツラギ島の間の海は鉄底海峡と呼ばれている。当時の日本軍、アメリカ軍の船が多数沈没しているからだ。
そこをモーターカヌーで渡る際は、ちょっと緊張した。この海の下に幾多の艦船が……と、途中でエンジンが止まって遭難しかけた(^^;)。海底から呼ぶ声がしたって? そ、そんなあ……。

「日本製のエンジンなんだからお前が修理しろ」とほかの乗客から無理難題を言われたが、エンジンのプラグを外してみたら真っ黒だった。それを磨いたらなんとか火花が飛んで動き出した。今の電子制御のエンジンなら手も足も出ないが、思えば牧歌的?なエンジンであった。

当時のソロモン諸島は、独立後日は浅く、貧しいが平和であった。日本企業もそこそこ進出していた。大洋漁業の子会社ソロモンタイヨー。そして木材商社が幾つか。私は彼らのお世話になりながら旅を続けたのである。

その後2度目に訪れたときは、ホニアラも少しファッショナブルになっていて、商店が増えていた。発展しているように見えたが、実は貿易収支は赤字に転落、各国の援助漬けが始まっていた。
その後さらに経つと、民族間の争いが激化し、とうとう中国人商店街が焼き討ちされる事件が起きた。さらにニューギニアのブーゲンビル島独立紛争にも巻き込まれて治安も悪化する。日本企業も撤退が相次いだ。

幸い、現在は落ち着いたようだ。日本大使館も置かれたし、観光も盛んになっていると聞く。主にダイビングが人気だ。

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ソロモン諸島は、南洋材資源の最後の宝庫であるが、さほど量もなければ質もよくない。それに住民の所有意識が高いから、下手に伐採したら首を狩られる覚悟がいる。冗談抜きに争議が頻発する。

でも、中には黒檀の木もあるようだ。時折、黒檀による彫刻が並んでいる。街の土産物店に売りに行く島民がいるのだ。これは戦闘カヌーの舟首に掲げるものだ。
また石の像もつくられていた。こちらは西部ソロモンのムンダのもの。技術的にはさほど上手くないが、味のあるプリミティブアートだろう。ちなみに右の黒檀の首は、「ソロモンくん」と名付けている。

ソロモンに興味のある方は、拙HPの「ナンバワン、ソロモン」を見てください。

 

2019/08/11

アルキメデスは戦争を止められない

映画「アルキメデスの大戦」を見た。

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面白かった。簡単に紹介すれば、戦艦大和の建造を数学で止めようとする話である。具体的には、天才数学者が建造費予算の嘘を見破って計画を白紙にもどさせそうと、本当の建造費を数学を駆使して暴こうとするのだ。(それ自体が軍人に乗せられて行うのだが。)

もちろんフィクションである。実際の「大和」建設に際して、そんな動きがあったわけではなかろう。ただ、建造計画の議論の場に、理性と感情の対立はあっただろうとは思わせる。簡単に言い換えると、巨大戦艦は必要なのかという理性と、欲しいという軍人的欲求の対立だ。もっと言えば数字=科学=理性vs感情(巨大なもの、美しさかっこ良さ、古くからの伝統……)でもある。

実は、小中学生の頃の私はミリタリーマニアであった。だから戦艦大和や零戦に憧れた。やっぱり世界一の大きさと巨砲を備える戦艦、無敵の空戦性能……といった言葉に弱い。加えて兵器ならではの「美しさ」もある。

だが年を経て知識が増えると、戦艦大和がまったくデタラメな欠陥軍艦であることがわかってきた。工学的にも技術的にも戦術的にも経済的にも、まったく使い物にならない代物であった。だいたい艦内電話も故障が多くてあまり通じず、溶接技術も未熟(というより、機械が要求精度に達していない)な当時の日本に、巨艦を建造する能力があったのかどうかも怪しい。
さらに自慢の46センチ砲を撃とうとすると、周辺の副砲はおろか対空砲火さえ止まってしまうなんて戦闘艦にあるまじき構造だ。どんな設計思想なのやら。しかも命中率の低さは目を覆わんばかり。照準は目測なのだ。40キロ以上先の的を目で狙う。人間の技量を訓練で上げても誤差の修正範囲ではないか。対空砲火もまったくの役立たず。ほとんど当たらない。そもそも攻撃機の高度まで弾が届かない。
一方で不沈戦艦どころか、魚雷戦を意識していなかった。艦砲決戦のつもりだったから、喫水線の下に爆弾(魚雷)が当たることはあまりないと想定していた。しかも1本魚雷を食らったら舷側の鋼板がめくれ上がり、しかも反対側の舷側に注水するから、速度がガクンと落ちる。すると2本目3本目の魚雷や爆弾をくらい、確実に餌食になる代物だ。
何より燃料をバカ食いするから、出撃さえあまりできないとは……。もちろん航空戦の時代を無視した艦隊決戦の発想こそ馬鹿げている。
……とまあ、幼き頃の「巨大で美しい兵器」への憧れを「科学」「理論」の知識が打ち砕いてくれたのだ。

映画の中には「巨大で美しい軍艦ができたら国民は勘違いする」という意味の言葉が出てくる。まさに、私の記憶・感覚と一致する。
映画が描いたのは、今風に言えばフェイクニュース対理性の戦いではないか、と私は思いついた。
 

『絶望の林業』で書きかかったのは、もっと理論的に、科学的に林業を行え、ということだ。
地球温暖化防止のために間伐をする? 花粉症対策に間伐をする? 伐期が来たから皆伐する? 大面積皆伐をしても、森林全体の生長量以下だから大丈夫とはどんな生態学の知識を持っているのか。(持っていないからアホなのか。)
材価が下がっているときに生産量を増やすという経営のイロハを無視した政策。純益以上の補助金を注ぎ込んでいるのに「儲かった」と思ってしまう能天気な計算能力。
伐期とはなにか。間伐とはなにか。言葉の意味さえまともに理解していない林野官僚。
CLTが林業を救う? バイオマス発電が林業を活性化する? セルロースナノファイバー? 早生樹植林? 
まともなマーケティングもできなければ商品開発もでたらめ。
自身の頭で考えて判断しない(させない)林業現場。技術も「身体で覚える」のであって、頭は使わない。
そして役立たずすぎる法律と好き放題に運用する行政と司法。

それらを指摘する数学ならぬ科学的な知見はある。一つ一つ、論破できる。

だが、フェイクニュースで煽られた感情は、常に理性より強い。映画でも史実でも、戦艦大和は建造されたのである。そして撃沈されたのである。
日本の林業も非科学的政策の元に沈没していくのだろう。

戦争も林業も、理性的に行えない。それが日本人か。。。
 

2019/08/10

もう一つの「働き方改革」を

朝日新聞8月7日の「経済気象台」に、こんな記事が。

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このコーナーで林業を取り上げるのは稀だろうが、なかなか含蓄深い言葉が並ぶ。筆者は「第一線で活躍している外部の経済人、学者」だというが、林業についてそれなりの情報を持つ様子だ。果たして誰だろうか。

舞台は北海道のようだが、「持続的に森林を管理するのが本来の林業である。それを無視して切り尽くし、その後、同時期に同じ樹種を植えるという目先の対応のツケが回ってきた。

そして持続的な林業を行っている林業家と、彼が語ったエピソードを紹介しているが、そうした人がいかに例外的で珍しいかということを暗に語っている。

そこで働く人たちが自分の仕事に誇りを持てる働き方とは何か考える

昨今語られる「働き方改革」とは、残業を減らすなど労働条件の見直しを意味して使われている。それも大切……というより、当たり前のことだが、もう一つの働き方改革が必要ではないか。それは誇りを持てる仕事にするための働き方を模索することだ。

最近の林業を職業と関わっている人は、本当に今やっている施業方法が正しいと思っているのか。疑問は持っていないのか。持続的な森林経営になっていると言えるか。そして誇りを持っていると自信を持って他人に語れるか。

森林所有者、もしくは組織のトップに問いたいのはもちろんだが、その下で働いている人にとっても同じ。疑問を持っても下手に上司に進言して不興を買うと困る、同僚とも人間関係が悪くなる、もしかしたら給与や待遇、出世に響く……だから言われた通りにやっている……人も多いのかもしれない。あるいは「そんな難しいことは考えない。俺は木を伐るのが好きなんだ」「今儲かればいい、将来はそのときのこと」と言い聞かせて思考停止に陥っているか。
それって、自分の目先の事情のために森に犠牲になってもらう、ということだからね。そんな働き方が、果たして「誇り」になるのだろうか。

 

 

2019/08/09

同じことを語りつつ正反対?『森と人間と林業』

『森と人間と林業』(築地書館)が刊行された。著者は、村尾行一氏。村尾先生、これが最後、これが最後と言いつつ次々と新しい本を出すのだから……笑)。『間違いだらけの日本林業』『森林業』に続く第3弾だ。

ちなみに発売日は、7月31日になっている。拙『絶望の林業』とかぶっていること(笑)。校了日も、ほぼ一緒。この夏は、林業本の出版ラッシュか?(改めて『絶望の林業』は、奥付けを見ると、発売日が8月17日になっていたよ (゚o゚;) 。)

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目次も引用しておこう。

まえがき

序章 日本林業の心理と行動
1 森との永遠の会話
2 大きなチャンス
3 「木材栽培業」の不条理
4 日本林業、こうすれば復活する
5 日本林業近代化の道
第1章 森と木の文明史的意義
1 木材活用の意味するもの
2 木材の長所
3 木材の新用途
第2章 日本林業の基本問題と基本対策
1 日本林業はこれから伸びる
2 林政が目指す方向とは
3 「外材問題」の所在
4 「木材革命」が折伏した役物信仰
5 好況時代
6 「拡大造林」の原罪
7 乾燥の勧め
8 林業における流通の意義
9 里山の意味と意義
第3章 ドイツ近代林業前史
1 近世林業の誕生と破綻
2 近代林業の曙
3 ターラント学派の限界
第4章 ドイツ近代林業の個性
1 ドイツ近代林業の確立
2 「合自然的かつ近自然的林業」とは何か
3 近代都市における森とは何か
4 近代林業の経済的メリット
5 「多機能林業」
6 「フリースタイル林業」
7 「恒続林施業」
第5章 林業人はいかにして育てられるか
1 林業は「人」なり
2 初等教育と「森の幼稚園」
3 中等教育
4 零細林家と林業作業員の育成制度
5 上級林業人と高等林業人の育成制度
6 ドイツ語圏の「フォレスター」
7 日本林業と担い手問題
第6章 森へ行こうよ
1 ドイツ人にとってのウアラウプ
2 最も人気のある滞在地は森
3 森での歩きのレクリエーション
4 森の宿
第7章 日本林業で実践されていたドイツロマン主義林業
1 回顧
2 接点
3 暁鐘
あとがき

内容というより、私が読み取った点を紹介するが、前半は、ドイツ林業の変遷を追いかけつつ、いかに方針を転換してきたかを描いているが、そこで日本が「いつの」ドイツ林業を学び、本家が転換してからも昔のままの理論を振りかざして続けているかということが浮かび上がってくる。本家?が先に進んでいるのに、分家の日本は駄々をこねて100年ほど昔のまま座り込んでいることがよくわかる。
その結果、いまだに単一同樹齢林の育成と、大面積皆伐を繰り返す断続的な林業を続けているのだ。

次に感じたのは『絶望の林業』でも取り上げた林野庁の姑息さをより鋭く突いていること。具体的な例を引くと、

「新たな森林管理システム」の徹底批判の中でも指摘するのは、一見、国は都道府県を飛ばして山林にもっとも近い自治体(市町村)に権限を譲るように見せて、実は林野庁が瑣末な事柄まで指導(通達、準則、課長解釈、課長補佐指導、係長説明……)を行い、実質的に林野庁の直轄事業にしてしまいかねないこと。

森林林業白書2017年版にあるオーストリアのフォレスターの業務説明に、「林業経営の集積・集約化」というありもしない業務を付け加えた我田引水。さらにスイスのフォレスターの業務を説明する文面に、もっとも肝心の「造林育林業務」を含めない姑息さ。いずれも、日本のフォレスター(林業マネジメント者?)に合うようにこっそりいじったのだろう。

ただ拙著と決定的に違うのは、悪いのは人間なんだから、人間が変わればすぐによくなるよ、という明るい未来、見通しを語っていることだ。理想の恒続林や持続システムなんて、すぐ作れる、ドイツはそうだった、というのである。
その点私は、人間が悪いんだから、よくすることは不可能だ、日本人には無理だ、絶望だ、と結論づけている(笑)。私の語る「希望の林業」は、できるもんならやってみな、と突き放しているのだから。

同じことを語って正反対の結論にたどり着く。さて、どちらを信じるかな。

2019/08/08

Yahoo!ニュース「動物園のライオンの餌に……」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「動物園のライオンの餌に害獣の駆除個体を与える深い意味」を書きました。

この記事は、本当は6月に書く予定だったのが、ズレにズレて遅れに遅れて、真夏になってしまった。ま、腐るネタではないので。

意外と悩んだのが、「環境エンリッチメント」という言葉。最近は「アニマルウェルフェア」という言葉が流布しているから、それとの違いは何?と思ってしまった。
アニマルウェルフェアは、オリンピックの食材に求められたりして知られるようになった。「動物福祉」という訳語もあるが、動物(野生も飼育下の家畜や動物園、実験動物までのものも含む)の福祉的扱いを示す理念的な感じである。その点、エンリッチメントの方が、動物園の実践という点でより具体的とでも言えようか。

そんなに記事には関係ないのだけど。

 

2019/08/07

書店で『絶望の林業』見つけた

書店で『絶望の林業』を見つけました、というメールをいただいた。場所は三省堂成城店。

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なんと、ネットでも購入していただいているのに、改めて買っていただいた。感謝。
が。どこにあるの? という戸惑い(笑)。送っていただいた写真でも、なかなか難問だったりして。

「背表紙、目立ちません」とのこと(^^;)。

そのとおりだなあ。表紙カバーのデザインはわりと気に入っているが、背表紙はグレーのためかイマイチ目に飛び込んでこない。帯を原色にしたらよかったかな。

ちなみに私も見つけました。こちらはイオンモール四條畷内の未来屋書店。

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隣が真っ赤な帯……(^^;)。これに負けている。赤に目を引かれてから横の緑を見てください、というか。
平積みされるほどの部数ではないから、背表紙に気をつかうべきであったか。

ともあれ、順調にスタートしたようだ。Amazonでも一時期品切れ表示が出たが、今はまた復活。
発売当日は売上順位802位、ノンフィクション部門で94位だった。

林業という狭いゲットーもとい、業界の中でどこまで健闘するか。

 

 

2019/08/06

ハチミツとメープルシロップ

今夜のテレビ番組案内に「田中淳夫」出演という文面があったことに気づいた人は何人いるだろうか。

「マツコの知らない世界」という番組に「田中淳夫」は出演したようだ。

もちろん、私ではない。同姓同名の、もう一人の田中淳夫さん(^^;)。

ちなみに私は、マツコ・デラックスという芸人がまったく受け入れられない。テレビに顔が映った瞬間にチャンネルを変えるほどダメ。理屈抜きのほとんど生理的に受け付けない。それなのに、せっかく「田中淳夫」さんが出るのだからと、我慢して我慢して、顔を伏せながら見た。

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もちろん出演したのは、株式会社銀座はちみつの田中淳夫社長。私も面識がある。一緒に並んで写真も撮った(笑)。私に、たまに「ミツバチのこと話してください」という依頼があるが、私もミツバチや養蜂のことを記事にするが、それは間違い。逆に銀座の田中さんのところに「森林ジャーナリストとして」取材に行った人もいるようで、お互いたまには入れ代わってもいい。

ま、そんな話はともあれ、現在は都市の屋上養蜂が広がっていることを紹介していた。と言っても、たいして深くなくて、単に各地のハチミツを味わって喜んでいるだけのような番組だった。

もしかしたら勘違いする視聴者もいるかもしれない。屋上で養蜂やってハチミツ採って売れば儲かるぞ、と。
それはあり得ないだろう。屋上でどんなに巣箱を多く並べてハチミツを採取しても量的にはしれている。それを売ってもたいした販売額にはならないはずだ。なかには価格を100グラム3500円なんてつけている商品もあったが、それでも赤字ではないか。

だが、屋上ハチミツはブランディングにもってこいなのだ。だからハチミツをそのまま売るというよりは、ハチミツ入りのケーキなど関連商品を開発することが大切だ。実際、銀座のハチミツというだけでかなりのブランドである。ほかの地域でも都会の屋上で採蜜したことが特徴となりブランディングできる。

 

それと同じ構造なのが、秩父のメープルシロップだろう。山にあるカエデから樹液を集めて煮詰めるとメープルシロップになるわけだが、その量たるや、わずか。ところが、今や秩父駅前の土産物店には「秩父の楓樹液」を売り物にした商品が並んでいる。サイダーにデニッシュパンに、ゼリーにさまざまな洋菓子。実際の含まれている樹液はわずかだろうが、秩父の山に生えているカエデから採れた樹液であることがブランド化している。町の価値を上げて、落とされる金は馬鹿にならないだろう。

銀座のハチミツに、秩父のメープルシロップ。どちらも自然資源であるが、この戦略を学ばないといけない。素材を素材として売っていてはダメなんだよ。あ、これ、素材(木材)をそのまま売って損している連中に言っているんだけどね。

2019/08/05

違法伐採対策「timflow 」と一知半解

先日、奈良で 某会合があって出席した。ここで総合商社の木材調達部門の方が話をすると聞いたからである。

木材調達と言っても基本は外材の話なのだが、話されたのは伊藤忠建材の元担当者で、現役の社員の方も参加されて補足してくれた。

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そこでは北欧の話が多かったが、ルーマニアの建材の話を出た。ルーマニアと言えば、私はYahoo!ニュースに「原生林を破壊したルーマニアの木材が日本の住宅に化ける事情」という記事を書いている。そうか、オーストリアのシュバイクホファー社の建材を輸入しているのが、伊藤忠建材であったか。

ただ、そこで紹介されたのが、違法木材対策としてルーマニア政府が実施している「timflowチムフロー」である。

伐採地から製材、そして輸出までの木材流通を監視するシステムだ。申請された伐採量と入荷量を把握して違法材が流入しないようにする手法である。ちょっと森林認証制度CoC認証に似ている。
私は、本当に機能しているのか、4,5年前から実施しているというなら、なぜ今も違法木材が問題になっているのか質問した。

その当たりは宿題となったが、実際にシュバイクホッファー社は現地でもかなり評判が悪いらしい。それを輸入したらアカンでしょう。
もっとも、日本にはチムフローに相当するような木材管理はないのだから、ルーマニア以下である。ちなみに日本の「合法証明」はクズである。泥棒に店番を頼むようなもの。

気になったのは、海外の木材調達では、どこでも違法木材が話題に上がっているという点だ。それは北欧でも同じとか。今や発展途上国だけではないのである。そして「日本でも起きているらしい」とWedgeの記事を持ち出されたが、「あ、それ書いたの私です」。(笑)。

ともあれ、違法木材の横行とその対策はどこの国でも課題のようだ。日本では対策そのものが取られていないわけだが……。


ちなみに出席者は建築系の人が多かったのだが、そのためか「日本の森は伐らないから荒れている」という意見の元に「だったら、もっと伐ってほしい。国有林の保安林を外して伐らないのか」という意見が出たのには驚いた。「盗伐でもいいから、伐ったら森がよくなるんじゃないの」とまで。

単純に日本は木が余っている、だったらしゃにむに伐れ、盗伐だっていいじゃないか、という発想になるのか。おぞましい。

商社にしても、国産材を扱いたい気持ちはあるようなのだが、なぜ国産材が十分に出回らないのか事情をほとんど知らないらしい。価格も「日本の山は急峻だからコストがかかる」と単純化してしまっている。南ドイツやオーストリア、スイスなどの林業地は山ばかりだよ。北欧だってノルウェーは山がちだし。そんな感覚的な情報で国産材業界に手を出したら、痛い目に合うだろう。
木材商社が当地の林業事情に詳しいわけではないわけだ。

結局、一知半解というか、勉強不足も甚だしい。そして反知性というか無知性な意見が飛び交うのも虚しい。

 

2019/08/04

長野でお会いした人々に

次世代森林産業展2019では、多くの人に出会った。交換した名刺だけでも数十枚になる。それを整理していて、名刺ファイルを改めて購入しないといけないことに気づいた。

講演が終わってから、あるいは書籍販売ブースで声をかけてくださった方々。そこでちょっとした自己紹介と意見交換をしたわけで、それなりにためになる情報がいっぱいあった。私が紹介した「絶望」の次の「希望の林業」にすでに取り組んでいますという人もいれば、アドバイスを求められるケースもあった。皆さん、熱心だ。こうしたイベントに参加する人は、基本的に意識が高いのだろう。

ただ、ここで皆さんに感謝するだけで終わっては私らしくない? ので、あえて苦言を呈しておこう。

話した中には、宮崎の盗伐問題に言及する人が少なくなかった。講演でも触れたし、何より私がここ1~2か月、もっとも力を入れて取り組んできた報道だからだろう。なかには宮崎県から来られた方もいた。それなりに気になる情報ではあったようだ。

そこで気になるのは、みんな自分事に置き換えていないように感じた。「うちの地元では起きていない」とか、「関東が管轄なので九州のことはわからない」といった言葉ばかりが出る。自分の担当区域でなかったら平気なのか?

本気で盗伐が悪いこと、林業界にとって由々しき事態だと認識していたら、いや森林が無残な状況に陥っている点に怒りを感じていたら、自身の管轄を超えて憂慮すべきだし、自らのできることを考えるべきではないのか。本当に自身の地元で起きていないと言えるのか。単に声を上げる人がいない、上げた声を誰かが握りつぶしているからだとは想像しないのか。実は、私は未確認ながら宮崎以外の各地でも盗伐まがいのことが起きていることを耳にしている。
それとも管轄外の地域のことに口をはさんだら縦割り社会では許されない行為として追求されるのを恐れているのか? それが自身の出世や給与に響くから……?

盗伐の蔓延は、確実に宮崎県のイメージを落とし、さらに日本の林業を貶めている。世界から「そんな国」として見られるようになるだろう。それでも、「自分には関係ない」と目を背けているのか。

盗伐だけではない。日々日常の業務で環境を破壊しているケースを認識しているのか。
林業現場の安全管理がデタラメで多くの死傷者を出していることをどれだけ認識しているのか。
何の役にも立たない施策を展開して、税金を無駄遣いしていることに吾に返ることはないのか。

結局、自分が日本の森を(いや地球の環境を)守る一人なのだという意識が希薄なのではないか。自身の立場の維持と森林環境を天秤にかけ、結局は森林に目を伏せて犠牲になってもらうわけだろう。

これが、私が林業に絶望する理由の大元である。

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数少ない、次世代森林産業展で撮った写真。

2019/08/03

善光寺余談

長野では、ほとんど次世代森林産業展会場(と夜の飲み屋)だけしか足を運んでいないのだが、さすがにそれではマズいと駆け足で寄ったのが善光寺。

そこで月並みの参拝観光をしたのだが、ちょっとだけ気づいたこと。

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本堂のフローリング……と呼ぶと妙か。ともかくケヤキだろうが、この分厚さ。柱も目につくのはケヤキであった。

ただ内陣のフローリングは針葉樹かも。

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この浮き上がった節が素晴らしい。幾人もこの上を歩き、節以外は磨耗したのだろうが、それが自然のデザインになっている。
ちなみに内陣の撮影は禁止だった。この写真を撮った後で気づいたよ。まあ、仏像などは撮っていませんから……。

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善光寺最大の行事とかの回向柱。7年に一度立てるのだそうだが、10本並んでいて、それが順々に朽ちている。つまり7年ごとに木が朽ちていく様子を目にできる回向、じゃない趣向。本当に最初からここに立てたのか、後から移動させたのかはわからないが、木質の腐朽性実験地になっていて面白いと思ったのであった。

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70年前の回向柱?

2019/08/02

『絶望の林業』を超えて……

「次世代森林産業展2019」から帰った。

でも2日間会場に張りついたのにほかのブースも展示もほとんど見ていないし、数あるセミナーもほぼ聞いていない。
その間『絶望の林業』の販売をみっちりやりました。セミナーと会場のブースで120冊完売です。よくやりました。これは記録的でしょう。自分を褒めてあげたい(^o^)。いえいえ、販売に協力してくださった皆さまのおかけです。

具体的に手伝っていただいたのは、アクセスインターナショナルという会社の方々。ここでは「フォレストジャーナル」の創刊をめざしていて、拙著の販売とともに創刊準備号の配布を行っていた。こちらにとっても、無料のフォレストジャーナルを配りつつ、拙著に話を誘導するという戦法なのであった(⌒ー⌒)。

ところで、このフォレストジャーナル創刊準備号。

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このような表紙なのだが、ページを繰って最終項を開くと、こんな記事がある。

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希望の林業\(^o^)/。私の連載が始まります。絶望を超えて希望は見つかるのか?

 

 

2019/08/01

完売!次世代森林産業展

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次世代森林産業展。初日朝からの講演会、予想を大きく裏切り、150人以上立ち見も出て入場お断り状態に。

おかげさまで3日間で販売するつもりの『絶望の林業』70冊プラスアルファがほとんど午前中で完売しました!

ありがとうございます。午後がヒマで…名刺も尽きて、脳疲労を起こして身体もあまり動かず。。。

 

でも、明日明後日参加予定の皆さん、ご安心?ください。急遽版元から50冊取り寄せました。明日午前中に届きます。価格も本日と同じ2000円ポッキリ。

フォレストメディアワークスのブースで販売します。しかも「forest journal」も無料プレゼント。

さらに、日本林政ジャーナリストの会のブースでは、築地書館コーナーでは林業本がズラリ並びます。そこには『樹木葬という選択』『鹿と日本人』が販売。こちらも消費税抜きの割引価格です。

ご来店お待ちしています(^o^)。

2019/07/31

長野市の街路はカツラ!

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長野市に来ている。

そこで善光寺への道を歩く。大通りは電線も地中に埋められ整備が進んでいるが、ふと気がついたのが木の灯籠。通常、石灯籠だと思うのだが、ここでは木灯籠だ。珍しい。

そして街路樹はカツラが目立つ。カツラの街路樹って、初めてだ。かなり珍しいのではなかろうか。しっかり水をあげないと枯れないか。

善光寺の巨木柱にはケヤキが多かったように思うのだが、カツラも使っていたそうだ。それが影響しているのだろうか。

木灯籠とカツラ。これが長野市のイメージとなるかな。

 

2019/07/30

林業本がお安く買えます~次世代森林産業展2019 

8月1~3日は、長野市ビッグハットで「次世代森林産業展2019」が開かれる。

林業関係者には、そこそこ情報が流れているかと思うが、結構大きな、おそらく日本で最大の林業の展覧会だ。林業機械の展示だけでなく、多くのセミナー、シンポジウムなどが開かれる。

後援は長野県とオーストリア大使館であるように、若干ヨーロッパ系林業の香りがするかもしれない(笑)。

私は1日午前10時半より、「林業に絶望する理由・希望を見出す理由」と題した講演を行うとともに、刷り上がったばかりの『絶望の林業』を販売する。講演時はセミナー会場(会議室1)で販売するが、その後は別のブースを借りて行うので探してください(^o^)。

別に森林・林業書籍を売るブース(築地書館)もあるので、こちらも探してください。ここでも、拙著『樹木葬という選択~緑の埋葬で森になる』に『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』の販売をする予定である。

なお、これらは、市販よりお安く買える予定。


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と言っても、明後日だからなあ。長野市近郊の人しか無理か。もっと早く告知せいって? そのとおりです<(_ _)>。

 

ちなみに私は明日、長野入りします。夜、お暇な方はいますか? 孤独のグルメ楽しもうかと思ったり、夜の観光楽しもうと思ったり、心はざわついています(^o^)。

 

2019/07/29

世界一高い木造ビルの建材

ノルウェーの首都オスロの北にある小都市ブルムンダルに世界一高い木造の複合ビル「ミョーストーネット(Mjostarnet)」が建てられたそうである。建物の高さは約85.4メートル、18階建て。2017年3月から工事が始まり、総工費5000万ユーロ(約61億円)をかけて今年3月に完成したそうだ。ちなみに建築中の動画もある。日本をはじめ世界中から数千人もの人々が視察に訪れているとか。

動画に映る景色を見ても、のどかな田園都市ぽいのだが、ここに18階建てビルを建てたのは何だろう。施主のオーナーのArthur Buchardt氏は、地元の素材や地元の生産者、地元の企業を使って、世界一高い木造ビルをつくりたいと願ったというのだが……。
建物に使われた主な木材は、近隣の森から持ち込んでいる。逆に言えば、田舎町にこれだけの資力のある会社が成立している点でも興味深い。ホテルやオフィス開発の不動産会社のようだ。

ただ建材が木材と言っても、約1400立方メートルの構造用集成材にエレベーターや階段のシャフト、バルコニーなどはCLT、床の一部に単板積層材(LVL)を使用した。すぐに想像されるCLT一辺倒のビルではない。

ちなみにこれまでの世界一高い木造建築は、ブリティッシュコロンビア大学の18階建ての学生寮で、高さ53メートル。こちらは木材、鋼鉄、コンクリートの複合建築だし、主に使われたのは超厚物合板「マスティンバー」だそう。意外や世界の木造ビルは、CLTに頼っていないのだ。
  

それよりも、写真を見たところ、外壁はケボニー化木材ではないだろうか。

私が同じノルウェーのトロンハイムで見てきた9階建て木造ビルと酷似している。こちらはCLTの構造材に外壁がケボニー化木材を使ったと聞いている。

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ちなみに、最近はケボニー化木材と呼んでよいのか若干迷う。ケボニーというのが会社名であって固有名詞になっていないからだ。より普遍的には、フラン樹脂化木材とでも呼ぶべきかもしれない。実際、日本で進むケボニー化木材技術の研究では、ケボニーとは呼ばず「フラン樹脂化」は名付けている。

もしこの加工木材に興味のある方、そして肉眼で見たい方触りたい方。明々後日に長野市で開かれる次世代森林産業展2019へどうぞ。私のセミナー(1日午前10時30分~12時)では、実物を持って行き紹介する。触らせてあげようv(^0^)。

同時に8月5日に発行予定の『絶望の林業』の先行発売も実施。なんと定価2200円プラス税(2376円)のところ、2000円!ポッキリ
破格値であるぞよ。部数に限りがあるのでお早めに。

 

 

 

 

2019/07/28

切株の…周りの生態系

以前から不定期で「切株の上の生態系」を紹介してきた。伐採された跡に残された切株は、地面より少し高いところに切り口があるわけだが、そこに新たな萌芽が伸びたり、飛んできた種子が切株上の窪みに落ちて根や芽を出して伸び、あたかも底に新たな生態系をつくっている……姿を見つけたら写真を撮って紹介してきた。

今回見つけたのは、「切株の上……」ではなかった。

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この切株、地面すれすれで伐っている。これでは地面と変わらぬ植物が生えてくるので違った生態系になりにくい……と思っていた。

が、よく見ると、そうでもない。切株の周囲に草が集中して生えているではないか。周りは落葉はあるが、草が生えていない。

なぜだろう。一つ考えられるのは、切株が腐って栄養分を周囲ににじみ出しているので、草の生長がよいという可能性。

だが、それだけとも思いにくい。枯れたとはいえ「寄らば大樹の陰」効果もあるんじゃないか。あるいは根張りの隙間に草が生えるとライバルの草が生えにくいとか、何か草にとって都合のよい面があるのかも……とか想像してしまう。

何か、もっとはっきりした理由はあるだろうか。誰か研究していないか。

 

2019/07/27

「 森の歩き方・楽しみ方」連載終了

日刊ゲンダイに今年2月から連載していた 「森は癒しに溢れている 森の歩き方・楽しみ方」が終了した。

当初は3か月くらいの予定だったのが、5か月も続けてしまった。

これは、私にとって異色の記事。いや、内容ではなく文体が。もっとも近いのが、このブログだろう(^^;)。私の記事文体は、基本的に硬いのだが、日刊ゲンダイという媒体の性格や読み手がサラリーマン、とくに読者ターゲットがリタイヤ後かリタイヤ直前のサラリーマンということだったので、とくに森林に興味のもつ層ではない。だから、できる限り砕けた文体でありながら科学知識も散らばらせつつ森の魅力を伝えるという挑戦を心がけた。

幸い、記事はすべて日刊ゲンダイのサイトにアップされている。

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こんな記事。

改めて、こんな文体で書くのは楽しいな♪ 真面目に絶望だ希望だ、と書くのは飽きたよ(´_`)。

今後、こんな文体の記事は書けないのか……ブログに書こ。

 

2019/07/26

Yahoo!ニュース「宮崎盗伐事件の潮目が変わった…」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「宮崎盗伐事件の魚目が変わった! 海外からも向けられる厳しい目」を書きました。

実は、この記事は最初の逮捕者(黒木容疑者)が逮捕された時に書きたかったのだが、その時は台湾帰りであるうえに、さまざまな執筆や校正や書類雑務や家事や京都の夜遊びや…があって余裕がなくて書けなかった。

ちょっとタイミングを外したかな、と思いかけたところに第二のプローカー逮捕の報が入り、さらに検察審査会の議決も出て、どんどんネタが溜まっていく。これは書かねばならないでしょう、と焦って隙間を縫うように時間を確保して執筆したのである。

しかも、中国のNPOの動きもつかんでいたからもってこいだった。おそらく、今後は欧米にも「日本の盗伐事情」が伝わるはずだ。

幸い世間の(というか、ネット上の)反応はよい。ただ、日本の林業界の反応はというと、まったく鈍い。驚くほど鈍い。盗伐であっても林業仲間の意識なのだろうか。盗伐犯が捕まって、内部事情をげろったら、自分にも飛火する恐れを持っているのかもしれない。誰もが脛に傷を持っている?臭いものには蓋をしたいムードがプンプン臭う。

私は、この盗伐がどうにも許せん(単に窃盗としての盗伐ではなく、その背後に見える倫理観のなさや政治権力や行政のいい加減さ。林業に絶望する理由の象徴的存在とも言える)ので、声を上げ続けるつもりだ。世界中に知らせて、宮崎県産木材を全面的に取扱い中止に追い込みたい。それぐらいの事態にならないと、本気で取り締まらないのではないか。

 

2019/07/25

ベトナムへの木材輸出の?

日本の木材輸出に関して、私が注目しているのは、ベトナムだ。

貿易統計上は目立った数字にはなっていないが、実は中国、フィリピン、韓国、台湾の次ぐらいに来ているはず。フィリピンは合板輸出だろうから、丸太輸出としてはいい線いっている。ベトナムは、内需ではなく木材加工国として、世界の舞台に立っているのだ。家具、建具、内装材などを世界中に輸出している。今や素材はベトナムや近隣の国だけでは集まらず、アメリカ・カナダから輸入しているが、そこに日本も割り込んだわけだ。

そんな中、今や農林中金が中国四国地方の木材を集めてベトナム輸出していることを知った。扱うのは、主にヒノキ丸太。

その陰には愛媛県森連があるのだが、愛媛だけでは対応できないほど輸出量が増えて、広島、山口、島根、大分、熊本、長崎の6県森連から愛媛県森連が木材を購入していた。そして四国・九州地方の木材は愛媛松山港から、中国地方の木材は島根県の浜田港に集めてから送り出しているそうだ。そして5年で扱い量を10倍にしたという(約3000立方メートル)……しれているか。

ま、ここまでは県森連としては(珍しく)よくやっている、頑張っているなと思うのだが、気になるのは、なぜかベトナムに日本式の木造家屋を普及させようとしていることだ。構造材として利用してほしい、ようするに日本的なヒノキ柱を売りたいらしい。そのために日本の木材加工技術も伝えるという。だからベトナム人の研修生を受け入れているのだが……。今年中にモデル住宅建設を考えているとか。

なんかオカシイ。日本がベトナムの木材の使い道を誘導しようとするのは無理でしょ。ベトナムに日本式住宅なんか建ててどうするのか。結局、構造材の方が量を出せるという発想ではないのか。あちらは世界の市場を見ているのだから。世界は柱じゃなくて板だ。
丸太を送り込んで、お好きにどうぞ、というのは商売としては下手。むしろベトナムの木材加工(内装材)に適した木材を輸出するよう努力して、単価を上げることを考えないと。ベトナムでも森林認証取得業者は増えてきたみたいだ。そのうち「日本の木材も認証つけないと買わないよ」なんて言われるんじゃないか。独りよがりにならないよう望みたい。

 

2019/07/24

3万年前の台湾にスギはあったか

国立科学博物館が主催した「3万年前の航海プロジェクト」というのがある。すてにニュースにもなったが、台湾から与那国島へ丸木舟で渡る実験航海だ。

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詳しくはリンクしたHPを見てもらうとして、そこで疑問なのは丸木舟が台湾でつくられたのにスギ材からつくったとされたこと。名前もスギメと名付けられたとか。

あまり詳しく舟づくりは紹介されていないのでわかりづらいが、台湾台東から石斧で伐りだしたスギの大木を石斧でくり抜いてつくったという。

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しかし、スギは日本の固有種で台湾には基本的にはない。いや、実はあるのだが、それは明治の日本人が植えたものだ。実は、先日の私の台湾行きで見てきた。これを見るのが目的だったと言っていい。

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これは台北南部の山中にあったスギ林。土倉龍次郎が持ち込んだとされる。ただし、写真のスギは直径40センチまでだから、明治の植林ではなかろう。一度伐って再造林したか。


一方台東の丸木舟づくりでも、一応ちらりとスギ林が写っている。それも太い。戦前に植えられたスギ林が今も残されているのだろうか。それとも丸木舟づくりは日本で行った? それを台湾まで運ぶのか?

解せないのは、国立科学博物館とあろうものが、3万年前に台湾にスギは生えていなかった、ということを知らなかったとは思いにくい。なぜスギを使ったのか。タイワンスギでもタイワンヒノキでもあるだろうに。一瞬、タイワンスギかと疑ったが、あの樹皮はやはりスギだと思うなあ。ちなみにスギは繊維が真っ直ぐで丸木舟をつくるには適していると思う。

今のところ謎だ。基本的な舟づくりに関することを詳しく発表してくれないと、プロジェクトの意義が下がると思うのだが。誰か教えてくれ。

 

 

追記・以上をアップしてから、改めて調べてみた。すると、何のことはない、丸木舟は日本で、東京でつくられたのであった。博物館内で。

この丸木は、石川県の能登半島に植えられていた「杉の木」です。NHKスペシャル「人類誕生」をご覧になった方々にお教えしますと、「番組で倒されたあの木がこれです!」。樹齢は140歳程度。直径1m、切り出して持ってきた状態での長さは7.5mの大きさでした。昨年9月に能登で行なった伐採実験で、3万年前に存在した石斧を3万6千回も振るった結果、6日目に切り倒すことができました

スギを使ってよかったのかなあ。

2019/07/23

半分、なつぞら

今日の天候は、青空が広かってギラギラ照りつけるかと思えば、急に暗くなっていつ降るか……と思わせる空模様になったり……。

こーゆーのを「半分、なつぞら」というかなあ(^^;)。

そこで、昨夏に見た半夏生(ハンゲショウ)の景色を見たくなって、生駒山の湿原へ向かう。気のせいかもしれないが、最近はハンゲショウを売り物にする花園が増えたように感じる。これまで注目されなかった植物が、急に注目を集めだしたような……。

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よく咲いていた……て、これ、花とちゃう。葉の一部が白くなるのであった。

ハンゲショウは、不思議な植物だ。葉の半分ぐらいが白くなるのはなぜなのか。いや、正確に言えば1枚の葉の半分が白いのではなく、ほとんどが白い葉と完全に緑の葉が混じっている生え方をしている。白い部分は葉緑体がなくて光合成できないとしたら、植物としては非常に不利だ。それとも白い葉緑素があるのか? 
もしかして白い葉は、華麗な花びらと同じ役割を果たしているのかもしれない。派手な花ぽく見せて昆虫を呼び寄せ、その葉の下の地味な花の花粉を媒介させようという深慮遠謀……。

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それに葉をアップで見ると、実はさしてきれいではない。ただパッとしない葉でも集まると、不思議な景色となって映えるのだ。葉の中にもさまざまな性質があって、それが集まることで特異な効果を発揮できるのかもしれない。

余談だが、朝ドラの「なつぞら」。アニメ創成期を描いた話と思っていたら、戦災孤児や北海道開拓の逸話まで交えつつ、戦後日本の夢を見ることのできた時代を上手く描いている。実際にこの時代を生きた人にとっては、辛くて酷いことも多かったのだろうけど、いつか必ず抜け出すぞという「希望」があったのではないか。「絶望」流行りの昨今、ちょっと羨ましいぞ。

2019/07/22

シカは川の環境を変えるか?

かつてシカは、絶滅が心配される動物だった。ところが今やシカの増加が問題になっている。その理由の大きな点は、「シカの食欲」にある。人間のつくる田畑だけに留まらず森林まで食べ尽くす勢いだ。

シカの食欲が、農作物への被害に始まり、人工林の植林地を全滅させるケースもある。さらに進むと、原生林の植生を変えてしまうことが指摘され始める。今では、そうした天然林の変化が哺乳類や鳥類、そして昆虫などの生存を脅かしていることも指摘されだした。ほかにも菌類への影響とかの研究もあったか。

私も、シカが林床の草木を食べて蜜源をなくすことで、ミツバチが生きて行けず、養蜂をも危機に陥れている可能性を指摘した記事を書いている。

国産ハチミツが大不作。その原因を探ると意外な現象が見えてきた

そして、今度は、川の生態系も変えてしまっているんじゃないか、という研究があることを知った。

行ったのは京都大学東南アジア地域研究研究所へ特定助教中川 光さん。

京都大学芦生研究林で地元の方から「シカが川岸の植物を食べたせいで魚が減ってしまった」という話を聞き、「本当に芦生の川の魚は減っているのか?」とデータを調べ直したそうだ。

芦生研究林は大学の森というよりは、近畿地方有数の自然林として有名だろう。地元ガイドによる観光ツアーも行われている。ただ森の林床は1990年代までは多様な草木に覆われていたが、シカの食害が進んで、2006年ごろから林内の大部分の地面がむき出し状態だという。

2007年5月から11年間に調査地で観察された魚のうち13種のデータを確認すると、ウグイは最初の頃は毎回200個体近くが観察されていたのに、ここ数年は100個体も見られないようになっていた。ウグイの産卵場所は砂のない川底である。逆に砂地が好きな魚カマツカの個体数が増えていた。そして川底の環境は、大きな礫に覆われた川底がこの10年で減少して、砂地の面積が増えている傾向がみられた。

芦生研究林の川ではこの11年で川の環境が変化し、それが魚の個体数にも影響していることは間違いなさそうだ。問題は、その原因。その流域では、人間が伐採などの環境攪乱はしていない。だからシカの食べ尽くしによる林床植物の消失が、土砂の流出を増加させて調査地の川の環境が変化し、魚類の個体数にも影響を与えたのではないか?

結論としては、「川岸の草をシカが食べた」から川の魚が減った……という明確な答が出たわけではない。ただ可能性は浮かび上がったわけである。

詳しい内容は「シカの個体数増加が川の生きものに与える影響とは ? 10年におよぶ研究林の調査データから明らかにする」をお読みください。

 

私の感想は、いよいよシカは悪者になってしまうなあ……である(^^;)。ちなみに、奈良公園では、今春生まれたバンビが元気に走り回っているぞよ。

2019/07/21

ICTもAIも、日本林業にはいらない?

フィンランドのコレクティブ・クランチという企業が、AI(人工知能)を活用した林業マネジメントシステム「Linda Forest(リンダ・フォレスト)」の開発に取り組んでいるという。

「Linda Forest」は、GISをベースにAIによって衛星画像データやセンシングデータ、気象データ、地理データなどを解析して、林業地における森林資源の樹種とその質、量を精緻に予測する仕組み。森林資源の精緻な予測が簡単に得られたら、現地調査をする手間や費用を削減でき、効率よく木材生産をその需要に結びつけられるから、材価も上がり無駄が出なくなる可能性がある。

……というニュースがあった。フィンランドの林業産出額は年間750億ユーロ(約9兆1400億円)で、GDPの4%以上。そんな基幹産業だから、最先端技術が惜しみなく投入されているなあ、という感想を持った。
ただし、ここでAIによって林業がどのように変わるかと予測するつもりはない。

先日、テレビで久しぶりに「サマー・ウォーズ」を見て~世界を網羅するネット上のOZシステムを暴走したAIが破壊する~設定に感心した。実は、初めてこのアニメを見たとき(10年前)は、OZシステムやらAIがしっくり来なかった記憶がある。現在(2009年)からかけ離れた設定だったからである。それが今回はすっかり馴染んでいた。まだ現実世界が追いついたとまでは行かないけど、それなりに「あり得る世界」と認識できるようになったからだろう。

世界の林業は、すでにICTの時代となった。情報通信技術で生産と消費が結ばれている。ハーベスタに乗りながら、木材の市況を聞いて高く売れそうな寸法に造材することも行われている。そしてAIへと進歩しつつあるわけだ。

そこでハッとした。ICTの導入どころか、日本の林業はいまだに重厚長大な巨大林業機械を信奉しているのだ。ようやく今後はドローンを活用して……なんて言っている状態。ICTの輪郭に触れた程度か。いや、ドローン活用なども研究レベルで実用的に使われている現場はほとんどない。スマホで材積計算! なんて技術も全然普及していない。一時は登場したネットの木材市場も低調なまま。

だからAIを林業に……なんて言えるレベルに達していない。入れたって使えない。いや、AIだって入力すべき情報はあるが、それさえ揃っていないいのだから、AIも匙を投げるか。境界線未確定なのは、AIでも解決してくれないよ。
だから日本の林業現場は人間力で勝負している……のではなく、現場の人間は何も考えず(考えさせられず?)お上の言われたとおりに動かされているのが現在の林業だろう。しかしお上だって、単に思いつき?勘?で計画をつくっている。

私は、そのうちパーソナルAIの時代がくるんじゃないかと思っている。パーソナルコンピュータ(PC)のように個人が自分専用のAIで情報提供や助言を受けて判断をゆだねる時代。それが日本の林業に応用するなら、たとえば林業人に個別の林業AIをセットして人が見た現場やその土地のデータを読み込んで最適の判断をしてもらう。人間は言われるがまま。人間のお上に従うよりましな林業になるかもしれない。

ちなみに小松左京の遺作「虚無回廊」(未完)には、AE(人工実存)が登場する。「実存(Existence)」である。AIをさらに発展させて、自ら「魂を持つAI」となるのだ。もう、人間いらない(笑)。

 

 

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森と林業と田舎