木曽の木地師
木曽へ行ったときは、木地師の里も案内していただいた。
訪れた工房では、何十人もの弟子をとっている。そこで見せていただいたのは、不思議な急須置き。 急須にお湯を足す時など、蓋の置き場に困る。そのまま置いたら口の部分が汚れるし、逆向きに置くにはつまみがあるから安定しない。
そこで、このような蓋がおけるものを考案したのだという。案外簡単そうでいて、切り込みの角度などが難しいらしい。
ほかにも、ろくろで丸太から器を切り出す場合に、意外な向きでセットすることで、これまでにない木目を出したものとか、半分腐っていた木切れを、腐りの部分を活かした見事な一輪挿しに加工した作品もあった。
それらを作ったのは、みんなよそから来た弟子だという。親方(社長)は、「既成概念のない彼らの発想は素晴らしい」と褒めていた。しかも、商品を売るために、こんな試みもしている。
素材となる木を展示して、どんな木目や色合いか紹介したり、この店の売上ランキングまで、張り出している。
さらに観光ツアーのろくろ体験とか、見学も受け入れていた。
伝統的な木地師としては、思いもかけないことばかりのようなのだが、それを受け入れた親方も凄い。案内してくださった方によると、「昔よりも、よくしゃべるようになった」とか。以前は、寡黙な職人だったらしい。
何も自分がビジネス感覚を鍛えて全部仕切る必要はない。よそ者を受入れる度量さえ備えれば、周りが動いてくれることもある。さらに技術の進歩にもつながった。
こうしたケースは参考になるのではないか。
「木製品・木造建築」カテゴリの記事
- 棚?極限のシェルフ(2025.04.16)
- セルロースナノファイバーの罠(2025.04.18)
- 防腐木材の末路(2025.04.08)
- 大極殿のベンガラ赤(2025.04.06)
- 関西万博の日本館(2025.03.22)
コメント