鹿の糞
毎日新聞によると、奈良市長のところへ、観光客がメールを送ったそうだ。
「県外から観光で来たが、東大寺参道がシカのフンだらけでとても不愉快だった。二度と奈良には来たくない」
奈良と言えばシカ、だが、その糞にいちゃもんが付けられるのか。シカは見たいが、糞はイヤとは、いかにも観光客の要求である。そもそも奈良の景観は、シカとシカの糞が重要な役割を果たしている。
人が森を伐り開き、明るくなったところへ草が生える。草を食べるシカが増え(それを人は神の遣いとして保護し)、シカは糞をする。糞はコガネムシなどの糞虫によって地面に引き込まれ餌となるだけでなく、土壌の栄養となる。それが次の草を育て、シカが生息できるだけの草の量を保てる…こうしたサイクルができているのだ。
ただ、シカの数が増えたり、東大寺のようにシカが集まってくるところでは、糞虫の活躍も間に合わないため、糞は必ずしも全部片づけられない。もちろん東大寺も毎日掃除はしているだろうが、昼間の分は間に合わないだろう。
そのうえ、別の要因もあるようだ。本来のシカの糞はコロコロしているのだが、最近はベタャ、としているそうだ。それが汚く感じる面もあるらしい。
ただ、それにも裏があって、なぜ糞の質が変わってきたのかというと、旅館店主の説(^^;)によると、草やシカ煎餅(成分はぬか)よりも、観光客がスナック菓子を与える量が増えていることが関係あるという。菓子の脂肪分が糞の質を変えるという。
そうでなくてもスナック菓子は香辛料を含んでいるので、シカは腹を壊す。実際、そのために死ぬシカも数多い。奈良公園では年間200頭あまりのシカがなくなるが、その原因は交通事故のほか食あたりが非常に多いのだ。
シカ煎餅の売上が落ちているのも、スナック菓子を与えるせいらしい。売上の減少が、シカの管理費用が出ない原因でもある。今や奈良のシカ愛護会は、運営が立ち行かなくなってしまい、伝統の角きり行事も中止しかけているのだ。
観光客も、この連鎖を知ったうえで、わがままを言ってもらいたいね。
奈良公園では、ごみ箱に頭を突っ込んで弁当の残飯を漁っているシカも見かける。こうした食料事情がシカに与える影響を考えないいけない。
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