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2007/06/30

鹿の糞

毎日新聞によると、奈良市長のところへ、観光客がメールを送ったそうだ。

「県外から観光で来たが、東大寺参道がシカのフンだらけでとても不愉快だった。二度と奈良には来たくない」
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奈良と言えばシカ、だが、その糞にいちゃもんが付けられるのか。シカは見たいが、糞はイヤとは、いかにも観光客の要求である。そもそも奈良の景観は、シカとシカの糞が重要な役割を果たしている。

人がを伐り開き、明るくなったところへが生える。草を食べるシカが増え(それを人は神の遣いとして保護し)、シカはをする。糞はコガネムシなどの糞虫によって地面に引き込まれ餌となるだけでなく、土壌の栄養となる。それが次の草を育て、シカが生息できるだけの草の量を保てる…こうしたサイクルができているのだ。
ただ、シカの数が増えたり、東大寺のようにシカが集まってくるところでは、糞虫の活躍も間に合わないため、糞は必ずしも全部片づけられない。もちろん東大寺も毎日掃除はしているだろうが、昼間の分は間に合わないだろう。

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そのうえ、別の要因もあるようだ。本来のシカの糞はコロコロしているのだが、最近はベタャ、としているそうだ。それが汚く感じる面もあるらしい。

ただ、それにも裏があって、なぜ糞の質が変わってきたのかというと、旅館店主の説(^^;)によると、草やシカ煎餅(成分はぬか)よりも、観光客がスナック菓子を与える量が増えていることが関係あるという。菓子の脂肪分が糞の質を変えるという。
そうでなくてもスナック菓子は香辛料を含んでいるので、シカは腹を壊す。実際、そのために死ぬシカも数多い。奈良公園では年間200頭あまりのシカがなくなるが、その原因は交通事故のほか食あたりが非常に多いのだ。

シカ煎餅の売上が落ちているのも、スナック菓子を与えるせいらしい。売上の減少が、シカの管理費用が出ない原因でもある。今や奈良のシカ愛護会は、運営が立ち行かなくなってしまい、伝統の角きり行事も中止しかけているのだ。

観光客も、この連鎖を知ったうえで、わがままを言ってもらいたいね。

奈良公園では、ごみ箱に頭を突っ込んで弁当の残飯を漁っているシカも見かける。こうした食料事情がシカに与える影響を考えないいけない。

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コメント

観光客のマナーの悪さ、同感です。
大阪出身の私は、子供の頃よく奈良公園に連れて行って貰いました。
鹿せんべいをあげて鹿と遊ぶのが楽しみでした。
ビニールを敷いて座り、その上でお弁当を広げたりもできました。

後年、子供達が幼、中、高の頃、奈良を見せてあげたくて、訪れたことがありましたが、鹿せんべいをあげている人は殆ど見かけませんでした。やはり子供に持たせているようなお菓子をあげていました。また、お寺も何となく雑然とし、ゴミゴミしていたように思います。
お堂の中で平気でカメラのフラッシュをたいて撮影している人もたくさん見受けられました。

法隆寺、石舞台、橘寺等々、懐かしいはずの風景が、どことなく荒んでいるように感じられ、寂しい思いを痛感いたしました。

以前もルール違反する人はいましたが、周りの人達が注意して止めさせていたように思います。
今はみんな見て見ぬ振り。うっかり注意しようものなら、乱暴されたり、逆に"悪いやつ"とでも言うような見方をされてしまいます。

秩序、ルールを守ってこそ、いろいろなものが成り立って行くのですね。

京都と違い、素朴で雄大な奈良の良さを守り、大切な遺産を次の世代にきちんと伝えたいですね。

奈良には思い入れがあります。
伊勢神宮にご成婚の報告に来られた皇太子殿下御夫妻(現天皇陛下、皇后陛下)のお車を偶然間近でお見送りできたのも、奈良に遊びに行った帰りでした。

子供心に、あれほど光り輝く人を見たことはありませんでした。
まばゆいばかりの光を纏ったその方が、ほんの数センチの近くを、お車の中からにこやかにやさしく手を振ってくださったのです。

そのとき以来、美智子様信奉者になりました。

現在は職場の前を時々両陛下がお通りになり、あの時と同じように、寒い日も暑い日も窓を開けて
手を振って下さいます。

いずれはのどかな奈良に住みたいと思っています。
母方の祖父母も奈良の出身であり、なんとなく原点に戻りたい気分です。

談山神社、安倍文殊院、三輪神社、長谷寺、古墳等々当時は田舎に行くたび案内されていてなんとも感じていませんでしたが、歴史的にもすごいところだったのだと今更ながらに驚きと共に勿体ない思いでいっぱいです。

私も大阪出身で、子供の頃から奈良公園に遊びに行った口です。大阪人は、京都人とはいがみ合うが、奈良人とは馴染みやすい?というところがありますが、奈良公園も重要なアイテムですね。

ただ、奈良は観光客の減少に頭を抱えているのです。とくに日帰りが多く、地元にお金を落とさない。あげくにシカの糞の文句だけ残す(~_~;)。

私も、今や完全に奈良人に染まっております。奈良へ、どうぞ。

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