『離島発 生き残るための10の戦略』
NHK出版の生活人新書『離島発 生き残るための10の戦略』を読んだ。
舞台は島根県の隠岐島島前(中ノ島)の海士町。著者はこの海士町の町長・山内道雄氏である。
実は、私は置きに10回近く通っているし、海士町にも幾度となく訪れている。この島の地域づくりに関しても、多少は知っているつもりだった。しかし、ここまでドラスチックな変化が行われているとは不覚にも知らなかった。
やはり自治体合併を拒否して単独の道を選んだことが大きな分かれ目になったようだ。そういえば、合併の嵐後は、海士町を訪れていない。隠岐でも知夫里島は行っていたのだが。ちなみにその取材は、『田舎で起業!』のためであった。
この町長が取り組んだことはいろいろあって、「島をまるごとブランド化」戦略などもある。が、こうした発想そのものはたいしたことない。私でも唱えていた。問題は、実行の部分だ。
エピソードで感動的なのは、町長の給料を30%カットしたところ、課長たちが自主的に自分たちもカットを申し出たという話だ。それは広がり、とうとう一般職員や議員もカットすることになる。結果的に「日本一安い給料で、日本一働く職員」というキャッチフレーズに結実する。皮肉ぽいが、実は後半が自慢でもあるのだろう。知っている自治体で、「わが町もそうなるか」と自問して、うなづける地域はほかにあるだろうか。あれば、その町はよほど田舎です(笑)。
戦略として気に入ったのは、1年間、島に滞在して「宝探し」をする研修生を募集する制度である。その間15万円の給料を支払うというのだ。私も応募したいような話だ。結果的に、新たな商品開発に結びついたり、Iターン増につながっている。
もう一つ、中学校の修学旅行は東京で、一橋大学で隠岐について講義する(受けるのではなく、する側)というのも注目。そして国立市でホームステイ。
ホームステイなんて、異国か田舎でするものというイメージがあるが、都会でさせるのもアイデアではないか。
……とまあ、ベタ褒めするのはナンだが、この本は、何も田舎の生き残りの方法を紹介しているのではない。むしろ田舎の、とくに役人の意識改革を行う手法のヒントを与えてくれると見るべきではないか。山村や森林組合などでも応用が効くように思う。
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私もまた海士町に訪れたくなった。『田舎で起業!』の第2弾になるかな。
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