7世紀のノコギリ
奈良県明日香村の石神遺跡で、7世紀後半とみられるノコギリが出土したそうである。長さは44,5センチで、柄も刃も残っている。ほぼ完全な状態だというから珍しい。
柄はヒノキ材で、一部を握りやすく削って細くするなど加工されている。刃は、さすがに曲がって先が欠けているそうだが、刃の目は三角形。やっぱり横挽き用だろう。
これが宮殿など飛鳥時代の建築物を建てるのに使われたのかもしれないと思えば、なかなかの歴史ロマンである。
考えてみれば、ノコギリの登場は、林業の世界で一大革命であったろう。それまでは斧や鉈だった。石製から金属製に変化しても刃は1枚。それが連続した小刃へと変化したのだ。動きも斧なら樹木をたたき伐るが、ノコギリは挽いて伐るようになる。切り口が細く滑らかになる。これは、凄い発想の転換ではないか。
また横挽きから、縦挽きも登場し、伐採だけでなく板への製材にも応用が利く。
ノコギリの次の飛躍は、押し引きではなく回転運動を取り入れたことだろう。つまりチェーン化したことだ。最初は幹に巻き付けて押し引きする使い方をしたそうだが、やがてハンドル式になり、完全な回転運動を取り入れた。
さらに人力から動力利用となる。まず蒸気機関の利用から始まり、電動モーター、さらにエンジン付きノコギリ、つまりチェンソーに発展するのだ。
チェンソーの登場は、木材生産効率を10倍くらい上げたというが、それは産業発展につながったと言えるだろうし、同時に山村の雇用を少なくするきっかけになったかもしれない。一人で10人分の仕事ができるのだから。
ノコギリ産業学なんて、考えてみてもいいかもしれない。
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