諫早湾干拓地
長崎で飲んだ際、諫早湾干拓地の話題が出た。
思えば10年前の1997年4月、ギロチンのごとく湾の潮受け堤防の水門が閉め切られる映像で話題となった。「止まらない公共工事」の代名詞となり、海苔の不作、タイラギガイの全滅……と騒がれた。
実は、私も閉め切って遠くない日に現地を訪れて、干拓地を歩いた。沖に向かって行けども行けども、泥の海が続いていたが、もう足は深く潜らず乾きつつある大地だった。
今ではすっかり忘れられている? あの当時、「もし民主党が政権を取ったら、すぐに堤防を開ける」と菅直人代表(当時)は言い放った。だが、その海苔不作に関して開放実験を行うよう答申が出ても、結果的に堤防が開けられることはなかった。しかし、今や民主党の政権奪取が現実味を増してきている。近い将来、民主党政権が生まれたら、今からでも開門できるか?
絶対、無理、というのが県庁の声だった。
すでに堤防内は農地になっている。それを水没させることは不可能だ。海苔だって、今では豊作だそうだ。一時期混乱した生態系も、諫早湾がないものとして再構成され、落ち着いたのだろう。もし無理に開門したら、農地の有機物が海中に流れだし、またもや生態系破壊が行われるだろう。そして、再び元の干潟生態系にもどる保証は何もない。
最初の干拓計画が正しかったかどうかはともかく、時間が作る結果を巻き戻すことは至難の業だ。
同じことは、山でも感じる。ダムの撤去が話題になることがあるが、それは今あるダムとダム湖を含んだ生態系の破壊にほかならない。ダム湖に棲む生物の全滅と、止水域を利用した鳥獣の生活圏もあるだろう。水位の変化による地下水脈の変動、堆積物の分解、そして貯水しないことによる影響……。それを覚悟しないと、ダム撤去はやらない方がよい。(逆に言えば、覚悟した上で、ダムでも何でも撤去してほしい。)
森林も、天然林の伐採は、その後同じ植生を復活させるにはとてつもない時間が必要となるだろう。
自然保護、あるいは開発計画において、単に時間を巻き戻すことを願うよりも、新たに何が作れるのかを念頭に置いてほしい。止まらない公共工事を止める時には、その後何が起こるか考えておく必要がある。
今の干拓地の姿を見てみたいと思っていたが、残念ながら時間の関係で見逃した。次に期待しよう。
« 国産材商品の販売の裏 | トップページ | 紅葉の現場 »
「森林学・モノローグ」カテゴリの記事
- 壁面緑化は思い通りにはいかない?(2026.07.16)
- 意外と早い?森に還るまで(2026.07.13)
- 巨木だけでない多様な森(2026.07.10)
- 脱炭素に「森林」は必要か(2026.07.03)
- 『吉野山独案内』を読む…無理(2026.07.02)





























コメント