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2008/01/27

年輪にドラマを

久しぶりに土倉庄三郎関係。

昨日は庄三郎の孫のところにお邪魔した。そこでお土産に持っていったのが、吉野杉の木口の薄切りだ。先日、チェンソーアート関連で吉野に行った際に、樹齢100年を越える丸太の端を薄く(5㎝程度)切らせていただいたものである。

なぜ、こんなものを、と思われるかもしれないが、土倉庄三郎が亡くなったのは1917年。つまり昨年が没後90年だったわけだが、樹齢100年を越えていたら、少なくてもその木は庄三郎が存命時に植えられたことになる。
そこで積まれた丸太の年輪を数え、100年以上のものを選んだのである。

この木を森の名人に見立ててもらうと、近年の世話はあまりよくないが、若いころは丁寧に育林された形跡があるという。事実、若いころから年輪が詰まっている。
伐採地は、川上村でも奥地に当たる入之波の三之公付近だという。土倉家の山は、川上村でも吉野寄りの大滝周辺が多いのだが、この当たりは庄三郎が三重に抜ける東熊野街道を建設するために苦労したところ。もしかしたら土倉家の植林した可能性は捨てきれない……。
と、そんな夢を見ると、単なる丸太の輪切りも、違ったものに見えてくるのではないか。この中心部の年輪が育つ頃には、まだ庄三郎は元気で、各地の植林を指導していた。年輪に時代を重ねると、一気に単なる生長環が情感を持った歴史の証人となる。

先日の森林認証制度の講演の際にも言ったことだが、木材は情報商品だ。とくに感性情報の有る無しで価値は決まる。年輪のつくる木目に育った時代を語らせると、えも言われぬ魅力がほとばしる。

ところで、こちらのお宅では、台湾でつくられたドキュメンタリーのDVDを借りた。お孫さんの父、つまり庄三郎の次男である龍次郎は、台湾で2万町歩の植林をするとともに、台湾初の水力発電所を建設している。その軌跡を追ったものだ。
もちろん台湾目線でつくられているのだが、ざっと目を通しただけでも、結構感動した。語られている言葉も何もわからないのだが、台湾近代化の一歩を刻んだ発電所建設にかけた人々の思いと、今は廃墟となったその跡地の映像にはドラマがある。そして日本人が、そこに関わっていたことも少し嬉しくもある。

廃墟の映像も、その裏にあるドラマが美しく魅力的にする。このドキュメンタリーを、日本人向けに作り直したくなった。誰か興味のある放送人いませんか。

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コメント

 一枚の輪切りから、夢が広がりますね。
ドキュメンタリー制作、是非お願いします。
お待ちしております。

DVDは、台湾に初めて立てられた水力発電所として取り上げてますが、日本人には領有間もない台湾で森林と電力に夢を抱いた日本人の物語にしたら、結構受けるんじゃないかな、と思います。
しかも、その人物は実家の没落によって全財産を投げうつという悲劇に見舞われ、それでいて、「日本のカーネーションの父」でもあります。

 ますます興味が湧きます。
早く作ってください!!

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