国産材が供給過剰になる日
昨日逢った人との話で驚いた点。
「国産材の供給が過剰になるかもしれない」
えっ、と驚いた。いまだ国産材の供給量が足りないから、外材の牙城が切り崩せないと思っていたからだ。
しかし、資源量はたっぷりある。供給が足りないのは、価格が折り合わないからだ。今の価格では、まだ多くの林業地では伐出コストで赤字になってしまう。再造林もできない。しかし、ジリジリと価格は上がっている。それが一定の水準に達した時に、山主は一斉に木を伐りだすだろう。それがどっと木材市場に流れ込んだら、価格はまた暴落する……。
さて、この推測はいかがだろうか。言われてみれば、多くの山主は基本的に木を伐りたがっている。ようは満足いく価格になるかどうか、である。また、その分岐点となる価格は幾らだろうか。
もちろん、供給過剰になって価格が落ちれば、また伐採が止まるという市場メカニズムがうまく働けばよいのだが、おそらくタイムラグはかなり出るだろう。その時に木を伐ったが儲からなかったので再造林は中止とか、山主や素材生産業者が倒産……という可能性もあり得る。また、いったん供給シフトを引いた工場では、価格がいくらであろうと工場を動かすために伐り続けなくてはならないかもしれない。結果的に山は荒れる。
何より、山主は、本気で持続的な経営を考えているのか。
一方で、その際に外材はどんな動きに出るかも予測しにくい。
日本全体の森林資源量を見極めながら、持続的に、安定して、伐出させるシステムは作れないものか。ただし、間違ってもお上の指導、なんて形はダメだよ。そんな指導力はないだろうが、強制すること自体が市場を混乱させる。
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コメント
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木曽の国有林では、五ヵ年計画の初年度と言う事もあるのか?(CO2の関係の補助金が出ている?)人工林の伐採量が大幅に増加していて、(伐採業者が足らないので年度内に予定量伐れないかも?)今までの貯木場には入りきれないので依託材として民間市場にも出品され、価格も低空飛行です。
需要も建築資材として無垢材のまま使われなくなってますので安ければいい。
積層合板やエンジニアリングウッドとして使われてます。(ムク材に比べ圧縮強度、引張強度ははるかにすぐれ、性能のばらつきも少ない。特に強度が必要とされる部分には、強く、くるいの少ない。木を超えた木として評価されている先進の木材です。???)
素材を扱っている業者として、戦後一番の低価格になってます。
投稿: 木曽のカモシカ | 2008/01/19 04:23
実は今だって供給過剰です。
何をもって供給過剰かを判断するかの問題。
需要より供給が単に多いだけ。
つまり、20%と低迷していると言われてても、国産材の実需要(勿論潜在的な需要ではない。)に対して、供給が多い。
需要サイドの経験が長かった私から見て、使いたいと思わせるほどの品質や発注先その他の情報が無い商材です。最初から勝負に負けているだけ。
林業関係者に聞けば、必ず零細だとか、良いものだから使わない方がおかしいとか、自分に都合の良い理由を挙げて、情報発信や自助努力をしない。
そんな中でも一部の人は頑張って情報を発信している。そんな人達に対して、前者はブランドがあるから。だからすぐブランドを作りたいという方向に進む。
ブランドを作ること、そしてそれを維持することが如何に大変かは、昨今の偽装によって一夜にして価値を失墜していった多くの(かつての)一流企業を見れば明らか。
安心して下さい。お上が主導しても売れるようにはなりません。地道で継続的な情報発信と、それらを共有することで自らも変わる勇気がなければ。もう世代交代が始まっている。今まで有名で無かったところが頑張っているという成功体験が最大の薬です。
この業界でも101匹目の猿を作らないと。
投稿: セロ弾きオーボワ | 2008/01/19 09:27
たしかに、需要と供給のミスマッチは起きていますね。それも品質的な問題で。
そろそろ木材業界も、木材というのは量で勝負する商品ではなく、品質(間違っても太さや年輪幅や節の数きいった「品質」ではない。製材寸法や含水率や強度、ヤング率などの表示といった「品質」である)と付加する情報量で売行きが決まるということに気づいてもらわねば。
国産材がすでに供給過剰というのも、求められる木材ニーズを考えずに伐りだしているからか?
投稿: 田中淳夫 | 2008/01/19 23:54