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森と林業と田舎の本

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2008/02/01

田舎は「儲からない」

前から感じていたことだが…そのうちじっくり考えようと思っていたのだが…
研修旅行に行って、もっとも大きな収穫は、その考えに確信を持ったことかもしれない。そして、昨日はまた取材に行って同じことを考えた。それは、

田舎は、儲からない

ということだ。これまで『田舎で起業!』なんぞという本を書いて、田舎こそ起業のチャンスがいっぱいある、と煽ってきたのに、と怒られる方もいるかもしれないが、これは確実なのである。

田舎には、起業のチャンスはいっぱいある。有利な点もいっぱいある。それは今も信じている。だが、田舎の仕事の特徴は、大きな利益を得られないことではないか。だから新規参入も少ないのかもしれない。
もちろん例外はあるが、田舎の資源は分散的で、とくに自然など田舎の特徴を活かしたビジネスを立ち上げても大きくなりにくい。成功はするが、莫大な利益は生み出さない。

たとえば豊かな自然を利用してエコツアー的なものを実施しても、儲けるために多人数を募集すると、エコではなくなる。結果的に客に逃げられる。木材が馬鹿高く売れる商品を作っても、大量生産してしまうと価値がなくなり売れないし、生産も持続的でなくなる。それを無視して拡大展開すると、田舎ではないビジネスとなるだろう。

田舎を舞台にすることは、やり甲斐もあるだろう。自然相手は楽しいかもしれない。地域づくりに結びつけば万々歳。しかし、儲からないとしたら、やはり参入できない人も少なくないはず。

では、どうするべきか。一つの考え方としては、大きく儲けなくてもよい、と割り切る。自分が生きるだけの利益で満足する。そんなライフスタイル、ポリシーを持って取り組む。これは立派だ。でも、すべての人に押しつけられない。とくに若い人には…。でっかくなれない宿命を持った職業を若くして選択すること自体、人間が小さくなりそうだ。

そこでもう一つの手だてを。それは百姓だ。ただし、今でいう農業者としての百姓ではない。100の姓(かばね)というのは、多くの仕事を持つことだ。もともと田舎の百姓は、一人でいくつもの仕事をしてきたのだ。何も農業だけ、それも決まった作物だけを栽培していたわけではない。そんなモノカルチャーな農業は、一時の利益を得ても、長続きせずリスキーだ。多品種少量生産こそが、本来の百姓の仕事である。
これを現代流に、多様性ビジネスとでも名付けられないだろうか。スモールビジネスを多く手がけて、全体として多くの利益を生み出す。しかも、一つ一つの仕事はみんなつながっていて、同時展開する。一つの労力で3つの仕事をこなす。そんな考え方で取り組めないだろうか。いろいろ関連し合って展開するのだから、生態系ビジネスなんて名前も使えるかもしれないな。

そのうちに、このベクトルで論考をまとめてみたい。

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コメント

静岡県の個人茶農家は、お茶の収穫時期は茶の収穫(摘採)と加工(お茶揉)を1日の間に続けます。1人2交代、3交代制などと称し、24時間ぶっ続けで仕事をする人がいます。休みは雨降りになります。
サラリーマンも共同製茶工場で、夜勤をする人がいます。これも、自分の本来の仕事とあわせると、1人2交代になります。
農業系との多角経営というか複合経営は大賛成です。自営業ですから、自分でアレンジできますし。新しい個人的な取り組みには、地域として取り組む地域農業とかそんなのが、逆に障壁になるかもしれません。これまで、これで食ってきたという親父たちの変なプライドも障壁になるかもしれません。
でも、日雇いで土建屋で働くよりはいいと思うのですが・・・。
若い世代にはインターネットビジネスとの複合経営がいいのかも。ただし、商品開発とか、デザインとか、ネットビジネスで確実に代金を回収できるように(消費者にだまされないように)していくこととかが、田舎者は苦手な分野です。
販売分野が得意な人がユーターンなり、アイターンしてくれるか、行政や商工会、農協などがしどうするか。行政や商工会、農協はそういう指導が苦手ですから、また外部委託なんてことになってきて、地域にノウハウが蓄積しなかったり、せっかくのアイデアが他に流れたり、自分で考えていくことをしなくなったりすることになる。
どうやら、自分でやるしかない。地元の高校を卒業した人たちは、地元から出て行った友人たちの伝手を使って、ノウハウを自分で蓄積するのだ。(文体が似てきてしまってすいません)

そーですね。
田舎で一人勝ちは難しいでしょうね。
百姓と言う発想はそのとおりだと思います。
一人で幾つもの仕事をするのは楽しいです。
その代わり大きな利益は得られないでしょう。
それで良いと思います。
もし、百姓ができるならの話です。
それは、かなり高度な次元ではないですか?
個人の努力次第ですね。

当たり前のことですが、多様性のあるビジネスは、その組み合わせが難しいのでした。
単にいろいろな仕事をするだけでは、負担が増えるだけ。3倍仕事して、3倍の収入が得られても、それが都会の普通の仕事と同じレベルでは疲れてしまう。
むしろ仕事量は増やさずに、3つの仕事をこなして収入源を3つにする…これが理想。
それだけ仕事のネタを考えるのが難しいんだなあ。

そうなんでしょうね。消防団の活動とか、自治会の役員とか、役仕事とか、山水道の管理とか、お葬式の手伝いとか、仕事以外の生活必需労働が沢山あります。でも、それを楽しんでいる人もいるのですねー。
個人大工との兼業とか、個人土建との兼業とか、農業の多角化とか、森林組合労務との兼業とか、議員との兼業とか・・・。
日給月給はあまり単価が高くないみたいですね。
最近は、自治体の直販所とか農協の直販所が大流行。地域内に出店するか、近隣地方都市へ出店するか。

お金になるかならないかはともかく、すでに田舎の人は多様な仕事をしていますね。
都会では役所がやる仕事まで、地域でやっている。
それだけでなく、たとえば自分が栽培した作物は5種類でも、売り方を考えて5種類の販売ルートを作ると、それは5×5の25種類の仕事と見ることもできますね。
さらに春夏秋冬で仕事内容を変えることも自然相手の仕事の場合は可能です。アウトドア観光なら、ハイキングにパラグライダーにラフティングにスノーボード…と仕事の多様性を作る。

「ゼネラリスト田舎人」だ!

はじめまして。
薪ストーブユーザーに薪を売ったりするのはいいですよ。
割と暇な冬に作業できるし、シイタケのホダ木にならない部分だけを薪にできます。
見えない収入も多いです。
本来、出費となるところを自給できたら収入と同じですから。

薪は、結構よい商品ですね。専業では無理でも、小金稼ぎにはなる。
意外と、田舎は新規ビジネスのシーズがたくさん落ちている。大きく儲けられなくても、確実に売れるものはあります。
そして、そんなスモールビジネスをいくつか兼ねてやれば、田舎で生活する程度の収入は得られるはず。

それと収入は、見かけの金額ではなく、可処分所得で見るべきですね。

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