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本の紹介

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2008/03/07

書評「近世吉野林業史」

「近世吉野林業史」(谷彌兵衛著・思文閣出版)を読んだ。

吉野林業の誕生と発展の過程を検証した力作だが、読んだら、おそらく世間が持っている吉野林業の常識を、次々と覆すだろう。

たとえば大山林主が生れたのは最近のことで、出発点は小農だった。1反1畝の面積で山林を所有していた。しかも短伐期。20年程度で伐採していた。現在の大山林主で長伐期・銘木生産の林業地……というイメージとは違う。

ほかにもいろいろあるが、私が感想を一言でまとめれば、「吉野林業を常にリードしてきたのは需要サイド」ということだ。言い換えると、需要が吉野林業を作ってきた。

吉野に植林が進んだのも、木を商品化したのも、みんな消費する側が主導してきた。そして江戸時代初期から川を浚渫し、岩を穿って、筏を流せるように苦労してきた。今でも大変な奥山と感じさせる源流部も、実は300年以上前から筏を流せるように川を改造してきたのだ。

これまで多くの人は、漠然と「森づくり」があって、その森で育った木をいかに伐るか、それを運び出すにはどうするか、そして出した木をどうして売るか……という視点で林業を見てきたのではなかろうか。
しかし本当は、木がほしい町の人々がいて、どこに木があるか、その山の木を伐るか、その木をどうして町まで運ぶか。さらに山に木がなくなると、そこで山に木を植えて育てる、奥山から木を出すために道を作る、あるいは川を利用する・利用できるようにする……という順序で発展したのだった。

考えてみれば当たり前なのだが、意外と学者、そして経済関係者や行政関係者、政治家までもが、そのことを忘れていることが多い。だから林業政策も、所有者サイド・供給サイドからばかり考える。環境を守るための森林政策とか、今ある木をいかに伐るか売るか、という地域振興的考えで政策を作る。
そろそろ、これが間違っていることを自覚すべきだ

いっそ人類は(とりわけ日本人は)、本当に木材が必要なのかどうか、というところから考え直してみてはどうだろう。案外、木材がなくてもかまわないという結論が出たりして。

……そんなことを考えさせる1冊である。ちょっと高いけど、そしてちょっと難しいけど、真面目に林業のことを考えている人にはお勧め。(サイドバーにも載せました。)

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書評・反響」カテゴリの記事

コメント

田中さま
私もそう思います。

機会があれば、読んでみたい本ですね・

「山は苦しいんだ」と叫んでも、共感してくれる人はいても、だからと言って、言い値で買う人はいないのです。

手前味噌で申し訳ないのですが、先日、ある間伐材利用のコンテストに応募し優秀賞をいただきました。作品は、漁船を守る木製防風柵です。作品のコンセプトは、「海を守れ!が山を救う」でした。

間伐材こそ、使う側の目線にたったものでなけばならないと使われないんだと言う想いを訴えたつもりです。

海杉さんの木材需要を作り出す努力は、頭が下がります。
でも、本当に頭を下げるべきなのは私よりも山元なんだよ(笑)。

近世吉野林業史、早速取り寄せて読んでます。田中さんに言われて、林業関係者の考え方の流れが、消費サイドにいる私とは逆であることを理解しました。流通改革に取り組んで、いろいろと話をしているときに感じていた違和感が理解できました。考えてみれば当たり前ですね。
でも林業サイドにいても中には逆の発想をしている人もいますね。
先日岐阜県立森林文化アカデミー学長の熊崎先生の講演を聞きました。ご専門の海外との林産業の発展過程の比較をベースに、日本林業の方向性を提示されていました。
これに対して産業としての森林木材流通業の工学的分析の当然の帰結として、外挿的な方向性と先生の提示が似通っているのに意を強くしました。
その後先生とお話しをすることができ、細部に渡って示唆を受けました(^^

書評ですが、内容は田中さんの言われる通りなので省略しますが、30年近く研究者をしてきて論文の書き方にはそれなりの自負を持っていました。しかし、あらためて先達の論文執筆に関する真摯な態度、および他者の学説に対する問いかけの仕方など別の面でも刺激的な本です。

あの高い本を買いましたか(^^;)。

まず売る相手と量を見つけて、それに合わせて伐出を考え、売上とコストを計算して、合うように効率化する…当たり前の順序が、林業界にはまだ根付いていないと思っていましたが、実は昔はしっかりあったんですね。少なくても吉野では。

では、いつからおかしくなったか。おそらく戦後でしょう。経済とビジネスのイロハを失ったのは。壊したのは、補助金ばらまいた国です。

もう既に中古が出てます。
ネットで発注して次の日には手元に届きました。
ここまでは無理(というか、しなくてもいい?)としても、林業でもこんな考え方が出来る人が何人か出てくれば・・・
時間があって、ネタ探しや、暇つぶしにしか本屋には行かなくなった。ピンポイントでタイトルや著者が分かれば届けてくれるというビジネスモデル。便利!!!
それに過去の発注履歴から類推して、類似の新刊書はメールで知らせてくれます。勿論田中さんのもお知らせありましたよ。

先日の熊崎さんの講演会、続いてPDがあり、林業経営者も登壇。でも意見の端々に補助金ありきの匂いがプンプン。本人も気が付いていないと思うけど、そこまで洗脳されているのです。

他産業では補助金が入ることは事業が失敗することと同意。

しかし吉野は凄い。大昔にも補助金断ってましたね。本に出てた(^^

もう古本ですか。ちょっと著者には辛いかも…。

そうです、吉野はかつて国の金が入ることを拒否していたのです。天領だったにも関わらず、幕府の支援はほとんどなかったことが、自前の産業を育てました。
ただ「大昔にも」ではなく、「大昔は」なのですが…。今は完全に依存しきっています。

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