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2008/03/17

限界集落」という言葉

今や、すっかり有名になった「限界集落」という言葉。

この言葉は、現・長野大学の大野教授が高知県の大豊町を調査した際に、地元の人が「もう限界だ」と何度も口にしたことから生れた言葉らしい。
もっとも、その大豊町の人々は、自分たちが住んでいるところが限界集落なら、我々は限界人か、と反発していた(^^;)。

実際、田舎に住む人には、限界集落という言葉を嫌う人は多い。ある種の差別語になっている。京都府綾部市では「水源の里」と呼んで、支援する条例を作った。
もちろん、限界と言われて喜ぶ人は少ないだろうから、その気持ちはわかる。外部の人が勝手に定義づけないでくれ、と思うのは当然だ。

ただ、そうした山間部に住む人が言っていたのだが、
「限界集落って、もう維持が限界で、消滅する手前という意味でしょ。もう維持できないとはっきりしたところが限界集落なのに、そこに税金つぎ込んでどうするのよ。必要なのは、限界になる手前で、少し手助けすれば、まだ救われるかもしれない集落。准限界集落こそが問題ではないのか」

たしかに言葉の意味を考えれば、限界集落の問題というのは、少しおかしい。限界まで行ったら、むしろ軟着陸を狙って穏やかに消滅への道を歩ませるのも選択肢の一つだ。

その代わり、まだ限界に達していず、しかしきわめて厳しい状況にある集落に力を注ぐ方が理に適っている。

さらに消滅集落の地権者や境界線の問題も重大だ。人はいないのに土地の権利などが分散してしまうと、今後重大な禍根に発展する可能性がある。

准限界集落と消滅集落に目を向けた施策が焦眉の急だろう。

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地域・田舎暮らし」カテゴリの記事

コメント

先生は確か、20年前くらいからそのお話をされていますが、
「限界集落」だけを取り上げているのではなくて、
過疎という一言では解決できない問題を解き進めるために定義をし直した中での
「限界集落」だと思っているのですが、

存続集落→準限界集落→限界集落→(超限界集落)→消滅集落

の推移のなかから、限界集落の部分だけを切り取り、話題にしたりマスコミが取り上げるのは
何か違うような気もします。

行政的な観点から見てみれば、当然、限界集落にお金をつぎ込むのは非効率ですから、
自治体は何とか一歩手前で再生に向かわせようとしているはず。
でも、限界集落も、そこには「半数は65歳以上」であっても暮らしている人々がいるわけだから、
もう手遅れだから力を入れませんというような行政はできないでしょう。

マスコミが「限界集落」を比較的取り上げるのは、この言葉のインパクトに引かれる部分が多分にあるでしょうね。

地方自治体としては、限界集落だからと言って放ってはおけないという気持ちが強いのですが、現在の地方財政破綻の危機の前には、手の打ちようがないのが現実です。
国家百年の大計がほしいのですが…。

田中先生は問題提起のプロでいらっしゃいますが、
たとえば限界集落について誰にどのような変化を与えたいと考えていらっしゃるのでしょうか。

出版して読者一般にでしょうか、世論にして政治家とか官僚に対してでしょうか。

問題提起のすぐ後がたとえばセミナーとすれば、主たる受講者の絞込みを意識されているのでしょうか。

いろいろな角度からの分析の後にどのような方向に誘導しょうとされているのか、全著書を拝読するのが第一歩なのでしょうか。

ご指導、どうかよろしくお願いいたします。


ご無沙汰しております。

 最近は「限界集落」ではなく
 「小規模・高齢化集落」と表現するようになったようです。(国では)

 やはり、「限界集落」と呼ばれることへの
 地元感情を考えてのことだそうです。

 私の様な田舎者にとっては
 「限界集落」だろうが
 「小規模・高齢化」だろうが
 関係ないんですけどね!

 また、たとえ税金の無駄使いであったとしても

 1人でも住んでいる限り
 当然、行政サービスは続けるべきだと考えます。

 町の過疎対策として
 集落の集団移転(町の中心部や町外)を
 経験しているものとしては・・・。

 複雑です。
 

国は呼び名を変えようとしているんですか。それにしても「小規模・高齢化」集落とは…なんにもわかっていない(苦笑)。

そこに住む人がいるかぎり、行政サービスは必要でしょう。ただ、それで当面「支える」ことはできても、再び賑やかな集落に発展させるのとは違いますね。
集団移転も、やはり厳しいでしょうね。具体的にどんな問題が発生していますか?

私は自分で問題提起しても、どこかに方向性を誘導するつもりはありませんよ。むしろ、当事者(住民のほか、政治家、行政関係者)を含む多くの方々が考える一助になればと思っているだけです。
このプログでは、私自身の思考実験も兼ねています。自身が考え、方向を模索しているのです。

明快なご回答、ありがとうございます。

なるほど、確かに私自身考えるヒントになっています。

いつか方向が決まることを楽しみに考え続けます。

子供の姿を見かけなくなった村。
同い年の子供がいない。
一緒に遊ぶ友達がいない子供。

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