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森と林業の本

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2008/04/26

若者たちの2地域居住

国土交通省が言い出した、2地域居住。対象にリタイヤ組を思い描きつつ、都会と田舎の両方に家を持って通いながら住もう、という発想である。ようするに両地域のいいとこ取りをして、豊かな老後を、というわけだ。

私は、常々この構想を批判してきた。田舎暮らしの過度的な形態に過ぎず、決してよい結果を生まないと考えるからだ。実行者にとっても、腰掛けで住まれる田舎にとっても。

しかし、このところの取材で別の意見が生れてきた。そして昨日の新潟・上越で見聞してきたことで、確証的なものを得た。「若者たちの」というただし書き付きで2地域居住を肯定的に見られるかもしれない。

上越で訪ねたのは、NPOの「かみえちご山里ファン倶楽部」。ここには8人の若者がいた。ほぼ全員がヨソモノだ。年齢的には20代から30代前半。女性も多く、しかも高学歴。大学院卒や海外留学組が目立つ。あるいは社会人転進組もいる。設立して7年、入れ代わりはあるが、構成員の条件はほとんど変わらない。

仕事は、一言で言えば、山里の活性化だ。そのための事業を数多く、それこそ網の目のように広げていて、みんな自分の事業を展開している。農業をやり、廃れた行事を復活させ、隠れた伝統と技術の記録と継承に取り組み…環境教育もあれば土木事業や収益事業も企てる。

極めて優秀な人材の宝庫である。話をしていて秘かに舌を巻くことが幾度もあった。
彼らは古民家に住み、肉体労働多く、田舎のじっちゃんばっちゃんとつきあう。特化せず様々な生きるための技術を身につけ磨く。
正直言って給料は極めて安いのに、どうして縁もゆかりもないこの土地に集まり田舎暮らしを行うのか。結婚している人も少なくない。女性は配偶者のところに行くのではなく、この地に根付かせる例もある。さらに彼らだけでなく、無給の学生インターンも招く。毎年、多くの学生が山里に住み込みながら働き学ぶ。
ここだけでなく各地に同じような例を見た。若者が山里を、離島を、田舎をめざす現象が確実に起きているのだ。隠岐の海士町に若者が集まっていることは、以前にも書いた。

ただ彼らは、その田舎に骨を埋める覚悟をしているわけではない。若い一時期、距離やしがらみ、そして世間の壁を乗り越えて、そこで自らのエネルギーとアイデアを絞り出し、その後は風の吹くまま……。

こうした2地域居住、いや2地域生活圏と言った方が正しいと思うが、都会の目を残しつつ田舎に若いエネルギーを発散する存在は、田舎にとっても益となるのではないか。地域は若者を教育する。若者は地域の壁を乗り越える。崩壊寸前だったコミュニティを再び紡ぎ、旧来の行政単位を越えたクニを築く。クニは国ではなく、新しいコミュニティの単位。霞が関が100年かかってもできないことを彼らは実現しているように思う。

もし私が、彼らの年にこうした現場と知り合えたら……私には飛び込む勇気があったかどうか。なかっただろうな(^^;)。

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