「未来への卵~新しいクニのかたち~」かみえちご山里ファン倶楽部の軌跡
今手元にある本である。
出版元は、「かみえちご地域資源機構株式会社」
ほとんど自費出版である。(3000円+税+送料)
この本の書評を書こうかと思った。だが、まだ読み切っていない(^^;)。それでも書きたいと思ったのは、読む過程で多くのことを考えさせられたからだ。そこで、この本から連想して思い至ったことを書く。だから序説としておく。読み終えた時点で、、ちゃんとこの本の紹介をしようと思う。
とはいえ、まずこの本の成り立ちは説明しておこう。
新潟県上越市にあるNPO法人かみえちご山里ファン倶楽部の6年間の活動を記録したものだ。私も、倶楽部設立初期に取材に訪れている。そして先月、久しぶりにまた訪れた。それだけに、私自身も彼らの足跡を追う気持ちにさせられた。
ある地域(山里)の活性化を外部の人間が企て、いかに取り組み、いかに悩み、何を達成したか、が記されている。取材時にも驚いたのだが、ここに参加した9人の若者のほとんどは、この地域と縁がない。そして大学・大学院卒、海外留学経験、専門職勤務……といった、一見華々しい?学歴・経歴を持っている人も多い。それが、なぜ、このNPOに飛び込んだのか、そして悪戦苦闘してきたのか、結構赤裸々に描かれている。
倶楽部が抱えていた経営的な苦しさや、地元の人々との意識の齟齬も描かれている。それでも愚直に活動を続けた。そして生み出したもの、得たものがある。帯文にある「拒否・受容・批判・包容・協力・叱責・挫折・希望」そのままだ。
おそらく、この過程を最後まで行かないまま、留まっている組織も多いのではないか。批判でくじけることもあるし、挫折のまま終われば、最後の希望にたどり着けない。
ちょっと聖書の言葉を思い出した。「ローマ人への手紙」の一節である。
「艱難は忍耐を生み出し、忍耐は練達を生み出し、練達は希望を生み出す。そして希望は失望に終わることはない」
ところで、この過程は外部的な要因……事業自体がどのように発展するか、地域の人々に受け入れられるか、組織の財政を経済的に成り立たせられるか……であるが、それに加えて組織の内部(メンバー間)変化も重要だ。
地域づくりに取り組む、そして組織を立ち上げて運営する。それがいかに大変なことか、それが伝わる組織の変遷を描いた言葉がある。
目標を掲げた組織を立ち上げる。1年目はみんな熱心に取り組む。
2年目も頑張り、事業もそれなりに順調に進む。ただ内部に意識や技術の差が生れる。
3年目に入ると、揉め事が起きる。グループ内で派閥?意見の相違が出てきて、主導権争いになることもある。
4年目。仲間割れが起きる。
5年目。少しずつ落ち着き、6年、7年目で、ようやく形が定まってくる。
8年目でお互いの状況を冷静に見ることができるようになり、10年を過ぎる頃から「大人のつきあい」の見極めができる……。
以上は、山村クラフト運動に尽力しているアトリエときデザイン研究所の時松辰夫氏の言葉に私なりのアレンジを加えたものである。
おそらく山里ファン倶楽部もいろいろ葛藤はあったのではないかと想像する。
これまで地域づくりの事例は、たいてい成功例であり、その成功の軌跡ばかりを追っていた。しかし必要なのは(知りたいのは)、失敗例であり、つまずき・あがき・危機の心理ではなかろうか。
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