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2008/05/09

書評「ローカル線ガールズ」

昨日、Amazonで届いた本は、

清原なつの「家族八景」(上)(下)
嶋田郁美「ローカル線ガールズ」

清原なつのは30年来のファン。もっとも男のファンの多い少女漫画家として知られるが、これは筒井康隆原作である。こちらも語りたいところだが、今回は「ローカル線ガールズ」だ。昨日は娘の学校に病院見舞いにと忙しかったはずだが、一気に読んでしまった。いかに仕事をしなかったかわかる。

でも、感動した。最後は目がうるうるした(笑)。

この本は、福井・えちぜん鉄道のアテンダントの物語である。アテンダントとは、1~2両の車両に乗って切符販売や観光案内をする女性乗務員。この鉄道会社の独特のシステムだ。彼女らの話ではあるが、同時に地域づくりの教本にもなるだろうし、「もてなし」の本質を考えることもできる。そして…萌えることもできる(笑)。

この鉄道の前身は、京福電鉄。しかし2000年から01年にかけて半年に2度も大事故を起こし、営業停止になった。そのため京福は路線を廃業にする。しかし市民の声に押されて03年に第3セクターとして復活させた。

……これだけなら、極めて危険なパターンだ。民間が失敗した事業を行政が引き継いで多額の税金を投入、しかしますます赤字は膨れ上がり……という負のスパイラルが頭に浮かぶ。

新生えちぜん鉄道が行ったのは、料金値下げとアテンダントの採用だ。アテンダントは無人駅対策でもあったようだが、当然人件費がかかる。いよいよ危険なパターン。

が、乗客の伸びは驚異的だ。03年下半期で138万人が、翌年242万人、次が279,5万人。292万人。そして昨年は300万人を越えた。沿線にニュータウンができたわけでも、強力な集客施設が生れたわけでもない。しかし、今や鉄道を使わなかった沿線住民も使い、全国からファンが押しかける。鉄オタだけではない。いや、鉄オタも多いだろうけど(~_~;)。

その秘密は、この本を読んでいただくとして、稀に見る地域づくりの成功例かと思った。

話は変わるが、私はイマドキの「もてなし」ブームにうさん臭さを感じていた。よりよいもてなしをしようとすれば、対価がかかる。さもなければ、ボランティアになり、しわ寄せは労働者に行く。結局、お金持ちだけが享受できるサービスになりかねない。

しかし、この本に登場するアテンダントの「もてなし」は、そのどちらでもない。自ら仕事を作って乗客に満足してもらう精神が満ちている。ありとあらゆる質問に応え、乗降のお手伝いをし、観光案内、店紹介まで行う。なぜ、それが可能なのか。

それを私は、「ソーシャルキャピタル」ではないか、と感じた。これは直訳すれば「社会的資本」だが、むしろ「表に見えない組織の底力」「横につながる規範意識」と訳した方がよいと思う。ハードではなくソフトだ。「一体感」と一言で言ってもいいか…。
これがあるとないとで地域の活力が全然違う。マイナスからスタートした鉄道会社が、いかにして巨大なソーシャルキャピタルを築いたのかは、この本にも登場しないが、きっとキーパースンがいるのだろう。アテンダントも、その中に生れた。

彼女らは、最初は派遣社員だった。下手すると使い捨てだったかもしれない。しかし、どこかで変わった。「顧客満足度」を高めることで、「労働満足度」という対価を得たのではないか。自らの存在意義を示すために。これこそが「もてなし」の新たな切り口になるかもしれないなあ。

ところで、この本は、半分は写真集でもある。アテンダントの写真を眺めていると、本当に萌えるよ(^o^)。
この冬、実はえちぜん鉄道に乗って勝山の恐竜博物館に行くことを考えた。結局、車で送ってくれることになったので乗ることはなかったのだけど、この本を読んでいたら無理しても乗ったかもなあ。生アテンダントが見たい(笑)。

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コメント

>リアル鉄道むすめ
 そういえば、こんなものあります~
「鉄道むすめ」
 もしかしたら近い将来このラインナップに
えちぜん鉄道も入るかも・・・ですね。

(たま駅長の和歌山電鉄は駅長込みで商品化
されています~)

 もてなしがテーマならいい漫画あります。
「コンシェルジュ」
原作:いしぜきひでゆき、画:藤栄道彦

参考までに・・・どうぞ


5月11日(日)10:05~10:50(45分)NHK総合いよっ日本一「ローカル線 日本一!」
で、えちぜん鉄道が紹介されるようです。

NHKも注目したか。録画しておこう。
ちなみに今日の朝日新聞の夕刊(関西版?)でも、えちぜん鉄道を取り上げていました。

「もてなし」をビジネスとして捉えると、興味なかったのが、地域づくりと結びつくと別の世界が見えてくる気がする。

ところでAmazonの
この本の書評が面白い。書評というよりファンクラブの会報みたい。しかも、著者の嶋田さんの同期まで登場している(笑)。

 えちぜん鉄道のアテンダントがテレビ番組「ローカル線 日本一!」で取り上げられているのを見ました。
飛行機はもちろん、JR東日本の近郊電車のグリーン車にもアテンダントがいますので、
「ソーシャルキャピタル」とまでいわなくても、接客サービスアップという点で有効な手かも知れません。
 それでもやっぱりローカル鉄道が中長期的に存続していくには、
大阪で働いている人が奈良に住んで電車で通勤しているように、
勝山から福井へ電車で通勤するという流れを増やしていくことが必要だと思います。
通勤・通学なら1年で200日以上の利用が見込めます(ファンでもマイカー通勤だとこれだけ利用するのは難しい)。

実は、私は列車にアテンダントが必要かどうか疑問です(^^;)。いや、飛行機にだって本当に必要かどうか。安全要員としてはわかるんだけど、通常はほとんど接待ですからね。

でも、えち鉄の場合は、無人駅の多さとか、バリアフリーになっていない施設などを改修するより、アテンダントという人間力にかけて、見事成功させたのだと理解しています。すでに鉄道経営の枠を越えた地域再生につながってきたのでしょう。
ハードに金をかけるより、人というソフトの方が安くついて効果は桁違い。何より満足度という大きなボーナスまで得られたのですから。

最近思うことです。効率化とか人件費削減とかで機械を導入する。機械は文句もいわなくて、壊れない限り仕事をする。今まで、その地域の人たちに支払われていた人件費(配分)が他へ取られていることが代償で。小さい地域では、人件費をかけることも必要なことでは?特に、若い女性の職場として・・・。この記事を読んでそう思いました。

機械化による効率アップは、実は一つの仕事に限られるのです。それが機械の特性ですから。人間は、一つ一つの仕事では機械に負けるけど、総合力では機械に勝てる可能性が高い。

ようは、現場の何を求めているのかが問われます。一つの仕事だけを効率化させたいのなら機械化は賛成だけど、あれもこれもと考えているなら人の方がよいのではないか。
まさに雇用を生み出す効果だって、地域には重要ですからね。

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