書評「未来への卵」・クニの形編
だんだん連載になってきた(^o^)。
今回は、本文ではなく最後についている「論考」と「補稿」について。実は、ここだけで3分の1はある。ちょっと長すぎ? しかし、かみえちご山里ファン倶楽部の具体的歩みではなく、理論面の解説として貴重だ。
まず日本型のNPOとして、使命より共同体に帰属意識を持つという点を指摘して、コミュニティ全体を対象とする地域型NPOという分類を提起している。面のNPOとも呼んでいるが、地域の活動ならなんでも扱う主体である。
その上で、NPOが新たなクニを作る可能性に言及している。
かみえちごNPOの活動フィールドとなる桑取谷には、17の集落がある。ところが、時代とともに関係が薄れてきて、かつてはお互いのお祭りや行事にあった行き来も途絶えていた。
それを復活させつつあるのだ。集落と集落を結び、情報を橋渡しして、再び交流を行わせしめる触媒としてのNPO。本来なら小さな自治体「村」が担ってきたことかもしれないが、今ではNPO以外に可能な組織は少なくなった。
そこで提唱するのが、集落と集落を結ぶ役割を担うNPOの存在だ。そして、この新たな枠組を「クニ」と表現している。国家の国ではなく、地方自治体でもなく、共同体としてのクニ。新しいクニづくりをめざしているのだ。
私も、戦後の日本の政治が行ってきたことは、一貫して共同体の破壊だったと感じている。その総仕上げが、市町村合併だ。どんどん行政単位を大きくすることで、国家構造を単純化する。それまで重層構造だった日本の社会をすっきりさせてしまう。
理想形は、国-自治体-個人 という簡略構造だろう。それこそが統治しやすいからだ。自治体も合併で巨大化すれば、集落単位の面倒は見ない。かといって、集落同士の結びつきも推進しない。それは行政単位の否定だからだ。
しかし、現実には行政の力も衰えてしまった。そこで、自立を叫びだした。個々人が自立して、自己責任で生きるべきだ。……なんとなくいい言葉だ。カッコいい。実態は体のいい切り捨てなのだが。結果的に格差社会を到来させてしまった。これこそ共同体の破壊の最たるものものである。
そこに分化させられた集落を結ぶ仕組みとして、NPOが広がりつつある。地域NPOであり、NPOの行政化、行政のNPO化である。
この先は、また読んで考える。
« 書評「未来への卵」・人材編 | トップページ | 書評「未来への卵」 終 »
「書評・番組評・反響」カテゴリの記事
- イオンモールの喜久屋書店(2025.02.20)
- 『日本の森林』に書かれていること(2025.02.19)
- 盗伐問題の記事に思う(2025.02.03)
- 『看取られる神社』考(2025.02.02)
- 『敵』と『モリのいる場所』から描く晩年(2025.01.25)
コメント