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森と林業の本

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2008/06/18

バイオ燃料のネック

いまさらだが、バイオ燃料の花盛り。とくに穀物からのエタノールが食料危機を招いたと騒がれたために、次に目をつけられたのが木質系のバイオエネルギー。

ただ、私がバイオエネルギーに冷たいのは、著書を読んだらわかる(笑)。前世紀の頃は、木質発電とか熱電併給とかカーボン・ニュートラルなどを紹介して、新しい森林利用のあり方を提案したこともあるが、『だれが日本の「森」を殺すのか』当たりから否定的になり、今やかなり冷たい(笑) もう少し正確に言うと、熱利用には賛成だが、発電は単体では微妙、そして最近注目株のバイオエタノールなどは??? になっている。

その理由は、まず、技術がまだ伴っていないこと。実は木質のセルロース、ヘミセルロースを糖類に分解するのは理論的には簡単だが、現場では難しい。しかも分解してできた糖類をエタノール醗酵させるのはもっと難しい。通常の酵母菌ではうまくいかないのだ。だから遺伝子組換酵母なども使われる。現時点では、全部の木質をエタノール醗酵させていない。だから効率も悪い。

次に、工程が増えることのコストアップの足かせ。今稼働しているのは、ほとんど補助金絡みだ。

そして、重大な問題は、原材料不足。まともに稼働させたら、どれほどの木質材料がいるか。通常は木屑を使うが、製材が少なければあまり出ないし、廃材集めも限界がある。かといって未利用間伐材を森から持ってくるなんて、コスト面から夢のまた夢。

しかも、各所から木屑の奪い合いが始まっている。バイオ燃料だけでなく、発電にも使われるし、製紙チップも不足気味だし、敷き藁代わりの需要が生れたり……と未利用のはずの廃棄物が引っ張りだこだ。

実は以前紹介したドイツの大規模バイオディーゼル製造工場も、原料難だそうだ。ヨーロッパ中から持って来ないと足りない。木質だけでなく、牧草まで使うらしい。
大規模施設でないと効率が悪いが、大規模になるほど原料が足りなくなる。もともと木屑などは広く薄く存在するものだから。日本だと、さらに厳しいだろう。

付け足しに記すと、ちなみに現在の日本の未利用木質資源は、約500万トン。仮に未利用木質資源を全部投入して、バイオエタノールを生産しても、その量は120万キロリットル程度しか生産できない。これは日本の原油消費量の2日分だそうだ。
とても、化石燃料の依存から離れられない。

だから必要ない、ということではないが、過分な期待をせず、むしろ地方分散型のエネルギー源として活用した方がよくはないか。たとえばリグニン利用と組み合わせる。セルロース分解の糖分を食品工業にも活かす。その上で熱利用や燃料利用も考える。
少なくても中央集中型のプラントで生産するより、少量で効率が悪くても小さな拠点で生産して、地元で消費するようなビジネスモデルを考えた方がよいように感じる。

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コメント

熱源利用で行くなら、集中大規模(高効率)と、その隙間を埋める小規模分散(低効率)のハイブリッドが最も合理的です。
実はこの前提で回収物流システムを設計してましたし、季節変動の大きなバイオマス資源に対応できる移動式小規模分散システムも試作してました。
設計論的かつ実証実験ではうまく行きます。

それ以上に問題なのは、田中さんご指摘の変換技術。セルロースが難しいと言われるなら、リグニンの利用なんてまだまだ先の話です。これらの技術はもう確立されているように言われていますが実はまだまだの技術です。そこに最大のコストのボトルネックがあると思います。地道な研究開発は行われています。ただそれを行っている人達は進捗状況の正しい公表をしない。そこで情報の独り歩きが始まってしまい、一部の人達に夢を与え、その後の落胆を招いている。

現時点では単純に熱利用が最も効果的ですね。

リグニンの利用はたしかに難しいですね。今度、専門家に合うので聞いてみよう。

でも、ブラックリキュールとして、すでに熱源(ようするに燃やすだけ)にはなっていますね。

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