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2008/07/17

間伐とCO2吸収

「海上の森大学」の講演で、少し森林のCO2吸収の話をした。
会場には林野庁の人も、県の農林関係者、森林組合関係者もいたので、意外と林業分野のことも話すことを期待されたようだ。

もちろん、私が話す限りは「森林は二酸化炭素を吸収もしないし、酸素の排出もしない」という世間の期待を裏切るものだ(笑)。ただし、木を伐って、それを木材として使うことで街に炭素貯蔵の「森」をつくる……という考え方を紹介した。
それについて、終わってからも反響があったこともあり、少し深く考えてみた。

林学を少しかじったことがある人なら、「一定の林地の森林蓄積量は、木の本数に関わらず変わらない」という法則を教わっているはずだ。つまり、たくさん木があると、それらの木は細くなる、本数を減らすと太くなる、というわけだ。
これを元に、間伐すると木を太くできることを知る。林業的には一般に太い木ほど価値があるとされるから、間伐の必要性を示せる。

これをイマドキの森林のCO2吸収論に応用すると、間伐したって、森林の炭素固定量は変わらないということになるんでないの?

それどころか、現実の森林を考えると、間伐して残った木が太る量は、完璧に(間伐で)減った分を穴埋めするとは考えられない。おそらく理論上の最大蓄積量には届かない。
つまり、間伐したら、森林の炭素固定量は減る可能性が高い。この点は、実は森林総合研究所が出した研究にもある。

国は、日本のCO2排出量の3,8%分までを「1990年以降に整備された森林」がCO2を吸収することを認められたとして、整備する(間伐する)ことに躍起になっている。しかし、これは単に国際政治上の取決めにすぎない。本当は、間伐すればするほど、CO2を排出していることになる

もちろん、間伐に重機を使えば、そこで消費する化石燃料のエネルギー分も排出に回るし、切り捨て間伐なら、切り捨てられた木が腐るなり燃やされることで、さらに排出される。

唯一、間伐した木を木材として利用し、人間社会に腐らないよう(建築物や家具の形で)保管された場合だけが期待できる。まあ、これだって数十年~200年程度で廃棄され燃やされるか腐らせると、またCO2排出になるんだけど、タイムラグを作るという効果はある。それに古い建物を破棄すると同時に新たな建物を(木材で)建築すると考えれば、カーボン・ニュートラルだ(笑)。

ともあれ、政治的な思惑によって作られた施策と、科学的な真実は違うのである。

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政策・行政関係」カテゴリの記事

コメント

ちょっと脱線なのですが・・・

8/4に今の職場が主催してシンポジウムが開かれます.あがたしはそのお手伝いに行くのですが,最後の順番の講演者はおそらく今回の話題に若干関係したことをしゃべられるはずです.

「地球環境研究の最前線~全球観測と予測モデルが切り拓く科学~」(2008.8.4. 東京・渋谷 国連大学)
http://www.jamstec.go.jp/frcgc/sympo/2008/index.html

ところで,炭素蓄積量を計測・推定・計算etcを行うとき,それが
・地上部の話なのか
・地下部(根系)も含むのか
・落葉・落枝(「リター」というと専門家っぽい)も含むのか
・土壌中炭素蓄積量まで含むのか
ということは常に意識されるはずです.とくに土壌が入ってくると一気に時定数が伸びまして,一筋縄ではいかなくなってきます(数年~数十年といった短期には,森林外部からの影響をうけて吸収トレンド・放出トレンドを呈することがありうる).

じつは、「一定の林地の森林蓄積量は、木の本数に関わらず変わらない」の内容があがたしには正確には理解できていませんでした.この場合”森林蓄積量”には地上部・地下部・リター・土壌中炭素のうちどれが含まれているのでしょうか.そしてその含意するタイムスケールはどの程度まで短いものまでカバーしているのでしょうか.

あらあら、専門家で出てきてしまったわ(笑)。
生兵法は怪我の元かも……。

ちなみに、木の本数と森林蓄積量の関係については、昔のノートを引っくり返さないといけないかもしれませんが、林学的にはほぼ材積のみ(地上部)でしょう。地下部まで計算に入れるとは思えません。
タイムスケールもどれくらいかな。樹木の一生を基本としていると思いますよ。地球的規模で見れば、200年住宅ができても、一瞬かもしれませんが。

なおリターや土壌まで含むと、短期的には、温暖化?のせいで、リターや腐葉土の分解が活発になるとすると、CO2は樹木が吸収する以上に発生する可能性が高いでしょう。つまり森林はCO2の発生源になっていると言える。

京都議定書の第一約束期(2020年)までは、立木を伐った瞬間からCo2排出になり、家や建材や家具への固定は認められないとの国際政治上の決まりになっています。(^^
そして3.8だか3.9だかの固定量は管理が行き届いた森林に限って認めましょう。そして森林所有者に関係なく、国のものになっています。
というのは知っていますよね。
ところが、間伐すると固定量は減ってしまうという研究論文(田中さんご指摘)があり、管理を行き届かせる(つまり間伐など)と固定量が減るという矛盾がありますよね。

あるCO2固定の認証機関では、根も地上部と同じだけあるって公式に言ってますし・・

「アフリカ開発会議」の排出CO2を神奈川の森で吸収(カーボンオフセット)する。それも平均するとヘクタール当たり146トン!!(林政ニュースNo.341)
高知県は県が独自に認定して、企業の排出とオフセットしてるし・・・

もうやった物勝ちの様相ですなあ(爆)

そうそう!言い忘れました。

3.8%というのは、京都議定書の基準年の1990年から第一約束期間の2020年までに、管理された日本の森林の増加量が最低でもその位はあると認めても良いということなのでしょうかね?
意外と誰も明確に教えてくれないのです。

さっきの神奈川の146トン/haで、日本の人工林の固定許容量1300万トンを割ると約90000haで、人工林の1%程度にしか過ぎない。
ちょっと分らんです(^^;

あがたしです。

「京都議定書目標達成計画」
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/5937/6699/2278.pdf
(PDF)のp.50(PDFファイル内におけるページ。以下同じ)あたりに3.9%のもつ重みが書いてありまして、

>森林吸収量については森林・林業基本計画に基づく推計で
>あり、今後、算定方法等について精査、検討が必要である。

と、この数値が「森林・林業基本計画」(田中さんやセロ弾きオーボワさんのほうが詳しそうですね)に基づく推計であることが述べられたのちに、

>また、現状程度の水準で森林整備、木材供給、利用等が
>推移した場合について推計すると、確保できる吸収量は
>基準年総排出量比3.9%を大幅に下回ると見込まれる。

という表現がなされていますね。ひとつの「計画」のもとでの推定値である、と。

「森林・林業基本計画」は
http://www.rinya.maff.go.jp/seisaku/kihonkeikaku/kihonkeikakuzenbun.pdf
にありますが、まだざっと見くらいしかしていません。どんなことが書いてあったんでしょう(PDFファイルの27ページあたりに一般論が書いてあるのですが数字が見当たらない)。おそらく、この計画から炭素収支を算定するような研究が環境研か農環研・あるいは大学などで行われたのだと思うのですが、いますぐにはわかりません。当時の事情を知る専門家求むといったところです。

あがたしさん、

調べました(^^

先ず対象林は1990年以降に新規植林、再植林、そして森林経営された森林(自然林も含まれる)の3種類です。日本では新規植林と再植林は農地などからの転用を対象としているので該当しません。したがって、3っつ目の森林経営された森林の、1990年以降の増加量ということになります。
では森林経営とは何かというと、90年の前まではやっていなかった(放棄林?)が、間伐や枝打ち、下草刈りを新たに行った森林だそうで、2006年度までに1260万haだそうです。
このエリアの材積がどの程度増加したかを計算すると、1190万t-C(二酸化炭素ではなく炭素!)。3.8%は1300万t-Cだそうだからまだ110万t-C足りないと慌てているのが現状だそうです。これを埋め合わせるため、いろいろな追加措置(平たく言えばお金)を講じてるが、自然林ではもうこれ以上新たに増加させることが難しいので、個人所有の放棄林(ちなみに55万haずつ2012年まで毎年追加しなければならないそうです)をそうさせたい。が、個人の放棄林だから間伐等に全額補助は出来ない。間伐材の売却で損が出たら2/3を国が補填する。でもやっぱり損は損。だから低コスト云々の木材流通に話が行ってしまうのが良く分かりました。
1190万t-Cの算出方法もすごいけど、それが妥当かどうかの審査は今年の9月から来年の4月にかけて国連が行う。ダメ出しされたらどうするのでしょう?
ちなみに小生の上のコメント、1300万tは炭素で、146tは二酸化炭素。とんだ勘違い!失礼しました。

 こういう話題になると、ついつい盛り上がってしまいます。興味深く拝見しています。仕事で、しばしば間伐をしなければ!と講義を受けます。このしばしばが常々になり、県の職員ばかりでなく、国の方々が直接講義をしたり、面談があったり、3.8%達成のための面積をこなすために、活動をされています。間伐面積です。間伐の材積のカウントはどうなのでしょうか。面積(本数)で20%、30%などと考えるときもあれば、在籍で考えるときもあります。細かいことはどうでもよくなってしまいます。
 間伐はやればいいというわけではないです。山の状態を見たり、以前の状態と記憶を元に比較してみたり・・・。今の間伐促進は、未間伐の山林をということだとは思うのですが。
 二酸化炭素とか地球温暖化とかを言わなくても、山の手入れをしなくてはならないと思いますし・・・。
でも、二酸化炭素吸収源としての役割が、未整備森林に国民の目を向けさせたことは、プラスに考えるようにしていますが。とりとめもなくなりまして、すいません。

だんだん、専門的になってきましたね(^^;)。

そういえば数年前まで「現状の森林整備状況では、せいぜい2,9%まで」と言われたのが、最近では「3%程度」と言う表現を見かけます。これは単に繰り上げたのか、それとも、ここ数年の努力で0,1%嵩上げできたのか。

それにしても、林業家にとっては「間伐こそ腕の見せ所」といいます。どんな森はどの程度の間伐を施すか、そしてどの木を切るか残すか。伐った木は搬出するか。それを樹木の生長とどんな木をどれほど収穫するかの経営判断を交えて行うのが林業家なのです。
それが、国際会議の決めた根拠の怪しい数字に振り回されて、とにかく面積ばかりしゃにむにやるとはなあ……。

>自然林ではもうこれ以上新たに増加させることが難しいので

実はここが専門的にはあれこれありまして・・・2020年までといった短期間の区切りでは,ヒトが何もしていないのに増えたり減ったりはあり得るのです.それは,土壌中炭素まで含めて計測した場合に現れる結果でもあります.

CO2上昇→光合成活発→炭素蓄積増える
気温上昇→生育期間延長→炭素蓄積増える
気温上昇→微生物活動活発→炭素蓄積減る

8/4の講演会では,一瞬だけですがこういう話(と,最近までの研究成果をまとめたもの)が出てくるはずなので,もし聴衆に環境省などで炭素蓄積対策を行う人がいたら食いついてくるだろうなあ,と思う今日このごろです.

===
ところで森林のような長い目で見なければならない生態系に対しては,10年以上のロングレンジで計測を続ける必要があり(個々の研究者の科研費で単発に行う測定だけでなく),そういった長期生態系測定・研究のことをLTER(long-term ecological research)といいます.このLTERを行っている観測点の情報をさらにまとめようという動きは世界的な取り組み(ILTER : International LTER)で,日本でのLTERまとめはJaLTERというところでやっています.
http://jern.info/jalter/ja/index.html
http://www.ilternet.edu/

こういった観測点がいまは世界中にありますが,たとえば炭素収支に限るとまともな計測データを長期得られるところは数百カ所といったところでしょうか(ちょっと当てずっぽう.8/4の講演でもうすこし詳しく出るかも).で,その成果がじわじわと広められつつある状況です.

問題はそこに人工林がどれくらい入っているかですが・・・あまり多いわけではない(もちろん皆無ではありません).研究上の要請により「自然な」森で何が起こっているかが関心を持たれていた時代につくられた研究地ですので.

でも環境研・農環研・森林総研,大学演習林サイトなどで,人工林における物質循環の解明も息長く研究は続けられてはいることはご存じの通りです.

===締めとして

>それにしても、林業家にとっては「間伐こそ腕の見せ所」といいます。

は全くの同感です.林業家ならば山と林を「読め」なければならない.読んだうえで未来をデザインする創造的な仕事です(ちょっとかっこよく宣伝風に言ってみた).それで炭素収支がどうなるかはむしろその仕事の結果であり,そしてニンゲンの努力の範疇でどうにもならない炭素収支の変動というものがあります.

が,ある種の世界では成果を数値であらわすことが求められる.それもわかりやすい成果を.そういうこと自体が悪いのではないけれど,それがもたらす影響が,なかには業界の実情や真に求められている社会的な貢献とは離れていってしまうことがあるのも事実です.

上記の書込は、あがたしですね。

炭素の収支などは、難しい問題です。ただ林業関係者は、これを利用して、間伐を推進したり仕事を増やす、補助金を増やす……という別の目的を持って動いているところに違和感があるのかな。

ちょいと人のブログで失礼します。

あがたしさま

一番目のコメントは、いかにもあがたしさまらしいコメントです。その節はお世話になりましたm(__)m
このようなところでお目にかかれるとは思いませんでした。海の方面でお元気にされておられますでしょうか?

私のブログ:http://blogs.yahoo.co.jp/eng_cam_fld_tgs
(あがたしさま。ひっそりとコメント頂ければ。本人バレを臭わす記述は無しにてお願いします)

=======
「間伐」で吸収に乗っかっている感は強いですね。
現時点での土壌中炭素収支を扱った報告書などから値を抜き出してみました。
http://blogs.yahoo.co.jp/eng_cam_fld_tgs/34063472.html
(土壌・材積をわけないと、ですね)

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