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森と林業の本

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2008/07/15

反・新生産システム

「森林組合員の林業経営意識と組合経営の課題と展望」という難しいタイトルの論文をいただいた。「農林金融」の7月号である。執筆者は、 秋山孝臣氏。

主に森林組合のよび組合員へのアンケートを元に現状を浮き彫りにしたものだが、それがなかなか興味深い。とても全体を紹介できないが、日本林業が極めて厳しい状況にあることを示している。「荒廃林が全人工林面積の3割から4割」にのぼっているというのだ。そして、山を守ることに疲れ果てた声も聞こえる。

それとは別に、ちょっと面白いのは、いかにも特定の誰かを指したような指摘が散見されることだ。

「特に昨今,一部の極端な低コスト林業推進論者の間に,森林組合は国産材を低コストで,より大量・継続的に伐採・搬出する役割を担っていたにもかかわらず,その使命を果たしていなのではないか,という論調がみられる。
また,森林組合は伐採等の販売系の事業が非効率なのであるから森林管理に特化すべきであり,販売系の事業は他の事業体が担ってゆくべきである,といった極端な論調も一部にみられる。結論から言えば,これらの議論は国内林業の実態を見誤った近視眼的かつ偏った主張である

「わが国林業の地形的条件不利による高コスト体質,大量で均質な木材の伐採・搬出が困難であることを,すべて森林組合や森林所有者の怠慢と考えるのも明らかに現実を知らない誤った議論である」

低コストでの国産材の大量伐採の必要性を一方的に説き,あるいは森林組合は管理系の事業のみに特化すべきであるといった主張のような,山元への無理解な負担を強いる一部の偏った論調

う~む。誰だろう。私ではないよな……(笑)。

多少、脱線するが、上記の「偏った論調」を支えているのは、林野庁の進める新生産システムだろう。私は、この政策に疑問を持っていた。これは、表面的には林業を活性化するだろうが、根っこの部分で地域林業を破壊するではないか、と危惧するからだ。めざすのは、いわば林業界の中央集権化ではなかろうか。もっと言えば帝国主義的(^^;)。体力のない林業地は、木材系大企業の草刈り場・植民地にされるだけに終わる。
そして、肝心の大企業も、長く持つまい。製材所は、大きく画一的になると、利益が小さくなる。スケールメリットが通じない世界だからだ。

新生産システムに加えて、最近では都道府県レベルでも同じことを真似ようという動きがあるが、さらに危険を感じる。素材を集めるのも、それを加工するのも、そして売るのも、量が増えたら小回りが利かず身動きできなくなる。そして破綻する。誰かストップをかけないか。

今後の私のスタンスは、反・新生産システムにしよう。新月伐採の次のターゲットだ(笑)。

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コメント

>荒廃林が全人工林面積の3割から4割
「森林組合員の林業経営意識と組合経営の課題と展望」ですね。早速読んでみます。

先日著名な先生とお話させていただきました。新生産システムに関して下記を指摘されていました。(個人的な見解ですよ)
・全体的に見てうまくいっていない。
・B、C材に関しては元気だが、肝心のA材の価格形成メカニズムが機能していない。(理由としては、価格設定が市売り市場の価格を元にされているため。)
・規模の拡大で成功しているのは、原木市場や製品市場から離れられた地域。

田中さんの指摘されている方向に進んでいるようですね。
僕も林業系の3学界に入っていますが、流通生産を研究されている人がいないのが不思議です。価格形成も、他産業であればまず素材原料がベースになります。つまり、育林するのにこれだけの原価がかかった。それに再造林のための必要経費等を加えてまず立木単価を決まる。既存流通を通した末端価格が外国産材に対して競争力がないなら、競争できるように流通を見直すのが普通だと思いますが、違うようですね。
でも市場から離れて成功したというのは、流通を見直したのですね。その時の立木単価はどう決めたのでしょう?

これまで新生産システムの評価をどうするか迷いがありましたが、そろそろ旗色鮮明にしました。

私は学者ではないので、客観的なデータを持っているわけではないですが、現場を歩き、直感的に考察した結果です。

BC材を扱う新流通システムが比較的うまくいったのは、これまで国産材に合板市場はなかったからでしょう。そこに白紙から新規参入できた。しかしA材を扱う新生産システムは、既存の製材市場とぶつかる。
結果的に共倒れの可能性もあるのではないかな。

昔から「腫れ物と製材所は大きくなったら潰れる」というそうですよ(笑)。

「森林組合員の林業経営意識と組合経営の課題と展望」読みました。
データの取り方や分析に突っ込みたいところが多々ありますが、研究論文ではないので止めときます。
一番気になるのは、田中さんも指摘?しているように、森林組合に難癖付けるのは内情を知らない奴。
林業再生には森林組合しかない!と結論付けてはいないけど、そう感じさせる書き方。
施業や集約化、団地化は森林組合しかできないのですか?法律的にそんな規定があるのでしょうか?
森林組合に要求されている機能は必要ですが、出来ない、していない組合があるのも確か。
だったらそれを他の組織が代行するのが良いと思う。
現実に、関東で有名な林業地の森林組合が昨年の補助事業も未だにやっていないため、出来立てのNPOに県が補助事業を依頼してきました。

早い! もう手に入れましたか。
たしかに森林組合への肩入れは感じますが、どちらかというと「現場を知らずに理想を語る奴」に反感持っているのかも(笑)。


森林組合の問題よりも、林業家の意識が沈滞しているのが気になりますね。

初めまして、過去の投稿に失礼します

製材所は、大きく画一的になると、利益が小さくなる。スケールメリットが通じない世界

と本文で仰られていますが、これはどういったことなんでしょうか?大きくしても供給側に制限があるということでしょうか?

こんな昔の記事、もう忘れましたね(笑)。

木材は大きくて重くてかさばる。しかも生物生産物。1本1本違うんですよ。生える場所の気候・地形・地質、日当たりなと全部。それを切り出す手間も全部違う。たくさん切り出しそうとしたら、手間もコストも膨れ上がる。だからたくさん注文したら、値が上がる商品なんですよ。
これは日本の林業の特性ですけどね。

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