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2008/07/08

林業の逆襲

昨日に続いて「逆襲」シリーズというわけではないが…。

近頃、マスコミに日本林業に復活の気配が出てきたことを紹介する記事が目立ってきたように思う。まあ、内容は私が以前から主張してきたこととたいして変わらない(笑)のだが、やはり影響力が違う。これまで新聞によく登場していたが、今目立つのは

毎日新聞社の「週刊エコノミスト」7月15日号に、梶山恵司氏が、

日本の林業は「成長ビジネス」になる 

という記事を書いている。ドイツやオーストリアの林業と比べ、それを見習うべきと主張。ようは森林施業プランナーの育成と機械化林業である。森林組合の質も問うている。

そして「日経ビジネスオンライン」には、

“終わった業界”が地球温暖化を救う 国内林業に復活の兆し(上)

“トヨタの森”を増やせ 国内林業に復活の兆し(中)

日本一の森林はこう作る~尾鷲の山を歩く 国内林業に復活の兆し(下)

という3本連載。こちらは、今なら読めるはず。登場するのは大手合板・製材メーカーと、日吉町森林組合と、速水林業。
どちらの記事も共通するのは、今後の林業は素材生産も製品生産も大規模化・機械化を進めて低コストで行うことで、利益を生むようになるというもの。

ちなみに梶山氏は、富士通総研気鋭の研究員。林野庁関係に気に入られたらしく、各地のシンポジウムやセミナーを飛び回っている。
私も会ったことはあるが、ドイツやスウェーデンなどヨーロッパの林業事情に詳しく、そのデータから日本林業のダメな点を鋭く(鋭すぎる?)指摘する。非常に明快で理詰めなのだが、実は「そんなの机上の空論だ」という林業関係者は多い(笑)。私は、彼の理論に賛同するところも多く文句をつける気はないが、なんとなく林業や山村に対する“愛”がないなあ、と感じる。

それぞれの提案する方向性は、林業再生の処方箋としては王道で、まったくそのとおりなんだけど、このベクトルに置ける施策では、おそらく日本の林業、いや山村の大半は、おいてけぼりだろう。どうにも機械化も集約化もできない地域は、今後どうなるのか。下手すると、林業栄えて山村滅ぶ、という可能性も拭えない。

実は、上記の記事にも登場する速水林業の速水亨氏は、日本でもっとも理論的な森林経営を行い、林業のオピニオンリーダーとも言える存在だが、その速水氏が現状に非常な危機感を持っている。世間が「林業が復活し始めた」と言えば言うほど、彼の言説が暗くなってきたのは意味深だ。

私も、こういうときは逆張りする(笑)。世間が「もう大丈夫だ」と言い出したら、「いやいや、極めて危険」といいたくなる。

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林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

■地球温暖化詐欺(1)-co2説はプロパガンダか?
こんにちは。洞爺湖サミットも開催され、世の中環境問題の話題であふれています。しかし、この話題の中で確実に多くの人に認識されていないことがあります。それは、地球温暖化=co2は、一学説に過ぎないのであり、誰もそれを正しいと証明した人はいません。ただし、間違いであるのとの反証はいくつかあがっています。これに関して、最近「地球温暖化詐欺」という動画がYouTubeに掲載されています。私のブログにも掲載しました。多くの人がco2説に惑わされています。私自身は、低炭素社会をつくるため、co2の排出をなべく減らそうということには賛成で意義のあることだとは、思っていますが、co2 が地球温暖化の原因になっているという説、それから、地球が温暖化に向かっているという説には反対です。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

 何か時間の感覚のような気がするのですが・・・。石炭や石油だってものすごい長い年月の蓄積なんでしょうし、林業も50年とか100年とか200年とかの時間の流れの中での作業なのだから・・・。それが、石炭の利用、石油の利用、そしてバイオの時代と、急速な変化が来ています(この前の山村セミナーの三重大の教授の受け売りですが)。私は、データや科学的根拠を持っていませんが、70歳になってこのような林業の状況の中で山林の管理を自分の考えの下で淡々と行っている父の姿を見ていると、世界の激流がナンセンスに見えたり、父の姿がナンセンスに見えたり、自分は何をすればいいのかと思いをはせたり、しています。
 林業の復活の兆しとかの論調も、短いスパンでの意見なのかも知れないです。山を管理する側からすれば、現金収入を目論んで瞬時に判断するとき以外にはとうとうとした流れの中に身をおいて自分で作業をしていくしかないということだと思います。(かなり抽象的ですいません)

思わず、林業や山村に対する“愛”を持ち出してしまったが、もっとも守るべきは、山で生きる人々の生活にあるはずです。
それを忘れて活性化させようとしても、仏作って魂入れず、にならなければいいんですが。


なお、この項目に林業と関係ない地球温暖化のことなど書き込まないでください。

富士通総研の梶山さんに対する感想。

私も全く同感です。

とは言え、私はいつも梶山さんにお世話になっているクチなので、偉そうなことは言えませんし、田中さんが指摘されたとおり、彼の理論に賛同するところも多く文句をつける気は毛頭ありません。

でも、林業や山村に対する“愛”は無い(少ない)と思っています。
もう少し正確に言えば、“森林・林業に関わる人達に対して”でしょうか。

自分の主張を成就させてくれるのは森林組合を置いて他にないと言う反面、森林組合には危機感が無くどうしようもない存在という評価を下すあたり、ちょっと矛盾しているし言い過ぎでは?と思ってしまうこともしばしば。

まぁ、期待の大きさ故の厳しい評価なのでしょうから、少なくとも私は彼ら(森林組合)のことを褒めて少しでも彼らが前向きになるようにサポートできたらと思います。

梶山さんとかかわっている林業関係者は多そうですね(笑)。

私は最近、森林も林業もたいした問題ではなく、重要なのは、山村社会ではないか、と思い出しています。
森林を守るために林業や山村の住民がいる、というような本末転倒の議論にならないように…。

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