明治神宮の森の未来
明治神宮の森について少し調べている。
ご存じの方も多いだろうが、明治神宮は明治天皇を忍んで建設されたが、その森づくりの指揮を取ったのが、本多静六林学博士。当時、ススキ原やアカマツ林だった代々木の土地にどんな森を作るか考えて、目標としたのが、仁徳天皇陵だったという。
天皇陵の墳墓は、人が入れないから原生状態となっている。それを再現しようと考えたのだ。彼は、100年かけて極相の森になるように設計して、当初はマツ林と落葉樹林、次にスギやヒノキの針葉樹林、そして最後に常緑広葉樹、つまり照葉樹林の森になるように植栽した。
着工が1915年(竣工は1921年)だから、もうすぐ100年になろうとしている。そして、見事に照葉樹の森が明治神宮を覆っている。植生遷移を計算した見事な森づくりだった。
その目的は、やはり自律的に生育するから維持管理費がいらないことだそうだ。そして土地か照葉樹林に向いていると判断したのである。
ところで、現在の生態学では、極相という考え方が否定されつつある。
極相とされる植生も、それで安定するのではなく、再び破壊されることで、遷移のサイクルを回すと考えられているのだ。自然界では、森林火災や洪水、山崩れ、気候変動、病害虫、そして局所的には寿命の来た大木の倒壊も含む。数百年単位なら、十分起こることだとされる。
では、明治神宮の森は、100年以降、どんな方向に向かうのだろうか。雷でも落ちて焼けるか、致命的な樹木の病気が蔓延するか。それとも温暖化の影響で亜熱帯植物が繁茂するのだろうか。
そして、その時に人間は、手を出すのだろうか。火事が起きたら消すだろうし、何らかの理由で木々が枯れたら捕植するかもしれない。でも、それでは本多博士の狙いとは違うような気がする。
ところで、明治天皇に森があるなら、昭和天皇も崩御後に記念公園が作られたはず……と思い出して調べると、「国営昭和記念公園」が東京立川にあった。が、ホームページによると、完全なファミリー公園のよう。バーベキューハウスまである……。ここに荘厳な森を望むべきもないが、神社林ではないのだから仕方ないか。
でも、維持管理に手間がかかるだろうし、どんな森を作ろうと考えたのか、哲学がないよな。100年後のことを考える気にもならない。
« マイ割り箸増加中? | トップページ | 書籍は著者のもの »
「森林学・モノローグ」カテゴリの記事
- 仁徳天皇陵墳丘の植生(2025.03.09)
- 街路樹の寄せ植え(2025.02.27)
- 自然尊厳法人~自然に法的な人格を(2025.03.03)
- 再造林すればいい、のか(2025.02.24)
- 橿原神宮外苑の森(2025.02.23)
コメント