マイクロクレジットと消費者金融
海上の森を訪れた際に、なんでか国際連合の人と知り合った。
そこで話題になったのが、バングラディッシュのマイクロクレジット。農村の人の起業に少額貸し付けるNGOの銀行が始めた制度である。このおかけで、貧困から抜け出る人が続々と出ている。
グラミン銀行は、ノーベル平和賞を受賞して有名になった。
だが、もっとも規模も大きく、重要な役割を果たしているのは、ブラック(Brac)銀行だ。
いずれも担保がとれない貧しい人が対象である。彼らに事業計画を立てさせ、場合によっては修正させたり足りない部分を支援したり、商売のそのものを教育したうえで、貸し付ける。担保がない代わりに5人組で連帯保証をさせる。そして、利子は結構高いという。
それでも返済額は99,5%と驚異的に高く、貧困層の底上げに役立っているのだ。政府の助成や、各国の経済援助が軒並み機能せず、腐敗の温床になったりする中、確実に人々を生活向上に貢献している。
思わず感じたのは、担保なしの高利子による貸し付けとは、日本ならば消費者金融と同じだということ。いわゆるサラ金。まさにサラ金が貧困を救っている構図だ。
もちろん、両者には大きな違いがある。NGO銀行では事業計画の徹底した審査と教育を行うことだ。理由も聞かずに(事業ではなく、生活費やギャンブル費用でも構わないというのが実態だろう)貸し付け、いかに取り立てるか指を鳴らしている日本のサラ金とわけが違う。そうした教育指導のコストもかかるから利率が高いのだ。
ただ連帯保証させることは、事業に失敗したら周辺の人に迷惑をかけることになるから、下手すると同じ村に住めなくなる。それだけに真剣に事業に取り組む。
ODAも、みんな紐付きにして、取り立てるようにしたら、効果的ではないか?
日本の助成制度も、そうしたらどうか。失敗したら取り立て、成功したら返還しなくてもよい、というのもいいな。いやいや、そもそも行政的な助成制度ではなく、地域づくり専門貸付の消費者金融を誕生させるというのはどうだ。
ハコモノ行政や思いつき研修などを排し、地域で本当に事業を成功させるための個人起業家に援助する。もちろん、地域に関わる事業であることが条件だ。地元の産物を利用する、地元に雇用を生み出す、など見込めれば貸し出すのだ。もちろんビジネス研修付き。結果的に地域づくりにつながるはずだ。ある意味、ベンチャーキャピタルである。
以前、テレビで流行らない料理店を番組内で店主を鍛え上げて立て直させる企画があったが、そんな金融会社があってもいい。
なお、マイクロクレジットは、本当の最貧者は相手にしない。事業能力のない人を助けるのは、また別の役割だ。底辺層のやる気と能力のある人をすくい上げ、その起業成功者が最底辺者を雇用などすることで彼らを救うことに期待しているそうだ。
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先日というかもっと前ですが、NHKで『沸騰都市シリーズ』というのをやっていて、気がついた時は殆ど見逃していて残念に思っていました。唯一ちゃんと見れたのが、「バングラディッシュ」で、このBRAC銀行のことが取り上げられていました。感銘?したのが、これを利用して頑張っている人たちと言うのが殆ど女性たちであったことでした。やっぱり女性はたくましいんだ~。と言うことで、私もがんばらなくては、と思いつつ
…。
投稿: みゅー | 2008/07/16 09:04
私も、そのテレビ番組見ましたよ。
バングラは、いくら援助をつぎ込んでも経済的に浮上しないブラックホールのような国(^^;)と言われていましたが、NGOのブラック銀行は確実に国を変えていきそうです。
女性もたくましい。みゅーさんも頑張って(^o^)。
投稿: 田中淳夫 | 2008/07/16 10:19
お邪魔します。
バングラディッシュの場合はお金という「経済の血
液」の"血の巡り"が悪かったのではないでしょうか。
だから"酸素"や"栄養分"を供給しても行き渡らな
かったわけで。マイクロクレジットという仕組み
で"血の巡り"を良くしたからうまくいくようになった
のでしょう。
>消費者金融
その前にブラックは「事業投資」ですから「事業収
益を分け合う」事で「Win-Win」の関係が築けます。
消費者金融は「消費のための借金」ですから結果的に
は「借りた側が利子分余計に払う(=資金調達コス
ト)」になって「Win-Win」どころか「より貧しくな
る」という「下降スパイラル」に陥るのではないで
しょうか。
>ODAも、みんな紐付きにして、取り立てるようにしたら、効果的ではないか?
かつてホ○イ○バ○ドといった「借金の棒引き要求
運動」がありました(その前に日本外務省はそれを決
めていたようですが)。ODAは結局"政治"になるの
ではないでしょうか。
>地域づくり専門貸付の消費者金融
石原都知事は「貸し渋り、貸し剥がしに苦しむ中小
企業の救済」のために新銀行東京を作りましたが、結
果は民間の金融機関に良いところを取られて良くない
ところを押し付けられたばかりか都議の口利きが横行
して都民の税金で尻拭いする破目になりました。
日本や先進国の場合は"血の巡りが良すぎる"事が問
題なのではないでしょうか。だから集まるところには
集まってそうでないところには全く行き渡らなく
なったのでは。サブプライムに殺到して大損を出した
かと思えば今度は原油や穀物に殺到して石油無くして
商売の出来ない人達から石油を、貧しい人達から食料
を奪っていますし。
投稿: ブロガー(志望) | 2008/07/18 06:41
マイクロクレジットと消費者金融の違いはわかっていますよ。単に小口で高利な貸付という共通点を取り上げただけで。
新銀行東京は、あきらかに食い物にされたわけですが、基本的に事業能力がない相手に貸し付けています。そうした場合は、ブラック銀行並に人を見極めることと、事業ノウハウの教育指導、そして連帯保証なりの徹底的な取立が原則になります。それ抜きに貸し付けたら、消費者金融にも笑われる。
投稿: 田中淳夫 | 2008/07/18 09:51