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2008/07/18

森の物質は循環しているか

海上の森大学で、隣に座ってお話しした「本物の大学の先生」は、森林の物質循環が専門だった。思わず、森林の物質から見た将来について言葉を交わした。

小難しいが、こちらの問題も取り上げてみよう。

実は私も大学の研究室の指導教官は、森林立地学といって、まさに物質循環を扱っていた。おかげでリター(落葉・落枝など)を集めたり、その重量や成分を調べたりしたものだが、それが嫌いで私は一人勝手に森林動物学に手を出したのである。だから、はっきり言って教授には嫌われたが……。

それはともかく、森林の物質循環という点で最大の疑問は、「人工林の山は痩せるか」という命題である。

人工林である限り、最終的に木は収穫される。つまり森林外へ持ち出される。その点は、先の炭素固定と同じ土俵だ。持ち出すから、炭素を長く固定される……ことになるかどうかが議論になるわけだが、森林側から見れば、森林内の資源(養分)を奪われたことになる。

もちろん炭素の場合は、CO2という形で空気中から補給できるので問題はない。しかし、植物の栄養素となるリン、窒素、カリウム、カルシウム……などはどうだろう。これらは林業が幾度も収穫を繰り返すたびに山から失われることになる。ただ窒素は、やはり空気中から得られる。カリウムなどは、土壌に大量にある。最大のネックは、リンだそうだ。

吉野のような古い林業地になると、植え付けと収穫を何度も繰り返している。そのたびに間伐・主伐ともに木材が持ち出される。リンを始めとするミネラルは失われる理屈になるだろう。

実際、吉野でも再造林地の苗は、生長が遅いことが知られている。もっとも遅い方が年輪が密になるので困ることはない。成長が遅いことをよしとするのである。
だが、早く生長することを念頭にしている林業地、たとえば宮崎など九州はどうだろうか。戦後の造林地は40~60年で大木になったから、次回も同じサイクルで考えていたら、そんなに早く太くならないかもしれない。森林計画に狂いが生じる可能性がある。

とはいえ、リンが尽きて草木が育たなくなることはないそうだ。その点が畑地と違う。肥料はいらないのだ。

その理由は、まだ突き止められていない。なかには海に流れ出たリンが魚を育て、その魚を食べた海鳥が山にきて糞をすることで循環させているという論もある。鮭など川を遡行する魚が、上流で息絶え、森の動物に食べられることで、リンが山にもどされるという意見もある。
まあ、一部の地域ではそんな可能性もあるだろうが、日本の山全体をそれで説明するは難しかろう。やはり、岩が風化して崩壊する過程でリンが放出され補給されていると考えるのが自然らしい。つまり、山は、基本的にリンを始めとする様々な成分を巨大な量プールしているのだ。多少の木材収穫と森林外持ち出しでは影響を心配しなくてよいらしい。

リンは、循環していないのだ。山から川、海へと一方通行で流れていく。何千万年も立てば、海底の隆起で地上にもどるのかな。

ただ、リンを始めとしてミネラル分は、葉っぱに多く含まれる。木質部分にリンなどミネラルはあまり含まれていない。現在の林業では、この葉を切り捨てて林地に残しているが、それが腐朽して土にもどることで、リン類を循環させている。
もし枝葉も山から持ち出す全木集材が主流になると、林地からリンのより多く減ることになって将来の樹木の生長に変化が現れるかもしれない。

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コメント

この前久しぶりに林業をしている父と話をした。二酸化炭素吸収源(京都議定書)の関係で、間伐をしなくてはならない目標面積が設定されて国がその目標に向かって一生懸命になっているという話をしました。あまりピンとこなかったらしい。
その際に、父が3年前に植林したところ(ヒノキ、杉、コナラ)の最上部に桜を10本ぐらい植えた話をした。鹿にやられたから、ネットで保護すると同時に早く鹿が届かなくなるように肥料をやったらしい。少し前なら、森林肥料をやったと思うけれど、農地用の肥料をやったみたい。
ここで思いついたのですが、二酸化炭素の話はちょっとした知識もさることながら、かなり専門的な知識がないと勘違いをしてしまうかもしれないし、感覚で理解できない。でも、林業課の大部分は農業もやる。山林土壌にかんする栄養素の話は今までの農業経験でそこそこ理解ができるのではないでしょうか。
農家林家にとって山への興味を再燃させる手法としては、二酸化炭素の話よりも、山林土壌の話のほうがはるかに食いつきやすいのではないでしょうか。特に、窒素燐酸カリについては自分の農業経験とオーバーラップするはずだし、七十代の方々なら落ち葉下記などをやって、森林の恵みを畑へ持っていっていた経験もあるはずだし。

たしかに森林のCO2吸収がどうたら、という話は、林業家からすれば感覚に合わないでしょう。結局、議論は学者と役人、政治家などの空中戦になってしまいます。

林業家に山への興味を持ってもらうためなら、木の生長に関する方が有効でしょうね。なにより楽しいもの。野菜を育てるのが楽しくて家庭菜園を作るように、木を育てる楽しさに目覚めてくれたら……。

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