「水源地の村からの提言」
昨日は、奈良県川上村主催のシンポジウム「水源地の村からの提言」に招かれて、講演と森林放談を行った。
私は20年前に初めて川上村を訪れている。この村は吉野林業の中心地であるが、その時の訪問理由はホテルオープンだった。思えば、林業から観光へと舵を取った時期だったのだろう。
ただ私には、これが直に林業と触れるきっかけとなった(大学の林学科なんて、机上の学問だからね……)わけで、私が森林ジャーナリストを名乗って仕事をする原点がこの村にある。その後、私は川上村に通い続け、林業を実地に体験しつつ学び、山村の暮らしに触れた。さらにダムの建設の進展を観察し、洞窟を探して潜り、村へIターンで移住した人を何人も取材したりする。そして土倉翁に迫ることにもなる。
「放談」では、その頃の思い出を語った。壇上から当時の懐かしい顔も見えた。
もっとも、その後話が吉野の林業の現状になるや思わず「やる気がない!」と罵倒し、さらには「ソフトのない箱ものは、一度見たら飽きる」と口走った(^^;)。
ただ、今回のシンポの運営の主力となっていたのは、村の施設に「就職」した村外から来た人々ではないかと感じた。さらに会場周りの案内や設営など準備に汗を流していたのも、ボランティアで来ている村外のNPOの人々である。
箱もの観光施設にソフトを生み出し付けているのも彼らだし、そのソフトによって村のファンとなり村の応援団を引き受けている人々も村外者である。
「村からの提言」も、私が口走ったのがその一つなら、村外からの意見ということになる。こうした村外者のパワーをどこまで活かせるか。
あと、一歩、である。
« 「女性を意識して」 | トップページ | 予言と昨今割り箸事情 »
「森林学・モノローグ」カテゴリの記事
- 賀茂川のキショウブ(2022.05.27)
- 大楠と、怪しい樹齢(2022.05.25)
- 「大睡蓮」を見てきた(2022.05.22)
- 伊能忠敬(2022.05.21)
- 河川敷の木は伐るべき?(2022.05.13)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 「水源地の村からの提言」:
» “水源地の森”からの提言 [日々ほぼ好日]
8/27(水)、川上村の「森と水の源流館」が主催するシンポジウム「“水源地の森”からの提言『地域をいかす環境教育とは』」を聞きに行った。開催場所は、橿原市商工経済会館(橿原神宮駅東口)7階大ホールだった。
http://watashinomori.jp/news/2008/20080821_44.html
シンポは3部構成で、森林ジャーナリスト・田中淳夫氏の基調講演、学校関係者の報告、田中氏と辻谷達雄氏(森と水の源流館館長)との対談、と盛りだくさんだ。
冒頭で挨拶される川上村・大谷村長
私の... [続きを読む]
先日はシンポに出席しました、tetsudaと申します。貴重なお話を有り難うございました。早速、私のブログに書かせていただき、トラバも送らせていただきました。
厚かましいお願いで恐縮ですが、またご意見を拝聴したいと思っています。よろしくお願いいたします。
投稿: tetsuda | 2008/08/30 08:36
シンポにご参加ありがとうございます。でも、自分が写っているブログを見るのは恥ずかしい(^^;)。
まあ、書かれたとおりなんで……ただ箱もののうち、源流館は、辻谷さんを始めとするスタッフがソフトを作り上げて、それなりにリピーターを呼んでいるんですね。しかし、なんとか資料館とか匠のムラとかホテルとか、十分に客を呼ぶソフトが足りないところはたくさんあると言えます。
投稿: 田中淳夫 | 2008/08/30 10:57