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2008/11/15

吉野材が秋田材に

林材フォーラムの続き。

ここで私とともに話題提供したのは、長年奈良で木材の研究をした後に、秋田へ赴任していた人なのだが、吉野材と秋田材、そのほかの材(スギ)との違いを説明してくれた。

それが凄いのだ。たとえば曲げ強度、圧縮強度、曲げヤング係数、比重の出現率、年輪の出現率……等々、いずれも吉野材がずば抜けている。単に強いだけでなく、まんべんなく存在して安定している。これはどういうことかというと、当たり外れがないということだ。吉野材と言われて買ったけど、なかには弱いものが混ざっていたとか、年輪幅も材の場所でばらついているとか、そうしたことが少ない。

つまり、吉野材は非常に安定した木材素材だったのだ。いくつかの項目で吉野材と同等か少しよい数値が出たのは埼玉の西川材なのだが、ここもまた吉野式の造林方法をとった林業地であった。残念ながら秋田杉は、天然生でも吉野杉に劣る。造林杉は問題外といえるほど差が出ていた。(秋田杉と呼ぶのは天然杉のみだけど。)

ところで、仰天する話を二次会で聞いた。吉野の木材市場で、ときどき200年もののスギが出荷されるのだが、そこに買いつけに来るのが秋田の業者なのである。

この意味、わかる? ようするに吉野杉が秋田に運ばれて秋田杉に化けているらしい。

秋田の天然杉は枯渇している。だから、各地から仕入れているらしい。しかし、なんと吉野杉とは……。かつて吉野が秋田杉など全国各地の優良木を仕入れて吉野杉として出荷していた話は聞いたことがあるが(今だってやってるかも)、その反対の現象が起きている。なんだか、せっかくの吉野杉の性能がもったいなくなった。

明示する情報には、本当の産地も書かなくては、ね。

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コメント

産地偽装や、虚偽の情報表示は、バレルと致命傷となることは、他産業の例で分かっているはずですよね。

ま、それほど現在は木材の情報表示に対して誰も重要視していないということでしょうか?
重要視しているのは林業関係者で、多くの発注者は関心すら無いという状態。
わざわざ物流費かけて高くしても、実際にどれほどそれに価値を感じて買ってくれる人がいるのか。
完全に空回りですね(^^;

食べ物以外では、あまり産地にこだわらないのですかねえ。林材関係者の思い込みなのかもしれない。

不思議なのは、吉野材を秋田材にして採算が合うことです。売り方を工夫して高くなるんだろうけど、では同じことを吉野でやれないのが???。

信用じゃないですか。吉野材を扱う業者が認めれば吉野材ですよ。東濃檜でも産地の名前ではないですよ。産地偽装でもなんでもないですよ。需要に対して供給が答えられない、つまりここの例でいうと秋田杉の需要はあるけどモノはない。しょうがないんで、秋田杉に見合うモノを他からということでしょう。プロにしかできませんよ。信用失いますから。

これを産地偽装と呼ばずして、何が産地偽装?
秋田杉は、天然生の秋田で育ったスギと定義づけられているのです。吉野杉は、純然たる植栽木。もちろん奈良産。プロの仕事としては情けない。まあ、秋田杉の代わりに吉野杉を供給するのは、スペックオーバーな気がするけど。

東濃檜は産地名ではない、とは以前から言われていますが、それは業者の言い分であり、消費者がそれを知ってどう思うかは別問題。本当に自信があるなら「これは吉野産の秋田杉です」と表示すべきです。

原木の消費者はほとんど製材業者だと思われますので、問題ないですよ。というか相手もその道のプロですので、馬鹿なことはできません。製材から先はわかりませんが、秋田杉の製品は疑ってあたりまえでしょうね。
ただ、いわゆるブランド物はお金持ち向けですので、一般的には並材で十分ではないでしょうか?
市場ごとに値段の開きがありますので、運賃と相場があえば奈良県でも三重県でも愛知県でも出荷しますよね。其の先はどこ産になるかはわかりかねます。というか、三大林業地以外は林業後進国???西川材も昔話に。
ブローカーも少なくなりましたが、産地偽装が問題になるとすれば、出荷する地域を限定するべきですね。もちろん製材もその地域限定ですね。ブランド力を守るために。
並材で十分ですよw

たしかに並材で十分なんですよ。木材として使うのなら。
ただ、「秋田杉」とか「吉野杉」というブランドを欲しがる消費者はいて、高値でも買ってくれるのは、そのブランドについているロマンを求めているのだと思います。その一つが産地なわけで、その思いを裏切ってはいかんだろう、と。

吉野杉と売っているのが実は秋田の木で、それを秋田の人が買って秋田杉と名付けている……なんていうブラックな状況を想像してしまった。

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