なぜ列状間伐を嫌うのか
(列状間伐という技術がある。
間伐は生長の悪い木、あるいは売り物になる木を選んで伐るもの、という常識がある林業界で、木は選ばず不良木も優良木も考えず列状に伐ってしまう方法である。
当然、批判が強い。列状に空間ができるので、そこに風が抜けて風倒木が増えるとか、光が入って幹の片方ばかりに枝が出たり徒長するとか……。
毛嫌いする林業関係者が多いのだ。
ところが間伐を研究した人によると、実は列状間伐したら風倒木が増えるなど生育に影響があるという厳密なデータはないそうだ。研究不足と言えるのかもしれないが、頭で思うほど悪影響はないらしい。
むしろ選木の手間が要らず、一列に空間がてきるのだから伐採した木の搬出も楽になる。間伐遅れの人工林が増える中、推進されているのだ。
さらに木を選んで伐っても、肝心の使い道が合板だったり集成材、無垢の製材であっても上からクロスを張るような使用法なら、木の質を選ぶなんて無意味と言える。
それなのに、なぜ嫌う人が多いのだろうか。
思うに、林業家がすでに林業をビジネスと思っていないからではないか。ビジネスなら、コストダウンも含めて、冷徹に山の木の価値を計算しなければならないが、樹木を愛でる、つまりペット感覚になってしまい、不良木だけを除いて美しい森にしたい、生きている木を何も考えずに一律に伐りたくない、たいてい2残1伐にするから間伐率が33%にもなり森がスカスカになったように見える、など森を擬人化しているのではないか……。
(※ 実は、間伐率は30%以上にしないと効果が出ないという調査結果が出ている。)
もちろん、そうではない、列状間伐を嫌う明確な理由があるという人がいらっしゃったら、ぜひご意見を聞かせてください。
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手遅れ林分に列状間伐を一回行い、その後は定性間伐に移ります。北海道へ行くと最初から列状に植林しています。haあたり一万本植えるのか、三千本あるいは手を抜いて千本にするかみたいな感じですがw
ただ、研究者間では相当な批判があったと想像します。嫌うというか、かなりの悪口でしょう。
列状間伐で有名な先生に風倒木がでたらどうすんですかと質問したら、
「伐って出せばいい!」www
列状間伐を嫌う理由は、ナワバリ争いみたいなもんだと思いますよ。
投稿: | 2008/11/29 17:45
たしかに列状間伐批判は、理屈よりも嫌悪感に近いような気がしますね。そして学説の争い(笑)。今、作業道の作り方でも、同じようなことが起きていますが、それはまたの機会に。
列状間伐後の二度目の間伐は、たしかに定性でもよいと思いますね。すでに列が作業路的な役割を果たすから出しやすいし。でも、一度やってしまうと選木が面倒と感じるのでは?
投稿: 田中淳夫 | 2008/11/30 10:43
列状間伐は大賛成です。
作業効率が良い。
かかり木処理などの危険作業がない。
点間伐の搬出による残木の皮剥け防止。
カラマツ、杉、ひのきなどこれからの間伐最先端技術だと思います。
投稿: 木曽のカモシカ | 2008/11/30 23:37
こんばんは
確信は無いのですが、「列状間伐されたんだろうなぁ」と思われる山を見ると、素人眼には違和感があります。
「ペット感覚」もあるかもしれませんが、エセ環境団体からの横槍を嫌うってのは無いのでしょうか?
話は逸れますが、山菜図鑑等で「タラの芽」の乱獲で、タラの木が激減している等と書かれているのですが、自分の経験を通してみると、タラの木が減ったのは乱獲よりも、大規模な伐採や間伐が行われなくなったからではないかなぁっと。
列状間伐と思しき場所は、タラの芽の絶好な採取ポイントなので。列状間伐して、タラノキを生やしてやれば、タラの芽採りで、副収入も得られるんじゃないですかねぇ。
投稿: 飛魔人 | 2008/12/02 01:53
列状間伐後以降の選木ですが、いい木からで。
劣性木は伐らなくても自然に淘汰されるので。成長の良い木は年輪が開いているのでお金すればいい。詳しいことは定元先生に。wすいません。
確かに、開伐あとにとげとげは生えますね。。。
ただ列状間伐云々というより、施業でしょう。
長伐期とか、作業道も含めて。今ならとりあえずお金をつくるなら、、500立方の開伐より500立方の列状間伐になりますよ、たぶん。再造林がありますので。
投稿: | 2008/12/03 18:28
意外と、列状間伐に賛成派が多いですね。
伝統的林業地では嫌う人が多いのだけど、木曾でも賛成でしたか。列状間伐は、基本的に収入間伐ですから、やるとなると、太い木から伐る傾向にあるそうです。
実は、宮崎では、「4残2伐」という見事な列状間伐を見かけました。それが大規模に続いていると、逆に美しい。
間伐列も広く取って、タラノキ栽培するのも儲かるかも……。
投稿: 田中淳夫 | 2008/12/04 23:58