林業で食える方策
沖縄ボケ払拭のために、ガチガチ硬いテーマを。
林業で食えないと言われて久しい。何が問題かと分析するのは簡単だが、現実には意味がない。どうして食うか、が求められている。
食えない理由は、単純に言えば木材価格が安いからである。そして安いのは、木材が国際商品だからだ。外材価格と連動してしまうため、為替変動の影響をもろに受ける。1ドル100円未満になれば、外材の輸入価格は安くなり、国産材もそれに引きずられて下がる。林業でかつて食えたのは、1ドル360円だったからだ。
だから円安こそ林業振興に必要とか、輸入規制とか外材に重関税をかけろとか言い出すのは、頭の古い業界人か、縦割り分野しか考えない官僚か業界利益しか眼中にない族議員的政治家の方々だろう。
外材は規制できないし、国産材の価格は上がらない。これが基本だ。いつかまた材価が高騰する夢は持たない。もし上がることがあったら、それは儲け物のボーナスという覚悟で考えないといけない。
一つの方法は、コスト削減により、安価な木材でも純益を増やすこと。しかし、限度があるだろう。もう一つは、加工によって高付加価値商品にすること。ただし、外材にはできない加工であること。そして最後に、国産材ならではの情報の付加価値を付けること。
その方法を考えるのは、またの機会にする。
そこで逆算方式をとれないか。
思いっきり単純化して考える。林家で食うための単位を120haとして、それを60年で伐るとすると、一年で2haを伐る。法正林的考えるのだ。林齢60年の林地2haから出せる木材はどほどか、樹種は、A材B材C材の割合は……と考えるとやっかいなので、必要な利益から考えるのだ。
この2haで1年間家族が食べていくためには、最低年収300万円必要とする。ワーキングプアにならないための金額だ。ただ山村の暮らしは概して安上がりだろうから、そんなに酷い金額ではない。もちろん副業もありえる。
毎年持続的に300万円の収入を得るために必要な、伐出経費や再造林経費、育林経費を単純に同額とすると、売上額600万円となる。(ここのところの経費計算はよくわからない。誰かご意見を。)
ようは売上600万円、純益300万円になる経営をするのだ。造林経費は今は1ha200万円以上かかることになっているが、これはコストダウンが至上課題だ。同時に木材価格を上げる加工にも頭を絞る。
……そして、どうしても足りない部分は、所得保障も考えなくてはならない。一見バラマキ的補助金だが、林業にはバカほど補助金があるのだから、それを整理すれば(ようするに撤廃ね)金額的には現在の補助金拠出額より減るような気がする。
もっとも所得保障があるからと、上記のコストダウンと販売努力を鈍らせては何の意味もない。かなり厳しい審査基準を設けないとマズいかなあ。ここんところは、悩ましい。
少しは南洋ボケは晴れたか? ちなみに沖縄でも、森林組合に顔を出してきたよ。
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なるほど、逆算方式ですか。現実的にはどうなんでしょう。国や自治体にモデル事業として、提案するのもいいかもしれません。
競争市場に打ち勝つ林業モデル事業なんてどうでしょうか。
投稿: M | 2008/11/17 19:43
まず上記の試算の数字を真っ当なものにしなくてはなりませんね。
でも、本当は商品の価格の付け方としては当たり前なんです。経費を積み上げる方式は、今や時代遅れ。
ニーズ(売れる金額)に合わせて値を付けて、それを実現するためにコストを決めていくのが主流です。
その手法を林業家所得の算定に当てはめるだけのことです。
投稿: 田中淳夫 | 2008/11/20 00:01