木造文化財と木材
昨日の話題ともつながるのだが、先日、「文化遺産を未来につなぐ森づくりの為の有識者会議」が結成されて、主に歴史的木造建築物の修理修復に必要な大径木を今から作る、そして残しておく運動が始まっている。
すでに吉野杉など各地の大木が登録申請に手を挙げたようだ。
同じような動きは、すでに10年近く前から立松和平が仕掛けた「古事の森」づくりがある。今から林齢300年400年の森を作ろう、という運動だ。
実は、その時から疑問に思っていたのだが、どうして歴史的建築物の修理には大径木が必要なのか。たしかに現在残っている建築物の素材は大径木だったとしても、それを修理するのに同じ大径木にする意味はあるのか。
今の技術なら、小片を組木にしてもよいし、集成材や合板だってよいのではないか。接着剤の寿命がどうの、いうのは言い訳だ。その点は技術力でクリアできる。
そもそも歴史的建造物は、長い間に修理する時、常にその時代の技術を取り入れてきた。また素材も変えてきた。
法隆寺だって、創建当時にはなかった筋交いが入っていたり、唐招提寺も木小屋、いわゆるトラス構造を後世取り入れている。そして、東大寺大仏殿では、明治の大修理の際に、イギリス製の鉄骨を屋根に入れたし、一部はコンクリートを使っている。当時は、それが最新の技術であり建築素材だったからだ。また木造の柱も、寄木だ。
今でも、国産の大径木がないからと、台湾やら北米、アフリカなどから仕入れた外材を使った歴史的建造物は多い。
さすがに木造建築物の修理に鉄やコンクリートを使えとは言わないが、現在の人工林から取れる木材を集成して大径木に仕立てて見せることも、後世に残す技ではないかと思う。そして、本当に価値ある歴史的建築物なら、素材や構法がなんであれ、価値は減じない。
たまたま残ったのではなく、残したいという思いが今に伝えたのだから。
……とまあ、理屈こねるよりも、今から300年後目指して大径木を育てるとか、あと200年伐らないと登録するという発想に、何かうさん臭さを感じるのだ。きれいごとすぎる。どうも今は材価が安いから伐って売るより登録しておこう、上手くいけば補助金もらえるかもよ、というような意図が透けて見えてしまう。
いくら今約束しても、100年もしたら、後継者はさっさと高値の時に伐ってしまいそうな気がする。
大仏殿の柱。人がくぐり抜ける穴があるので知られるが、よく見ると、この柱は寄木であることがわかる。鋲と鉄輪で集成してあるのだ。大仏殿は集成材づくりである。
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大径木?
未来がどなってるか、わかんないけど。
そんなものを扱える職人なんて、たぶんいないと思う。
プレカットで?とか。
其の前に倒す職人もいなくなってると思う。
もう北海道では大径木を倒せる職人も少なくなってるし。アメリカでもやるような木に登って数回に分けて伐倒するようなことは
おれも恐くてやりたくない。銭しだいだけど、命のほうが大事だなw
投稿: | 2008/12/13 03:22