失敗例の視察会
宮崎では、皆伐が一般的だ。それも作業路を入れて、高性能林業機械という名の重機で伐採から搬出までこなす。大型になると、冷暖房完備だから冬も夏もない。時にライトによる夜仕事もある。人は現場で土を踏まないで仕事を終えることができる。
そこで問題になるのが、作業路の作り方だ。伐採面積が大規模か否かは別として、林地を破壊しがちなのは重機の入る作業路から山が崩れることである。コースの取り方、カーブや水路、土固め、法面……など施工によって、荒廃するかしないか決まる。あえて言えば、道の作り方、木材の引き出し方などを十分に配慮すれば、どんな大面積皆伐であろうが、山は荒れない。もちろん再造林は必要だけど。
そこで、作業路の作り方が重要なのだけど、それを学ぶ試みが進んでいる。
写真は、作業路の入れ方がうまくなく、その後の修復もうまくいかなかったところ、つまり失敗例の視察会。
驚くのは、この視察の案内は、この伐採を請け負った素材生産業者である。そこには社長も、道をつくった当の本人もいるのだ。
そして、なぜこんな道を作ってしまったのか、どこが悪かったのか、そしてどのように作るべきだったのか、をみんなで討議しているのである。
これって、画期的な勉強会ではなかろうか。(主催は、ひむか維森の会)
作った本人は辛い思いをしたかもしれないが、まだ20代の若者だったし、おそらくものすごくためになったのではないかと思う。ちなみに、この視察には、九州森林管理局長も参加している。
また、ひむか維森の会は、伐採搬出ガイドラインという指針を作っていて、山林を破壊しない伐採搬出を行うよう会員の素材生産業者に枷をはめているのだ。(それでも失敗してしまった、というのが上記の例なのだが。)
しかし、その失敗例から学ぼうという視察を行えることに、宮崎の林業関係者の底力を感じた。
私は鹿児島の林業を見て、「吉野より10年進んでいるなあ」と思ったが、宮崎に来て「鹿児島より10年進んでいる」、つまり吉野は宮崎より20年遅れていると思わざるを得なかった。
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次は宮崎で仕事しましょうかw
重機に冷蔵庫積んでる奴もいまして。
NightCuttingはしたことないですね。
失敗例の視察会は素直にいいですね。
投稿: | 2008/12/07 11:34
林業のナイターはお勧めしないです(^^;)。
失敗例から学ぼうとするのは、よりよい林業をめざす気持ちがあるから。そして自信があるからでしょう。
そこに恐ろしさを感じる。
投稿: 田中淳夫 | 2008/12/07 21:13