水産業にも新生産システム
森林ジャーナリストを名乗っているから、森林や林業だけ、山村だけと思われがちだが、実は水産業にも興味がある。
で、最近は水産業界にも流通の変革が進んでいるようだ。
大手小売り(主にイオン・グループ)は、近年になって船買いを進めているそうだ。漁船が水揚げした漁獲物を全部買い取るのである。中には売れ筋とは違う魚も多くあるが、それも買い取り、グループの販売力でさばく。調理法を調べて、それを付けることで売れるのである。
この方式が画期的なのは、現在の水産流通の裏側がある。今や決まった魚しか流通に乗せなくなっているからだ。マグロとタイ、サバ、アジ……とスーパーに並ぶ魚種は極めて限られている。それ以外の魚は、獲っても捨てているのである。
あげく、港から消費者の手元に届くまで1週間ぐらいかかるようになっている。冷蔵設備が進化しているので気づかないが、流通はどんどん遅くなっているのだ。
それを打ち破ろうというわけだ。消費者はいろいろな魚を手に入れられるうえに流通の短縮で安くなって喜び、漁業も得するから文句が出ないような気がする。
ところが、そううまい話ばかりではなかった。……船買いをされると、水産市場に出荷される魚の量は減る。みんな直取引になるからだ。おかげで、市場が衰退し、すると地元の魚屋に魚が回らなくなる現象が起きている。小さな魚屋は、市場で仕入れるしかないからだ。結局、大手だけが救われるシステムになっていた。
……とここまで考えて気づいたのだが、林業の新生産システムとよく似た構造だ。大手が直買いで木材を集めるから、地元の小さな製材所や木材市場が潰れていく現象と同じではないか。
一方で、大阪の「旬材」という会社が考え出した新システムがある。詳しくは
を見ていただきたい。漁場と消費者を直接結ぶ凄いシステムだ。これなら漁師も市場も廃れない。林業にも、こうしたシステムは作れぬものか。
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