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森と林業と動物の本

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2009/02/06

研修事業は誰のため?

農業や林業のほか、福祉関係は人手不足である。そこで働く人を増やそうと考えられ、まず行われるのが研修だ。それぞれの仕事に就けるように税金で職業研修を受けさせる。

一見、よいことのように思うが、実態を見ているうちに、どうもおかしく感じてしまう。

とくに驚いたのは、外国人労働者の受入れだ。今話題になっているのは、インドネシアからの看護師、介護職だろう。

これが不思議、というより不可解なのだ。高収入という餌で日本に呼び寄せながら、日本人でも難しい介護福祉士の国家資格を取得しろと言って研修する。3年で取れなければ失格だそうだ。とはいえ、漢字まじりの日本語で書かれた問題を彼らに解かせるのは酷だ。大半(全員?)は合格できず、帰国を余儀なくさせられるだろう。最初から仕組んだように。なんだか、研修することだけが目的のように感じる。

ちなみに外国人の研修費は、税金だけでなく施設側からも徴収される。それらは、しっかりと厚生労働省のほか経済産業省と外務省の外郭団体に落ちる仕組みだ

一方で、日本人の雇用ができない理由である福祉現場の低い待遇と過酷な職場環境の改善の様子は見られない。派遣労働者よりも給与は低く、仕事は厳しい。失業者でも、その現場を見たら逃げ出すという……。これで人員不足を言ってもしらけるばかりだ。

さて、この構造は、林業現場にも進んでいることをご存じだろうか。今、盛んに林業研修が行われている。ところが内容を見ると首を傾げざるを得ない。たとえば重機のない林業現場の人を集めて、重機の扱い方を教える。で、研修後は捨て置く。森林プランの作り方を教えても、肝心の森林組合は森林プランを作る気はない……。ほかにも研修は受けても、現場で活かされない(活かせない)ケースが多い。

そして、林業現場にも、すでに外国人労働者が入ってきている。主に中国人らしいが、人数的にはかなり増えている。主に重機を扱っている。林業的な技術はないが、(本国より給与はいいから)仕事の意欲は高くて、使えるそうだ。日本人の給与より安いのに。

労働現場の改革はせずに、過酷な現場に合わせられる(合わせるしかない)外国人を導入するのは、おかしくないか。

本当に研修が必要なのは、トップの人間だろう。たとえば森林組合の幹部を集めて経営学を研修するとか、改革意識を洗脳することから始めたらよいと思う。そして労務の改善やコストダウンによる収益増を達成させたら、現場の人も働きやすくなって、自然と増えるのではなかろうか。
だが、そうした抜本的改革は手を付けようとしない。研修対象は、常に末端の現場の人々だ。教えやすいから? 反抗できないし(笑)。

研修事業は、研修を受けさせる側のために存在する……そんな気がしてきた。

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コメント

社長が日本人で社員がすべてブラジル人の会社があります。主に育林、草刈除間伐でした。かなりタフな仕事をこなしていたと思います。
森林プランでも、ボトムアップで悩んでいる方はいると現代林業でしたか、出てましたよw
トップに提案して説得できなければ、立場上苦しくなりますから。
ただ、現状デフレ懸念がありますから、市場原理主義は今となっては、どうかと?
せっかく効率化コスト削減を計っても、還元されなければ意欲が失われるかと。
外国人労働者というのもコスト削減といえば、そうでしょう。今では原木も労働力も国際競争力にされされているとしか。

すいません。匿名です。
実は、地元の森林組合と作業員研修を計画中の市町村職員です。
市町村としては、土木建設業雇用がなくなってきて、兼業農家の収入源に不安があることと、人工林施業の作業員の確保が目的で、森林組合としては日給月給の作業員確保がもくてきという、目的が合致して規格しています。
部分的には、応募者(農家林家を想定)のためという大義名分が成り立ちますが、地域や組合のためという下心もありで・・・。外国人ではなく、農家林家の従事者の副収入源としていますが、自分たち組織のためという目的もあって・・・。
志は保持するつもりです。

中国人以外にブラジル人もターゲットでしたか。

一つの事業に、幾つもの目的と思惑が入り交じっているのは理解しているつもりです。それらを調和させて、それぞれプラスになればいいんですが、時に一つだけ(自分たちの組織だけ)目的を達成させるために動くケースも少なくなくて……。
本来の志を失うことなく、頑張ってください。

励ましのお言葉をいただきまして、ありがとうございます。

>研修事業は、研修を受けさせる側のために存在する……そんな気がしてきた。

同感です。

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