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2009/02/07

NHK関西・大橋慶三郎の「山の声を聞け」

昨夜は、予告どおり、テレビはNHKのかんさい特集「山の声を聞け~林業再生にかける80歳」、つまり大橋慶三郎の番組があるのだが……裏番組で「劇場版ドラえもん 緑の巨人伝」があった。どちらを優先するか?

思わず「ドラえもん」を見てしまった……(^o^)。

一応、森林破壊をテーマにしてるのだが……それが、つまんないの。なんだかシュールな展開で、やたらメッセージを詰め込もうとしたのか中途半端な難しさと子供だまし的ストーリーでげんなり。映画のドラえもんは、それなりの評価をしていたこともあるのだが、もはや品質崩壊である。

口直しに録画した大橋慶三郎を見ようと思ったが、つい「隠し剣 鬼の爪」を見てしまい、さらに「探偵ナイトスクープ」を……(^o^)。

ようやく大橋さんにたどりつけたのは、深夜だった。

この番組、「プロフェッショナル」より林業をきっちり描いている。林道づくりの極意に関してはさわりだけだが、いかに山の状態を読むか、「山の声を聞く」ことが重要か、非常に丁寧に説明されていた。大橋さんの山に対する思いが伝わってくる。彼を囲む弟子たちがいて、その技術を広げようという意志が感じられて……素晴らしい。

が、やはり名人芸の世界なんだろうな。全国の林業現場で誰もが真似ることはできまい。なにより「山の声」に従った道だけでは、生産性などを考えたら無理が出るだろう。それに大橋さん、そして一番弟子として紹介された吉野の岡橋さんの山は、高級材生産を行っているから可能な面がある。

長伐期で、高い木を出せるから、きっちりした道を作れる。するとトラックで搬出も行えるから、フォワーダのような林内運搬車を使わずに済む。
しかし並材生産地では、こうした高品質な作業道を入れられない。だからフォワーダなどに頼る面もある。すると道は傷みやすくなる。

大橋式の道づくりを学んだ人が、自分なりに工夫してより安上がりに作る四万十方式と呼ばれる作業道を提唱した。だが大橋さんは、その道が大嫌いのようだ。四万十式を大橋さんより学んで作った、と報道されたら烈火のごとく怒って騒動になった話もある。
四万十式の道だって、これまでのいい加減な道と比べると、非常にしっかりしていると思う。また、四万十式も、各地に伝播してそれぞれ工夫を凝らした新たな道づくりの方法を生み出している。

私には、双方の違いがよくわからないんだけど(^^;)。なんだか感情的に争っているようにも見える。

また大橋さんは、列状間伐もお嫌いのようだ。
しかし、列状間伐を提唱したのは、大橋さんと並ぶ林業界のカリスマ? で、山の現場にこだわり続けた元・信州大学演習林教授の島崎洋路氏である。彼は、荒れる山をなんとか手入れする方法を考え、いろいろ実験した結果、列状間伐方式に行き着いたという。これなら技術のない人でも取り組めて、しかもコストや時間がかからず、多くの面積で間伐が進む……という思いからである。

ここに名人としての技術と、現実に向き合い妥協線を探った技術の相剋があるのだろうか。

技術的な優劣はともかく、現場現場に合わせた技術が必要であり、多様な林業技術を認める林業再生の試みがほしい。画一化こそ、林業のもっとも大きな敵ではなかろうか。

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コメント

>技術的な優劣はともかく、現場現場に合わせた技術が必要であり、多様な林業技術を認める林業再生の試みがほしい。画一化こそ、林業のもっとも大きな敵ではなかろうか。

 そう思います。まだまだ新しい技術が開発されても良いと思います。
 地形、地質、林層、条件などすべての現場で違うので、その場所のもっとも良い林業技術で安く早く安全に作業ができたら最高です。

おはようございます。
おっしゃるとおりですね。
いろんな方面での、立派な熟達者を紹介されて、その人の特別なすばらしさが伝わっても、なぜか無条件に喜べない、しっくりこないことがままありました。
田中さんのこのご文章を拝見して、納得しました。
「名人としての技術と、現実に向き合い妥協線を探った技術の相剋があるのだろうか」
各々自分の立場を離れて、全体を見渡し、その上で最善策を模索する事が必要ですね。
「画一化こそ、林業のもっとも大きな敵ではなかろうか」
一人をカリスマとして崇めたり、同じことを踏襲しないことを非難したり、、、
カリスマと言われることによって、考えが狭められたり、歪められることもあります。
持ち上げる人、追随する人たちも、責任を持って行動していただきたいですね。

せっかく、湯浅さんに大橋さんと続いたのだから、次は島崎さんを取り上げた番組を作ってほしいですね。さらに速水さんとか、中野さん、岡橋さんもいいかも。でも、これでは高級材の生産地ばかりになる。やはり九州や東北で活躍している林業家も扱ってほしい。すると、多様な林業の姿が浮かび上がるのではないかな。

 残念ながら関東では大橋さんの番組は放映され無かったようです。

 四万十方式作業道については去年の東日本チェンソーアート大会の前夜祭で、岡山から参加されたカーバーさんがその講師をやっているということで話を聞いたことがあります。
 市販されている田邊本の記憶をぶつけてみたら、個別のヤマの実態をみて判断する と言下に「塗り絵お手本的知識」を否定されて安心した記憶があります。
 中でも得心したのが、運転の安全を考えない道など有り得ないという話でした。

 大橋さんの番組関東見送りは期待しているだけに本当に残念なのですが、それこそ林野庁あたりでこういう番組の版権を片っ端から買い取って順次安価なDVDシリーズとして希望者に配賦して貰いたい♪・・・なんて思ったりしますね。
 もしかしたら、けっこう真っ当な予算の使い方かも知んないし(笑)

四万十式は、多少通行の安全を犠牲にしてでも、水の流れなどをよくして崩壊を防ぐ……というコンセプトがありますが、否定的な意見もありますね。

大橋さんの特集、ユーチューブなどに誰かアップしていませんかね。

今NHKで放送してます。興味深く見てますよ~。

ようやく全国放送になったようですね。
感想、聞かせてください。

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