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森と林業と動物の本

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2009/02/28

森林のCO2吸収量は減る

CO2削減に、森林の果たす役割は大きいとされている。

日本の場合は、京都議定書の削減義務である6%のうち、3,8%を整備された森林に担ってもらう魂胆だ。その実現のために、現在莫大な予算を付けてしゃにむに間伐を推進しているわけだが、面白い推計が出ていた。

CO2削減の中期目標検討委員会で、天野正博・早稲田大学大学院教授が出した資料なのだが、今後、植林木が老齢化していくと、CO2吸収量が減少していくというのだ。すると、2020年には、現在と同じ整備状況でも2,9%にしかならないという。
京都議定書は12年までだが、その後の削減目標の中で森林への依存率は落とさなくてはならないだろう。

今でも、森林による3,8%確保は難しいのだから、言っても詮ないが、どうしても森林に頼ろうとすると、しゃにむに間伐範囲を広げる必要がある。それには莫大な設備投資が必要だし、労働力も足りない。そもそも需要を生み出さないと、切り捨て間伐の横行となるだろう。

考えてみれば、スギやヒノキなどは、樹齢60年を越せば生長量は落ちる。樹勢はまだ十分だろうが、あまり大きくならない(有機物生産量が増えない)。また幹など光合成に関わらない部分の肥大化によって、呼吸量の増大も考えられる。

それに、現在の林業の方向は、長伐期に移行させることを狙っているが、これも地球温暖化対策の面から見ると、マイナスだ。木は生長量の高い若年のうち(60年以下)で伐採して新たに植林するのが望ましい。苗木の生長がもっとも早いからだ。つまり短中伐期の方が適している。

以前から長伐期指向はおかしいと指摘してきたが、ここでも矛盾が出てきた。高林齢の森は、ある意味極相に近いが、そうした森はCO2の排出量と吸収量が拮抗して、見かけ上はゼロになる。つまり吸収源にはならない。

さて、どうする?

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コメント

地球温暖化対策というのも、当面寒冷化という
記事が日経に出てましたけど、わかりませんね。人工衛星でCO2を測定するなんてのもどこかにあったんですけど、実際は誰もわからないw
短伐期皆伐施業は戦後の拡大造林から~長伐期には皆伐と複層林施業で、吉野木曾天竜には
長伐期の収穫予想があるらしいですけど、実際は???になりますかね。人工衛星で実際にCO2吸収量を測定してもらうのが、わかりやすですかね。それで、あと何年かすると、
京都議定書って、なんだったの?って
なりかねない。ま、寒いですわ、今日も。

林業の現場は、CO2吸収ということをどれほど意識しているのだろうか。そのおかげで、使い切れない補助金が下りてきていることを理解しているのだろうか。
おそらく多くは判ってはいるけど、そんなことは考えてやってはいない。
放置された山を税金を使って手入れするためにちょうど世界情勢が理由付けになっているだけでしょう(こんなことあらためて言わなくても皆さん良くご存知とは思いますが)。
今の高密度路網、高性能林業機械による素材生産がどれほどの化石燃料を燃やして山から出してきているのか計算されているのだろうか。
重機が一日フルで動くと、軽油を少なくとも30Lは使います。これが出すCO2は林齢別に一日一人あたりどれだけの面積で、何立米素材生産すれば、マイナスになるのでしょう。
どなたか情報をください。

はっきり言って、森林のCO2吸収は、虚構です。
科学的に問題ある以上に、決め方が政治的すぎる。
整備した森林だけをカウントするなんて、政治以外の何者でもありません。

そのうえ森林の純生産量の算定も未知の世界なら、育林にかけるエネルギー、そしてご指摘の伐採搬出のエネルギーも謎のまま。重機の出すCO2量の調査なんて、やった人はいるのかしらん。

とはいえ、それらを承知で「森林が3・8%吸収」することを認めたのに、今度はその根底が揺らいでいるわけです。

重機の出すCO2量の調査ですが、こちらにありますよ。

●機械化林業5月号
http://www.kikanshi.net/archives/167/004367.html
●機械化林業6月号
http://www.kikanshi.net/archives/167/004514.html


肝心の内容は、読んだけれど忘れました(爆)。
確か数式のオンパレードで、後で熟読しようとして机の上にコピーが積んだままになっているはず。


最近の木質バイオマスの活用方法の一つに、間伐材でバイオエタノールを生成する話がありますが、いっそバイオエタノールで稼働する高性能林業機械を開発する方が、よっぽど温暖化防止に貢献するなって話を職場で良くします。

高性能林業機械で間伐する際、残燃料が減ってきたら、間伐した木を後ろのチッパーに放り込んでエタノール化し、その燃料でまた間伐を進める。

これは自動車業界なんかにも応用可能でしょうから、実現可能性は兎も角、とっても良いアイデアだと思うのですが。

「木ステーション」なんて看板を掲げている木工品のお店とかは全国各地にたくさんありますからね、ホントの意味でガソリンスタンドの代わりになれそうです。

ありましたか(笑)。
その場でエタノール化は難しそうだけど、木炭自動車なら……木をガス化するのです。木炭重機が実用化したら楽しそうだなあ。

もう一つ、木粉をエネルギーにするのなら可能かもしれません。山の現場で木々を微粒子化して、それを瞬間的に燃焼させてエネルギーに変える。熱量は軽油より小さくても燃焼炉を大きくしたらなんとかならんかな。

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