田舎で働き隊? 農林業だけやり隊?
相も変わらず、「農林業に向かう失業者や若者……」という記事が多いので、またこの話題で書こうかと思った矢先、ココログニュースに「農林漁業で働きたい人が急増中!」という記事タイトルが流れた。ココログというのは、このブログのポータルであり、NIFTYのブログのことだが、そこにあるニュース欄である。
で、書く前に参考にしようと、開いてみた。すると……
ブロガーたちの反応として取り上げられているのが、「出来杉計画」と「『だれが日本の「森と木と田舎」を殺すのか』であった……。つまり、拙ブログもネタ元だったのね。ちなみに「出来杉計画」は、拙ブログからもリンク張っているけど、林業やってるチェンソーアーティストの梶谷さんのブログ。
さて、気を取り直して。
実は先日、某農業組合法人を訪れた。そこでは、集落営農を請け負っていて、約21ヘクタールの田んぼを耕作している。ここの雇用は2人。そして大工(工務店)と一緒になって研修生の受入れを始めた。こちらには現在3人を入れている。住居を提供したうえ手当ても払いつつ、農業を教えているのだ。
そこで言うのは、「農業だけでは食べていけない」ことだ。
そこで建築も教える。春から秋は農業をして、冬場は建築を行う。家も建てられる農家、農業もできる大工、を養成しようという試みだ。どちらもものづくりであり、基本的な技術を身につければ応用が利く。もともと農家は、農業だけで食べているのではなく、副業を行いながら生活していた、という持論を実践していく場を作ったのだ。
副業は、建築だけでなく林業も土木も加工品づくりも販売も勤めも、なんでもあり。自然教室のインストラクターとかグリーンツーリズムも含めるという。
まさに百姓だ。百姓というのは、100の姓、つまり多くの仕事を持つ人のことを指していた。農業には100の仕事があるんだ、という解釈する人もいるが、本当は農業以外の仕事も多いのだ。
折しも、今日の参議院予算委員会では、民主党の主濱了議員が農政問題の質問をしていて、石破農水大臣と論戦を展開していた。
久しぶりに聞き応えがあったが、そこで奇しくも大臣が答弁していたのは、「農村は、常に副業で維持されてきた」という言葉だ。農業以外に土建や林業やあるいは村にできた工場に働きに出るなどして、総体としての収入を支えてきたことを語っていた。
そうなのだ。農業、あるいは林業、漁業だけで食べていく生活を描いては、おそらく大半は破綻する。
しかし、現在進められている政策は、大規模化など専業農家を優遇しようとしている。しかし専業でやっていくには、大規模化する資金とノウハウがなければ無理なので、個人の就農希望者には手が届かない。
そして「田舎で働き隊!」事業でも、その点を忘れているのではないか。農業の研修をいくらしても、それだけで食えないことは、地元の人が一番よく知っているはず。それを肝心の研修では、語られているだろうか。美しいきれいごとだけ見せるのでは、本当の研修ではないだろう。
農林漁業に新たに人を送り込みたいのなら、ちゃんと副業施策を付随させないと、棄民政策になりかねない。そして、就農したいと思う人も、農閑期には土木作業やってでも続けるぐらいの覚悟はあるのだろうか。移住先で、それを勧められたものの、嫌って都会に帰って来てしまった人もいたが……。
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