無料ブログはココログ

森と林業と動物の本

« 「意外と」売れている(^^;) | トップページ | 『森を歩く』裏話3 »

2009/03/13

「世界遺産の森林を守ろう基金」から考える

200903121422000                                                   

訪れたスーパーマーケットで見かけたポスター。「世界遺産を守ろう基金」

この場合の世界遺産とは、紀伊半島の熊野古道と参詣道のことだ。その一部は奈良県なのだが、和歌山県が熱を入れている。

このスーパーが和歌山の資本系列だからかもしれないが、和歌山県が仕掛けた寄付金募集だ。スーパーの一部の商品が、この基金に協賛している。それらを購入すると、いくらかが基金に寄付されるのだろう。

世界遺産と引っかけたところが特徴だろうが、最近は何かと「基金」というのが目に止まる。しかし、寄付と基金は、どう違うのか?なんて考えてしまう。

先のスーパーマーケットと基金の場合、消費者は、どうせスーパーでは何か買うのだから、その時に協賛マークを付いた商品を選ぶのはおかしくない。値段はほとんど一緒。多少割高だとしても、許容範囲に抑えるのがポイントだ。店は、それによって売り上げ増を狙うとともに、店が環境問題に理解のあることを示せば、イメージがよくなり、客の入りがよくなることを期待する。

三方(客・店・森)一両得というわけだろう。

---------------

かつては行政が金を出せ、という声が強かった。それが財政難から絞られてくると、新税が登場する。もっともわかりやすいのが、森林環境税だ。地方税に上乗せして、金を取る。これって、正直言ってイヤらしいと思う。単なる増税だ。森林だけに使う、なんて、誰が信じられますか(-.-)。その分だけ、従来の自然関係予算を削るに決まっている。

次に寄付金を求める声が強まってきた気がする。趣旨に賛同して、とはいうが、本当に自分に何の関係もない人が寄付するだろうか。会社なら、背任行為だ。
たしかに世の中の不況とは別に金を持て余している人もいるようだが、それにしても熊野古道に関心がない人が出すとは思えない。結局、奉加帳を回すことにならないか。

しかし、それも限界だろう。出した後は、どのように使われても口出ししない、なんて美しい? 寄付の時代は終わった。そこで「基金」が登場する。

お金を支払う側としては、やっぱりメリットデメリットを考える。金を出すことによって、自分にとって何が得られるのか。

そこで考えたのだが、社会事業の資金調達法として、ちゃんとした出資を求める仕組みはできないか。

今回のような漠然としたものではなく、環境、福祉、地域づくりなど何かの事業を行うNPOなどの団体に、事業説明をさせて、その趣旨に賛同するとともに成功の暁には、何らかのバックを保証させるのである。

いわば株式投資と同じである。株主としての出資であり、金を渡したら後は礼状以外何もない寄付とは一線を画す。もちろん補助金のように報告書づくりばかり忙しく、内実何もないつかみ金とも違う。
ただ株式ではないのは、出資者への還元は、配当金や株の値上がりではない。

もちろん事業で儲けて、出資金より多く現金でバックすることも大切だろう。しかし別の還元の仕方を取る。そこがミソだ。
株式投資と違うのは、配当を「出資者の満足」で行うことだ。金を出せば、後は忘れる寄付とは違う。満足の中身は、詳しく具体的な契約書を作成する。

ちゃんと現金で返すのが難しい場合でも、何らかの効果を提示する。
たとえば広告的効果でもよいし、名誉を与えるという手もある。(名誉会長位なんてのを出すのも一つ)。出資額に合わせて経営者に意見を言う権利を付けてもよい。森を確実に美しくすることとか、原野を何年後に森にする、村への年間観光客を1万人増やす……なども考えられる。福祉なら、何人の人に喜んでもらったか、何人の雇用を生み出したか、といった「満足」配当を行うことも可能だ。

契約を守り満足させれば、出資金返還を放棄するというのもあり得るかも。

また出資者は、権利とともに義務も追う。事業に、いかに協力するかがポイントだ。成功したら、自分も儲かるし、失敗したら自分の目利きが悪かったことになる。そして投資先への強制調査権も持つ。

そうなると事業主体も、経営に邁進しなくてはならなくなる。おのずと真剣になるだろう。事業に失敗したら、夜逃げしてもらう(^^;)。個人財産で保証しろとは言わないが、なんらペナルティがないのはおかしい。

……こんな基金のシステムを、もう少し煮詰めてみたい。

« 「意外と」売れている(^^;) | トップページ | 『森を歩く』裏話3 »

政策・行政関係」カテゴリの記事

コメント

ファンドです。
株式会社の問題点は、出資者は出資金以上は責任を負わない。経営者が負う社会的責任もないです。
日本の場合経営者=資本家ですから、夜逃げということはありますが、これを分離しておけば
その必要はありません。ああ、銀行からの借金で事業資金をまかなうと夜逃げになりますかね。
出資法の範疇になりますかね。ちょうど、ファンドを調べていました。だいたい、米ではベンチャーで5回に一回成功すれば利益がでるようです。
機会があれば、一口どうでしょう?もちろん元本保証ありません。配当も0に近いかな。
森林に投資する意義はありますし、お金では
ない配当=満足はあります。
今のところ、それが冗談でなくなりつつありますので、恐いですわww

そう、イメージとしてはファンドです。
ただ、通常のシステムだと「満足」配当では機能しないので、いかなる仕掛けを作るかが鍵です。

うまく作ってください(^o^)。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「世界遺産の森林を守ろう基金」から考える:

« 「意外と」売れている(^^;) | トップページ | 『森を歩く』裏話3 »

March 2025
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

森と筆者の関連リンク先

  • Yahoo!ニュース エキスパート
    Yahoo!ニュースに執筆した記事一覧。テーマは森林、林業、野生動物……自然科学に第一次産業など。速報性や時事性より、長く読まれることを期待している。
  • Wedge ONLINE執筆記事
    WedgeおよびWedge on lineに執筆した記事一覧。扱うテーマはYahoo!ニュースより幅広く、森林、林業、野生動物、地域おこし……なんだ、変わらんか。
  • 林業ニュース
    日々、森林・林業関係のニュースがずらり。
  • 森林ジャーナリストの裏ブログ
    本ブログの前身。裏ブログとして、どーでもよい話題が満載(^o^)
  • 森林ジャーナリストの仕事館
    田中淳夫の公式ホームページ。著作紹介のほか、エッセイ、日記、幻の記事、著作も掲載。