挿し木苗づくり
広島を訪れた際に、初めて見た林業の仕事があった。
それが穂木摘みによる苗木づくりだ。
植林する苗は、実生苗(種子より育てるもの)と挿し木苗に分かれる。全国的には挿し木苗が多いのだが、私は吉野で実生苗ばかり見てきた。
広島の安田林業は、挿し木苗を自前で作っている。それを見ることができたのだ。
挿し木の枝のことを穂木という。これを摘み取る母樹があった。
わかるだろうか。カリフラワーのようなモジャモジャしたのが母樹(^^;)。
これで、なんと樹齢50年くらい立つという。太さは10㎝くらいしかない。毎年、春になると伸びた枝を摘み取られるから、生長できないのだろう。
この摘み取った穂木を、いくらか剪定してから水に漬けて発根を促す。それを畑に受けるのだが、1年後には床替えも必要という。なかなか手間のかかる育苗だ。
摘み取っているのは、ナカシマアヤさんと、師匠のフカセさん。フカセさんは、この道50年とか。苗にも、茎が緑の青苗と木質化した赤苗があるという。意外なことに赤苗の方が発根性がよいという。
これが、苗畑。林業とはいえ、畝を作って完全に農業的だ。
春の間に1万本の苗を作らねばならないので、かなり忙しい。
1万本と聞いて、たくさん作って植えるところあるのか、と思ったが、よく考えると1ヘクタール3000本植えならたかだか3ヘクタールである。
この苗の品種は、八郎杉というらしい。この地方の独特の品種だ。これを守る意味もあって、苗づくりを絶やさぬようにしているとか。
全国にはスギだけで1万種類もの品種があるという。近頃は花粉の出ない品種づくりも行われているが、これらを守るのは大変だろう。
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さすが本職!! ナカシマさんと違って見事にまとまって解りやすい。(彼女のは連載だから比較する物でもないのだけど)
1万本の苗畑ってどれくらいの大きさなんですか?
投稿: 神戸のキコリ | 2009/04/25 22:45
1万本の苗木畑ってほんのちょっと!
15cm間隔で挿し込んで15m×15m。
『えっ!これで1万本あるの?』って感じです。
それと、彼女には『今回の苗木生産過程を細かく記録するように』って指示してありますから
ちょっと冗長気味に感じられるのですかね?
苗木生産資格を持ってる私から見ると、とても判りやすいんですが・・・(⌒o⌒;)
まぁ、未だ勉強中と言う事でこれからも見守ってやってください。m(_ _)m
投稿: やすだ | 2009/04/26 08:07
私のは、表面なぞっているだけです。
林業における育苗は、以前は非常に重要な技術であり研究対象でもあったのだけど、今は陰が薄い。
造林面積が縮小してビジネスにならなくなっているから……でも、今後、伐採面積が広がっていくから、再造林のために注目すべきだと思います。
投稿: 田中淳夫 | 2009/04/26 09:12
やすださんありがとうございます。2反とちょっとですか。
ブログの主は立てないと!
概論としては、こちらの方が理解しやすいと言うことで、
彼女の書く詳細な内容も参考にしていますが、この分野は素人なもんでこれを見て流れをつかんでおかなくては頭に入りにくいのです。
最近は、植林する現場が減ってきているので植林・下刈仕事が減ってきています。
苗作りって仕事は、どこかに集約されるか、造園屋さんの仕事になってしまうんでしょうか。
(吉和では、守られるようですが)
投稿: 神戸のキコリ | 2009/04/26 10:56
こんにちは
実生苗と挿し木苗は、どちらがはやく成長するのでしょうか?
吉野が実生苗を採用している理由は何ですか?
京都御所の公開にあわせて、奈良、和歌山にも寄ってきました。
お土産に吉野杉の割り箸を探しましたが、見当たりませんでした。
投稿: 花姥 | 2009/04/26 17:09
吉野杉割り箸、奈良のお土産屋にありませんでしたか。駄目だなあ。ちゃんと行き渡らせなければ。
奈良の人も、割り箸が奈良の土産になることに気づいていないのではないか。
実生苗は、生長速度よりも芯が赤く美しい材が取れると言いますね。でも、吉野が採用した明確な理由はわかりません。ただ遺伝子が多様なので、病気などに共倒れしない。
また種子は、樹齢80年以上たった木からしか取らないので、形質を見極めることができます。
投稿: 田中淳夫 | 2009/04/26 22:10