書評「農協の大罪」
今日は、ただ会議に出席のためだけに福知山まで往復。約5時間を列車の中で過ごした。
結構疲れてしまう。でも、列車に揺られながら本が読めた。
農協の大罪 「農政トライアングル」が招く日本の食糧不安 山下一仁著 宝島社新書
元農林官僚が執筆した、農協、農林続(政治家)、農林官僚の作り出した日本の農政をえぐった作品である。
林政を考える際に、やはり大枠の農政のことも知っておくかな、という気持ちで手に取った。そこに描かれているのは、強烈なトライアングルのカラクリだ。
日本の農業がダメになったのは、何より農協が「脱農業」を推進したから。それに乗っかった政治家と官僚組織のていたらく。農業を立て直し、国の財政の負担も減らし、農家のやる気と手取りを増やす施策はあるのに、それは常に実行されない。なぜなら、その施策では農協が儲からないから。
……ここに書かれてあるのは、私にとって全く知らなかった事実ではない。大雑把に把握していたし、さもありなん、でもある。それでも現場からの告発だけに読みごたえは十分。
ま、文章は官僚臭さが残るし、戦前・戦後の官僚を讃えるのもどうかと思うが、読ませる迫力はある。
私は、この構造は林政にもそのまま当てはまると感じた。いわば小型版。
ただ救いを感じたのは、林業界に農協に匹敵するような巨大組織がなく、森林組合は弱小、林業族議員もほとんどいず力もさしてなく、何より林野庁が弱体なことだ。(^^ゞ
トライアングルにがんじがらめの農業界では改革を進めるのは至難の業だろうが、林業界は、ある程度の突破力があれば、改革は可能だろう。日本の農業は滅んでも、林業は立て直せるかもしれないぞ!
ちなみに著者は、農水省退官後は、ちゃんと天下りしているようだ(-_-)。東京財団。そう、中国資本が日本の水資源を狙っている、とのレボートを出したシンクタンクである。
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