絶滅危惧?コナラ
昨日に続いて、また山に行く。
森遊び研究所の周りにテープを張りめぐらせるためである。
本当はこんなこと、景観的に好きではないのだが、この季節は勝手に森に侵入する輩が増えるから、多少とも心理的バリアーにしようという作戦だ。もちろんテープなんて、簡単に乗り越えることができるのだが、ここに所有者がいて縄張りをすることで、侵入するのを躊躇させようという父の命でもある(^^;)。
自分の土地で焚火をするのを封じられた代わりに、他者の侵入を止めるのも意趣返しになるかもしれない。
そこで、昨日のテーマ「里山管理の陥穽」の続きになる。
日本の雑木林でもっとも多い樹種は、おそらくコナラだろう。かつてはアカマツだったと思われるが、マツクイムシにやられて激減している。その代わりに伸びたのがコナラだ。
コナラ自体は、二次林の代表的な樹種だ。生長は早く、乾燥したところや寒冷地でも育つ。しかもドングリも付けるし落葉樹として土地を肥えさせるし、薪に木炭にシイタケ栽培にと使える便利な木である。景観的にも美しい。とくに今は新緑が抜群によい。
このコナラの将来が危ぶまれている、と書けば、疑問を持つ人も多いだろう。私もそうだった。
が、その危険を指摘する研究が森林総研にあったのだ。
その理由は、コナラが太くなりすぎたこと。コナラは、伐採しても萌芽が生えるから、減少することがないとされた。ところが、太くなると萌芽しなくなるのだ。
実は、私も感じていた。毎年、シイタケ原木用にコナラを1、2本伐採しているが、当然伐採後に出ると思った萌芽が出ない切り株が少なくないのだ。どうやら樹齢40年を越えると、萌芽の出る能力が減退して、50年を越えると期待できなくなるらしい。そして、雑木林の放置が進んで、そろそろ40年を越すと思われる。
もちろん、ドングリも付けるから種子更新も可能なはずだ。
ところが、ドングリは、あっという間に虫や鳥獣に食われてしまう。私もドングリを採取して一晩置くと、ドングリから虫が這い出てきて驚いたことがある。地表に落ちたドングリには、すぐに虫が入り込むのだ。
しかも芽が出ても、上に大きな樹冠が被さっていたら、暗くて新芽は伸びない。種子更新が成功する確率は低いという調査結果が出ていた。
となると、今後、現在生えているコナラの寿命が尽きたとき、次に続くコナラはなくなるのではないか? 絶滅危惧種になるのだろうか?
そんな極端でなくても、現在興隆している種が、ある時にガクンと勢力を減退させる可能性はある。そもそもアカマツ自体がそうだった。ほんの30~40年前までは、日本の里山の大部分はマツに覆われていたのだから。
次はコナラか。その際に新たに現れる樹種は何か。いや、そんな木があるだろうか。
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コナラが衰退して土地がやせた時が、アカマツにとって再考するチャンスの時かもしれないですよね。
そしてマツタケも。
アカマツが幅を利かす事が出来るのは、やせた土地で相棒のマツタケ菌と共になって活躍します。
化石燃料が使われるまではマツバなどは、焚き付けに持っていかれていて、やせた土地が維持されていたんですよね。肥えて来ると遷移さして違う利用法を考えたんでしょうね(サイクル・サイクル)
> ほんの30~40年前までは、日本の里山の大部分はマツに覆われていたのだから。
これは、戦争による影響もあるかもしれませんよ
(エネルギーや資材供給のために伐採された)
込み入っていては陽樹は更新できません、更新するためのギャップをいくつか開けてやらないといけませんね。
いっそ宮脇さんの潜在植生の様にしてしまう???
投稿: 神戸のキコリ | 2009/05/01 21:38
アカマツ、クロマツが枯れたのはマツノザイセンチュウ(いわゆるマツクイムシ)が原因です。マツノザイセンチュウは外来生物で日本のマツはこれに対する抵抗性を持っていなかったので枯れました。松林を維持するためにはマツノザイセンチュウを媒介するカミキリを農薬の空中散布で殺す必要があるのですが、予算が出なくなったり、環境問題で出来なくなって枯れたところが多いのです。佐賀県唐津市には虹の松原という美しいクロマツの林がありますが、この維持には非常に手がかけられています。
投稿: adfl | 2009/05/01 23:36
adfl さん
私のコメントに対するコメントですよね
松が枯れたのは、松食い虫というのは存じています(原因は、スギ花粉症と似ていて周辺環境の変化も要素として考えられる)が、それならなぜ次の世代が育たないのか?
松は、やせた土地を好む先駆者で、砂浜は別として次第に地表面に有機物が堆積していくと徐々に土が肥えて保水力も上がり競争力のある次の植生に遷移していきます、それを停めていたのは、人が利用していたこともあります。
松が増えた原因としては、乱伐の影響があったと考えます。今のように、再植林なんてほぼしませんでしたから。(戦時中は油不足で松根油が欲しくて植林したかもしれませんが)
天橋立は、松枯れの対策もですが、植生の管理もしていますよ
と植物目線で、里山を語っていますが虫や鳥・獣目線で語るとまた切り口が変わってくるかもしれません。
投稿: 神戸のキコリ | 2009/05/02 00:20
マツが減退した理由は、間違いなくマツクイムシのためです。ただ、マツノザイセンチュウは、元気なマツではあまり繁殖しません。
枯れるのは、水分が足りないためとか菌根菌(主にマツタケ菌)がやられて弱ったためと考えられます。土壌の肥沃化もその一因でしょう。
一方、今はナラ枯れが進んでいます。カシノナガキクイムシの媒介する病原菌ラファエレア・クエルキーボラによる伝染病です。この菌の繁殖は、老齢木に多いです。コナラ絶滅の危機?は、この菌の影響もあります。
……ちょっと真面目に回答してしまいました。
投稿: 田中淳夫 | 2009/05/02 00:53