「あったらいいな」の設備
以前から感じていたことだが、補助金で作られた施設・設備は、無駄に立派だ。
その施設・設備が必要だとするのは一応わかる。だから補助対象にもなったのだろう。が、こんなに立派にする必要があったの? と思える場合が多々ある。
機械類は最新で、使い勝手のよい設備なのかもしれないが、厳密にコスト計算すると、設備ほどには利益率が上がっていないことがままある。
これは経験則でもあるが、他人の金(補助金)を使えるとなると、どうしても財布がゆるむ。限度額いっぱい使おうとする。この際だからと、欲しいものはなんでも手に入れたくなる。現在の事業に必要な設備と、「あったらいいな」の設備は違うのに、区別しなくなってしまうのだ。
これは採択する側の問題でもあって、限度額までなら鷹揚なのだ。こちらが節約する提案をしても、好まれない。出した金は全部使ってくれ、と言わんばかりだ。
以前、大手の製材会社を訪ねて、その工場を見せてもらうと、ビニールハウスがあったので驚いた。その中に機材や製品が並んでいるのだ。つまり、ビニールハウス工場。
それは、単に買収した敷地にあったものを再利用しているのだという。さらに、やたら天井が低い工場もあったが、これは靴工場を買収して、そのまま使っているのだそうだ。製材工場にありがちな、巨大で天井の高い空間はない。
その会社には、規模の割りには事務所も小さく社長室だってなかった。
コンサルタントは、この点を高く評価していた。設備を無駄なく活かして、同時に無意味な設備も作っていないからである。そのコンサルに言わせると、看板とか社長室が必要以上に豪華なところは、事業体として危ないのだそうだ(^^;)。それを経営診断の材料にするという。
バブル崩壊に続いての金融危機である。日本の経営者にとっては、よい勉強の時期が続いている。無駄に気づいて、いかに削れるかが生き残りの鍵だ。オーバースペックを抱えることは、「大は小を兼ねる」とはならず、設備が大きく・多くなれば、維持管理の支出も増えるだろう。それは経営上の重荷となり危険なのである。
ところが、一度ゆるんだ財布は、なかなか締められない。世間は不況でも、自分のビジネス環境はそんなに悪くないと思い込んで緩めたまま支出する。「あったらいいな」の気分のまま、不急の投資をしてしまう。そんなところからは、早めに逃げ出した方がいいよ。
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こんばんは。いつも拝見させていただいてます。
うちの森林組合もそうですね。
合理化のために合併したはずなのに、あっちにもこっちにも組合長室を作る組合長。
新規事業立ち上げのために、とにかくプロセッサーとか重機購入ばっかり優先させる参事理事。
偉いさんたちはぜんぜん職員の言うことに耳を貸してくれないのです。
こんな人たちには付き合ってられない、とは思うのですが、なかなか逃げ出すタイミングが掴めなくて...
このご時世ですから、少なくても安定した給与はやっぱり魅力的なんですよね。
それから、田舎暮らしも魅力的。今さら、都会の生活には戻れないのです...
投稿: はいいろととろ | 2009/05/22 21:51
人は、常々目先のことしか考えないものです(笑)。隣の家に火がついても、自分のところは安泰と思いがち……いや、思おうとしてしまう。
いえ、それは都会でも田舎でも一緒ですけど。
火が燃え移ってからは、逃げられないだろうなあ。
投稿: 田中淳夫 | 2009/05/23 14:49