東洋経済の林業記事
森林公有化論を掲載した日経ビジネス・オンラインに対抗して、ということではあるまいが、今度は
「東洋経済」オンラインに
豊富な森林資源を生かす林業政策を、自立を促すインフラ整備が重要
という林業記事が掲載された。
「週刊東洋経済」本誌では、以前に農業のことを取り上げていて、あまりにつまらなかったので立ち読みで終えた(^^;)という経験があるのだが、今度は……。
執筆者は、週刊東洋経済の小長洋子記者。どんな専門分野を扱っているのかはわからないが、林業に造詣が深い、ということではなさそうだ。
が、なかなか読ませるのである。前半は、まあ、林業の現況のおさらい。ヨーロッパとの比較や歴史的な流れを押さえている。とくにパルプの視点が入っているのは珍しいかもしれない。実は、日本の木材自給率を語る際に、製紙用パルプは結構大きなシェアなのだが、一般には忘れられがち。だからその点に触れるのは重要だ。
加えて、零細問題にも触れ、公有化論や利用権分離論にも一言付け加えている。
「零細な所有者については、エリアごとに自治体などが借り上げる、あるいは利用権を株式化して収益が上がれば配当する、というアイデアを持つ関係者もいるが、なかなか実現に結びつかないという。」
そして、いよいよ今後の方策という点では、林道問題と流通問題を大きく指摘している。
「流通網の未整備も大きな問題だ。大口需要家と直接契約しないかぎり、販売するには地元の原木市場を通すが、どこにどんな木材があるのか、といった情報は外部から取ることができない。ネットワークがないからだ。野ざらしのまま劣化してしまえば低質材として燃料などにするしかない。」
「林道の敷設も、何も最初からふもとから山頂まで一気通貫する必要はない。利用しやすく資源量も豊富な緩斜面エリアから、必要に応じて延伸していけばいい。」
「ただし林道の整備には、生活道や観光道路などへの転用を制限し、純粋に林業の発展に資する、という厳しい条件も必要だろう。」
結論としては、
補助金の一部でもインフラ投資に振り向け、育成林の20%を活性化するだけで、国産材の利用率は倍増する。
しかし、
「近代的な経営手法を取り入れた仕組み作りは、市町村単位の手に負える話ではない。国家行政の仕事だろう。インフラが整い収益化の可能性が見えてくれば、民間資本の参入も期待できる。」
概して、納得のいける論説だ。素人は、すぐに公有化論などに飛びつきがちなのだが、国家のできる範囲とやるべき分野をしっかり押さえている。
おそらくこれは、小長記者が林業に詳しいというより、よい取材相手を見つけたということではないだろうか。もちろん、そうした解説者を見つける勘も記者の能力のうちなので、大いに能力を買う。何らかの嗅覚が働いたのだろうか。
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