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森と林業と動物の本

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2009/07/14

商品市場の変化を考える

女子大生・木材商品会議に向けての、思考トレーニング

そこで思い出したのが、以前聞いた「市場の移り変わり」論だ。

日本のような先進国の市場は、単にモノの売り買いだけではなくなっている。

ちょうどテレビドラマ「官僚たちの夏」で、昭和30年代の国産自動車やテレビの開発の状況が描かれているが、それも参考になる。

まず、当初は売り手市場だ。ものが足りない状況。発展途上国型と言えるかもしれない。その場合に必要なのは、供給量を増加させることである。
車なら、まず自動車自体を製造して世に出すことが重要だ。輸入することも考えられる。ちゃんと安定供給されることが重要だ。すると、どうしてもほしい人が高くても買う。
実は、木材に関しては、昭和30~40年代がそれに当たる。とにかく木材不足だった。住宅だけでなく、さまざまな建築資材としての木材が求められた。だから外材も輸入したし、国産材も品質無視で供給された。

次に品質競争。当たり前だが、単に自動車、あるいは木材であればいいのではない。さすがに欠陥品はマズいことに気づく。自動車ならちゃんと走ることが重要だ。故障が多くても困る。木材も正確な寸法や強度が求められる。
もちろん自動車はこの点をクリアした。が、現在の国産材市場は、まだこの段階も完全にクリアしていない。

やがて訪れるのが、コスト競争。ちゃんと走る車が、必要量供給されることを前提に、安いものが売れる。木材も同じ品質なら安い方がよい。だから円高で価格がどんどん安くなった外材も喜ばれた。そのうえ品質も輸入商社が検査して確保した。国産材の価格は、その後下落を続けて安くなったが、品質とのバランスで、いまだ足踏みを続けている。

そして、安定供給され、品質も価格も十分になってくると、プラスαが求められてくる。
現在の自動車は、安全性を高めるためABSやエアバックを装備したり、衝突安全ボディを売り物にしている。カーナビ標準装備を掲げるところも現れた。
この点に関しては、木材は出る幕が少ないが、ツルツルに表面をモルダー加工したり、色合い無節、木目などを強調するのは、この一つか。表面の圧密加工とか、防腐剤注入材もある。これは高級材としての分野としてみると、すでに先に進んだ。ある意味、過去の木材市場は、この部分が肥大化してしまったのではないか。一部の林業地は、品質競争を抜きにして、このプラスαに走ってしまった

最後に、成熟市場が訪れると、もはや製品自体の性能では差がつかなくなる。
そこでトータル競争の時代が訪れている。具体的には、企業イメージだ。どんな立派な自動車を安く開発しても、その自動車会社が贈賄事件に絡んだり、派遣切りを率先してやれば、イメージは降下する。社長、社員のモラルも問われる。
だから自動車も、CMでは「家族団欒」とか「スポーティな走り、乗り心地」などを売り出すしかないし、企業も社会貢献を考え出す。環境のことを考えて植林します、なんてのは、その一つだ。
こちらは、木材-林業界にとって何ができるだろうか。もともと森林は環境に密接しているのだから、もっとも売り出したいものなのだが、現実には森林伐採のイメージを持たれてしまった。そこで合法証明を付ける、FSCやSGECなど森林認証制度や木材認証制度で、環境負荷度や品質保証、行われている。トレーサビリティも、その一つだろうか。

さて、この展開の中で、何が求められ、どんな商品が作られるべきだろうか。

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木製品・木造建築」カテゴリの記事

コメント

やはり、これからの時代は、安全で安心できる製品が求められてくるでしょう。

その意味で、FSCやSGECなど森林認証制度や木材認証制度で環境負荷度や品質保証が行われている製品でなければ売れないでしょう。
また、トレーサビリティも大切ですね。

ただ、これらは必要条件であり十分条件ではないことに注意して下さい。
やはり、他にはないデザインや機能性もないと購入意欲がでないと思います。
安ければいい、なら百均ですが、そうではなくてう〜ん、やっぱり良いよな〜、と言える商品を作り出す必要があります。

そのためには、材の特性、地域の特性、使う側の視点、ユニバーサルなデザイン(障害者だけでなく健常者でも使いやすさ)、そして今までにない製品、欲しくなるような製品等です。

つまり、感性が高い、女性の視点、男性の視点、中高年の視点など様々な視点からのアプローチが必要となります。

商業ベースではない、デザイナーがこれが良いという物を売りつけるのではなくて、消費者の要望に応える商品をデザインできるデザイナーが求められています。

新しい時代には新しい製品が求められます。
昔そういえばこんなのあったなあ、という製品でも新素材で作り上げれば斬新なアイデアとなります。

さあ、皆さん女子大生と感性を高め合いましょう!それも女子大で、みんな仲良くしブレインストーミングしませんか?

やはり最後の「女子大生と感性を高め合いましょう」が、胆ですね(笑)。

商品開発にも、いろいろありますが、目的は「山を、森をよくすること」。そのためには、作家作品ではなく、比較的誰でも作れて、でもキラリとアイデアと感性が光る品にしなければなりません。智恵の絞りがいがありますぞ。

こんばんは

新商品の開発も良いのですが、既存製品の改良ってのは、今回のプロジェクトには含まれないのでしょうか?このエントリーの内容で言えば、「品質競争」の部分ですね。

例えば内装仕上げ材として、国産のフローリングの厚みは15mmが多いのですが、輸入品は20mm前後の厚みがあります。国産でも一部に30mm厚の杉フローリングがありますが、価格で消費者に受け入れられず、施工業業者も15mmで慣れてしまっているのか、なんだかんだと15mm厚を押し通します。
しかしながら、15mmよりも20mmの方が消費者の購買意欲を刺激するのなら、20mm厚のフローリングを改発する価値はあると思うんですね。
この辺りも、議題に取り上げていただけたらと思います。

最初に挙げるべきは、含水率かもしれませんよ。
国産材は、生木とまでは行かなくても半生が多いですが外材は、乾燥機にかけていて乾いているのが多かったと記憶しているのですがいかがですか。

吉野の材木屋さんも乾燥機を欲しがってましたよ。

M森林組合のモールド材は節もデザインだと埋め木をしてバランスとっていたりしてますね。

もちろん改良も歓迎ですよ。
すでに書いた通り、国産材業界は、品質競争という、かなり前段階でつまずいていますから、それを改良する余地はたっぷりあります。

ただ女子大生を交えて専門的な建築上の材の厚さを変えた商品を考えるより、「生木で作るとオモシロイ!」商品を考える方が楽しそう……(^o^)。

こんばんは

えっとですね、フローリングや羽目板の厚みの見直しは、製材業者に「ガツン」と消費者の意向を伝えるってのが主眼なんです。
将来、財布の紐を握るであろう、「女子大生」の意見が、最も反映し易いんぢゃないなかと、思うんですね。
極端な事を言えば、「化粧合板の方が良い」なんて、意見が大勢を占めても面白いかなと。

なるほど、「ガツン!と」ですね(^0^*。
具体的な材を見て、その厚さはどう思うか「女子大生の感性」のデータを取るとオモシロイかもしれませんね。

本当に、内装を合板むき出しで使っている家ありました。いわゆるベニヤの表面をそのまま内装にしています。家主は、それが木材たっぷりでイイと言っていたな。

実は、昨年末に女子大生5名を引率して飫肥杉ツアー日南市に出かけました。船中2泊で4泊5日。
最後の日に、日南市の工務店が建設したばかりの新築の家を見学させて頂きました。

なんと!そこの家の床板は、飫肥杉30ミリでした!!
厚みがあり、断熱効果があり、参加した女子大生は感激してました。
「私も、こんな家が欲しい!!」と叫んでましたよ。

ガツン!
と、いうにはこのように女子大生の感性を大切にしてほしいものですね!

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