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森と林業と田舎の本

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2009/07/23

Satoyamaイニシアティブ

たまには「思いつき」ではない、硬めの話題も。

Satoyamaイニシアティブ」 というのを、ご存じだろうか。

環境省などが進めているもので、人が関与した2次的自然、いわゆる里地里山の重要性を世界に訴える動きだ。里山の自然の持続的な利用は、生物多様性の保全と両立できるとし、、自然共生社会のモデルになるべきものと位置づけている。
環境省では、国連大学高等研究所と連携して、人と自然が共生する地域社会を実現していくための国際的なパートナーシップとして、来年度に名古屋で開かれるCOP10の場において「Satoyamaイニシアティブ」を提案する予定である。

国際的な枠組みづくりとしてのイニシアティブ構想は、我が国の里地里山に見られるような景観や土地利用における持続可能な自然資源の利用と管理に関する情報を、収集するとともに共有することをめざす。そして世界的に推進されることを期待するという。

すでに日本の里地里山のような二次的自然の重要性については、参加各国から一定の合意が得られた。そして持続的利用の重要なポイントとして、生態系サービスの評価、自然の保全と人間の福利を両立させること、利害関係者の参画などが指摘されている。

今回のイニシアティブは、日本の里山を世界に売り出そうという構想? と理解してよいのだろうか。これまでの自然保護の潮流は、どうしても原生自然に目を向けがちだった。しかし、人類と自然の共存共栄を考えると、里山こそモデルになる。

私は常々、日本の里山は、珍しいほどうまくできた自然だと思っている。人が自然からさまざまな産物や利益を得つつ、自然も生物多様性などをよりよく達成しているのだ。そこには一方が得をすると他者が損をするというゼロサムゲームとは違った構造がある。
しかも何も事前に精緻な設計をしたわけではなく、あくまで人間が農業を通じて手を尽くしてきた結果として、うまく自然と人間の利益がかみ合っている。あえて言えば、自然界の大いなる意志があったかのように。

他の国の自然に、こうした例があることを私は知らない。部分的に東南アジアの田園地帯や農家の果樹林を中心とした共有林・あるいは庭、またイギリスの放牧地を囲むブッシュとかが近いとは思うが、精緻さと地域的広がりでは、日本の里山の方が上だろう。たとえば日本の里山は、森林(雑木林)だけでなく人工林も竹林も包含しているし、農地と森林、草地と水辺゛といったつながりが見える。さらに文化的装置(宗教施設など)も多い。

(もちろん、今後新たな里山的環境の発見報告があることを望む。)

私は、林業地そのものを里山にすべきだと思っている。木材だけでなく、多くの林産物を人工林内で生産し、人間側の利益が増すと同時に、生物多様性が高くなる施業をめざすのだ。それは景観もよくすることにもつながる。森づくりの歴史を文化として前面に出す。それらを全部含めて環境教育の場に人工林を利用する。人工林と天然林の違いが出なくなるかもしれない。

とはいえ、現在の日本の里山が、そんな理想的な状態かどうかは、はなはだ疑問。むしろ森林環境を悪化させ、里山から離れていく人工林が増えているような気がする。

森林の理想化モデルづくりにもイニシアティブを発揮してほしい。

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

COP10・・・愛知県は名称だけはPRしています
が、内容はちっとも県民に届いておりません(爆)
田中さんがこうして記事にしていただけなければ本当
に判りませんでした(^^;)
まあ、愛知県には他の県にはある「月刊広報誌」(
各家庭に配布される物。例:和歌山の県民の友)も
ないし、情報公開、情報発信が低いので・・・
半分県の広報誌みたいな「中日新聞」でもあまり
COP10は話題になっていませんからね~
なので、イニシアティブとかとれるのか・・・期待が
出来ません・・・(^^;)
(まあ、愛知県は基本「環境より産業、開発」です
ので・・・はあ~(^^;))

COP10なんて、国民のほとんどが知らないでしょうねえ~。そもそも政府も(どの政府だろ? 次の政権は?)誘致して何を達成しようと考えているのかどうか。

むしろ、ほかに目玉がなく、里山くらいしか世界に訴えるネタがなかったのかも、なんて考えると暗くなるなあ(笑)。

里山しかないのではなくて、里山こそが目玉です。

SATOYAMAは、世界に売り出せる商品ですよ!!

頑張りましょう!!

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