梅雨が明けたと思えば台風の悪天候が続き、ようやく夏らしくなったかと思えば、立秋。早くも夜には涼やかな風が吹く。昨日は、お盆に終戦記念日ということで、世界平和を願って拙ブログもお休み……なんてことではなく、単に忘れていただけ(^o^)。
以前、森林療法創始者である上原巖氏が、NPO法人日本森林療法協会の理事長を退任したことを知らせた。上原氏は、その後、新たな森林療法を普及するための団体として、 「みんなの森」を立ち上げている。
そのホームページは、次の通り。
http://www.geocities.jp/ueharaiwao/
なぜ、協会を退任したのか、新たな運動体を設立したのかについては、はっきりと語っているわけではないが、よく読むとわかってきた。
「みんなの森」では、それぞれの地域にある森林・山林での活動や休養を通して、森林と人とのコミュニケーション、人と人のコミュニケーションがより良い形で取れる時間が過ごせるような機会と場を作っていきます。森林療法もこの中に含まれます。
また、現在の長期の不況のもと、森林療法に関心があったり、興味がありながらも、様々な会の入会金や研究会、体験会の費用を払うことができない方も世の中には大勢見えます。 けれども、必ずしもお金を支払わなければ森林での保健休養や森林療法はできないというものではなく、また、特定の団体に属している人だけがそれらを享受できる資格や特権があるわけではありません。
もちろんある程度の団体の組織運営を行うには、お金を集めることは必要なことだと思います。 しかしながら、そのような営利や事業拡大のような路線は選択せず、どなたでも広く市民が心のよりどころとなるような機会と場を、できる範囲でささやかながら作っていきたいと思います。
(中略)
自分の身の丈にあった森林療法の活動の原点にもう1度はじめから戻ろうと思っています。そして、ずっと前から自分を必要として待っていてくれた森や、また多忙な毎日の中で置き去りにしてしまっていた森、人々のところに帰ろうと思います。
やはり森林療法協会では、路線対立があったようだ。辞任したのは理事長である彼一人ではなく、全部で6人の理事も一斉に退任しているのだから。
その対立は、大雑把に言って「着実推進派」と「事業展開派」だそうだ。
一つのテーマを、理念を大切に内実の充実を図ることを重視する考え方と、規模の拡張をめざす考え方の差である。
その点を次のように記す。
地域の森林で、地道で、素晴らしい実践を積み重ねていらっしゃる方もいれば、いちはやく事業・営利としての展開をはかりたい方、広告・顕示も含め、ご自身のアイデンティティとしたい方、すでに「森林療法」が生業として必要な方も中にはおみえのことでしょう。
わかるなあ。私も、各所で同じことを感じているもの。
別に理念を重視すればよいというわけではない。理念とは、何も理想論だとも思わない。むしろ広く目的を達するために必要なものだ。目的と言ってもよい。 しかし、事業ばかりに目を向けると、本質から離れてしまう。
たとえば日本の森林を美しくしたい、という理念(目的)のために、林業振興を行うとしよう。これは手段だ。新しい考え方の施業や商品開発を行う。そして、その方法を広く世間に知らしめて、みんなで林業を活性化すれば結果として森林が美しくなる…… 。
ところが往々にして、振興事業そのものが目的と化してしまう。自らの事業の拡大をめざして、他の林業事業体あるいは林業地を敵対視したり、自らの利潤を上げるために、本来の「日本の森林を美しくする」という目的をないがしろにする。
売れる商品を作り出したら、その作り方を囲い込んで他者に教えない、国産材を使って作るはずが、より安い外材に替えて、製作も中国に下請けに出せば、より儲かる……なんてことを考えてしまう。また事業体の施設や規模の拡大を望む傾向もあるようだ。あるいは関係者が、自己の肩書として利用する動きもある。いわば自らの満足を得るための事業展開になってしまうのである。
ともあれ、森林療法にも、さまざまな流派? 教義? ノウハウ? を持つところが現れて、分散し始めたのだろう。すでに森林療法から森林セラピーという狭義のカテゴリーができて、、それに属さぬ森林療法団体が登場していたが、さらに違った考え方を元に、その中でも分かれ始めたことになるだろうか。
これは、どんな世界でも起こることだ。すでにチェンソーアートの世界で、これが進行している。もはや地域づくりの手段としてのチェンソーアートを唱えても、誰もあまり耳を貸してくれない(~_~;)。完全な趣味あるいはビジネス、さらに芸術、自己実現、事業欲の元に拡散してしまっている。 こうした段階を経て、ポピュラーな業界になっていくのだろうけど。
しかし、森林療法界は早い。私は、もう少し後(数年後)に始まると思っていた。これでは拙著『森を歩く 森林セラピーへのいざない』の内容があっという間に古くなるじゃないか(苦笑)。
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