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森と林業と動物の本

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2009/08/02

時代遅れの学問

昨日の合コン、もとい……(しつこい)女子大生木材商品開発会議のこぼれ話。

女子大生参加者の中には、林学系の学科出身者も何人かいた。彼女らに、私は「なぜ森林ジャーナリストになったのか」と問われたのだが、その答として「私は森林学をやりたくて林学科に入ったのだが、林学科は林業学を教わる場であったこと、それで意気消沈してマスコミに進路を変えたこと……」などを語った。

ところが、彼女らは最初から林業をめざしていたというのだ。ところが、入学してわかったのは、今や大学では林業を教える部分は縮小していて、森林学にシフトしているというのだ。それが不満でサークルや学外組織に加入する形で林業に触れているという。また学科の3分の1は女性であるとか。

これはちょっとショックだった。

私が学生の時代、世間は森林生態学に注目が集まり、私のような森林学をしたい学生は少なくなかったと思う。ところが大学は時代遅れ?の林業学を相変わらず教えていた。
それからン十年、ようやく世間は林業という産業学から脱皮して、自然学系へと舵を切った。学科名も林学から森林科学ナンタラ学科と変えたところが多い。ところが、その時代に女子学生が自然学問よりも、林業という産業社会へと興味を移しつつあるのだ。

若い女性は時代の先端部への感度が高いという説を取り入れれば、まさに時代は林業なのに、大学は時代遅れ?の学問を提供していることになる。
本来、林業系の研究機関であるはずの森林総研も、今や林業に役立つ学問から遊離して、純粋学問へと傾斜してしまっているし、林野庁さえ林業とは距離を置き、里山だとか森林セラピーに飛びつく人が増えているが、いまに時代に置いてきぼりにされるだろう。

ところで学生の中には、某林野庁への就職を考えている人もいた。そこで林野庁について意見を求められたので、私は正直に(^^;)思うところを語ったが、ため息を付いていた。その人も、実際に職員に接触して、同じ感想を持っていたらしい。

私の意見としては、せっかくだから勤めて、内部情報を私にチクッてくれるのが、一番うれしい(笑)と伝えた。

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

田中さんこんにちは。
以前,森林美学についてのコメントを書かせていただいたものです。その節は,ご返答くださり,ありがとうございました。
女子大生の方々を含めた有意義な会議の滑り出しがよさそうで,なんとなく嬉しく感じています。
京都女子大は,私の母の母校で,なんとなく親近感も沸きます。

私の母校(地方の国立大学ですが)でも,林業に関係の深い講義はどんどん消失し,森林学(ともいえないものw?)がほとんどを占めているそうです。しかし,日記にも書かれているとおり,最近の後輩たちは林業を目指してかなり入学してくるようで,実際の講義の時間割を見てはため息をついています。
そして,日記の女子学生の方々と同様,自分たちで施業サークルを作って,地元の山や,大学の森を育てています。女子学生も半分くらいいるようです。頼もしいなあと思いながら,後輩たちのやる気の行く末を密かに心配しています。

母校でも,林学の現実は田中さんがご指摘されたように,世の中動きから置いてきぼりの状態のようです。林業の研究では,論文を沢山書けない,通らないことがその理由のひとつだと聞きました。
この理由の良し悪しを語るつもりはありませんが,古い林学を学んできた自分にとって,林業を支える林学の基礎は,研究者にとっても大事なのではないかなあと思うのです。

おっしゃるとおりですね。

大学の教員が出来上がるには、5年から10年はかかりますから、どうしても時代とずれてしまします。

特に、女性の進学理由は学問がしたいというよりは、卒業後の就職を頭に描いて入学してくる方がおおくなってますね。

いま、全国の農学部には女子大生が増えていますが、社会で役立つ林業は教えていません。
そのような、実践的な教育は、岐阜県にある大学?等に入学しないと身に付きませんね。

同様なことは、工学部でもみられ、設計図は掛けるが、日本建築や木のことは全く知らない設計者がほとんどです。

日本の大学や大学院の抱えている大きな問題ですが、研究論文を出す事で業績になる仕組みなので、改善はなかなか無理でしょう。

つまり、大学等行かないで現場で働くのが一番夫手っ取り早いのかも知れませんね。

田中さま
戦後、日本のエネルギーを担うのだと大学の鉱山学部の学生が、炭鉱の会社に就職していきました。最近は、世界経済の一翼をと証券会社や銀行を目指したことを記憶しています。
学業もできるエリートだったと思います。その時代にはその時代の花形があるのは、当然でしょうが、華はいずれは、散るのです。今の大学には、学生集めの学部や学科があるように思います。

時代を先取りする感性を持ったデザイナーや建築家が木材に注目し始めています。多くの人が気付いた時(ブーム)には、更に別なものに視点を変えると思いますが、見極めるには、良い時期になると思いますよ。

しかし、教育は一過性の、流行を追うモノではないと思います。腰のすえた、教育を日本の大学にも願っています。

しかし、教育は一過性の、流行を追うモノではないと思います。腰のすえた、教育を日本の大学にも願っています。

という、海杉さんのコメントは大切ですが、今や全国の大学の46%が定員割れですから、そんなカッコいい事を言っておれる、というかしている大学は数が少ないと思いますよ。

各大学は、あの東大でさえ学生確保に必死です。少子化が続くと、一番大きな影響を受ける業界が教育界でしょう!!

もちろん、私は生命教育+環境教育=生命環境教育を20年前から実践しておりますが、最近の学生には、環境問題に関心がある学生が増えております。

一般に、女性の方が感性が高いですから、これからは正に女性の感性を生かした製品が売れるではと、素人ながら思います。
木材業界やデザイナー業界など、いままでは男性が牛耳ってましたから、これからは女性の活躍できる場面が増えてくるでしょうね。

いかがですか?

この項目に、これほど意見が出るとは思いませんでした。自分のことを振り返ると、林学に進みたいと言い出した時は、両親はおろか担任も含めてみんな反対しました。林学=林業を斜陽産業と見ていたからです。
私は就職を考えて選んだわけではありませんが、結果的に斜陽産業の応援団についてしまった。しかし、時代は今や林業に注目しつつある。周回遅れがトップランナーになれるかもしれません(笑)。

大学は、そうした隠れた時代の要請に応えられるか、正念場でしょうね。

去年の冬からよくのぞかせてもらっています。コメントははじめましてです。

林業には比較的最近興味がでてきたので、林学・森林科学科などに行けばよかったなぁと考えていたところ、もともと職業のために大学を選んだのではないのですが、この記事を見て少しがっかりしてしまいました。

同時に林業を知るには自学、学外での活動が必要なのは森林系の学科も同じなのがわかって少し安心もしましたが笑

私も、進路の一つとしてですが林野庁を考えているので、いつか田中さんにいろいろチクれる様な人になりたいです笑

どんな分野であっても、大学で勉強した内容なんぞは、実社会ではほとんど役に立たないのです。ただ勉強の仕方を身につける、問題の対処の仕方を練習する効果があると思います。

技術系官庁だった林野庁も、いまや事務系が幅を利かせているそうです(^^;)から、文系男子も期待できますよ。
早く出世して、チクッてください(笑)。

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