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森と林業と田舎の本

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2009/08/22

原始クナイプ療法

先日の山村視察の一団に、クナイプ療法の専門家がいた。

クナイプ療法を、森林療法の原型のように思っている人がいるが、基本的に、というか全く別物である。上原巖氏が後に森林療法と名付ける森林散策の研究をするために、たまたま訪れたドイツのバート・ヴェリィスホーフェンがクナイプ療法発祥の地であり、たまたま森林散策がクナイプ療法の運動療法の一部として取り込まれていたから、勘違いが起きた。
本当のクナイプ療法は、主に水療法。そして運動は、ゴルフでもテニスでもいいのだよ。森林散策は、クナイプ療法というより、近代を迎えた中欧に広がったワンダーフォーゲルや、ワンデルン・シューレの流れを汲んでいると、私は思う。(詳しくは、拙著『森を歩く 森林セラピーへのいざない』を参考

なお公的機関が主催した「森林療法の本場を訪ねる旅」というヨーロッパツアーでは、「金返せ!」という声が出たという(笑)。ま、森林療法をマジメに考えていない機関が森林療法の窓口になったゆえの企画だからだろう。

ところで、視察した某山村でクナイプ療法に絡んだツアーはできるか、という問いかけには、設備がないから無理とのことだった。ただし、クナイプ神父が試みた当初の療法は、川辺などで行う原始的なものだったらしい。そこで「原始クナイプ療法を体験してみませんか」というツアーなら可能かも、という話になった。

その話に興味を持って、クナイプ療法事始めを少し調べてみた。すると、なかなか凄まじい代物だった。

                                                           

今から約150年前に、カソリック神父(の学生)だったカプラン・セバスチャン・クナイプは、アルゴイ地方で、自分で考えた妙な療法を地元の人々に施していた。彼自身が患った結核を治すために考案し、治療に成功した方法である。
だがクナイプは、現地の医師、薬剤師、そしてカソリックの信者たちから「エセ医療」を行っていると訴えられた。教会本部は、幾度も注意したが止めないため、彼をバート・ヴェリィスホーフェン村の修道院へ異動させた。まあ、左遷ですな。

そこでは農業を研究するように命じられたのだが、彼はそこでも民間療法を実施した。

その中身はスゴイ。病気が結核であろうがコレラであろうが、基本は冷水を体に浴びせることだ。また小川の冷水に足や手をつけさせる。冷水で痺れてくると外に出て、温水を浴び、さらに冷水……。ホースやバケツで体のアチコチに水を浴びせることもする。いずれも症状に合わせた処方を行って行うものだ。
そのほか冷水や温水で濡らしたタオル、あるいは蒸しタオルを患部に巻きつけることもする。真冬のドナウ川に飛び込ませたり、体が動かなくなった老人に薪割りをさせたり、農地を耕すよう命じることもあった。さらに修道院では薬草を栽培させ、ハーブティーを作って飲ませることも行った。

ようするに水と薬草、そして運動を組み合わせた代替治療法なのである。

                                                         

どうしてこんな療法を思い付いたのか? どうやら根本は、神学校で読んだ神学書の一文「新鮮な水の治癒力」を信じた信仰の実践だったらしい。
宗教的行為が治療法の源流となれば、今ならカルト教団の怪しげな療法として指弾されるだろう。ライフスペースの成田ミイラ事件も、治療の一環として行われた結果だし、オウム真理教も温熱療法と称した独自の治療行為を行っていた。

ただ相手としたのは、医師にかかれない貧しい人々や、不治の病の患者だったことが、現代の宗教や金目当ての民間療法と一味違う。中南米で、貧民に安い東洋の鍼灸治療が広がっている事実と似ているかもしれない。

村には全国から時に1日に300人もの患者が訪れたというが、クナイプはそれぞれの症状に合わせて異なる処方を指示して治療に成功したらしい。おかげで村では、老若男女とも、足を濡らして裸足で歩いていた……と伝えられる。

結果的にクナイプは有名になり、今やドイツではクナイプ療法は認められている。そして科学的な研究も行われた。だから現代のクナイプ療法は、無茶はさせない。

ちなみに、某山村で原始的クナイプ療法を行うとしても、厳冬期の川に飛び込ませるわけには行かないなあ(笑)。

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森林療法・森林セラピー・木育」カテゴリの記事

コメント

うーん、変なモノを広めるのやめません?
 
ドイツは法的に保養を行うことが認められていて、自宅ではダメなので公認保養地にいくという習慣があるわけで、その一つになっているだけの話。日本風にいえば、温泉湯治を取ることが法的に認められていて、それ公認の場所として草津温泉があり、そこで時間湯に入るという程度の話。
 
温泉にはいる程度なら、湯あたりで済むからいいわけですけど、クナイプにはハーブ療法のようなものもあり、私はとてもおすすめできるようなものじゃないですね。クナイプ療法概略は以下のペーパーを読めばわかりますが、科学リテラシーある人なら、クナイプ療法自体もそうですが、この論文書いた方もちょっとわかっていないな、と思うはず。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006390055
 
自然は素晴らしい! というよくあるトンデモの典型。自然ほど危ないものはなく、そこをコントロールすることで、医学は発展してきているのですが、それを理解していないようです。水だって、許容用を超えて飲めば死ぬ、ということをわかっているのだろうか、と。ハーブなどはかなり危険なんですけどね。ハーブ療法およびそれを使った製品などのトラブルが絶えないので、英国保健省は法規制の検討をこの夏から始めています。
 
農薬にしても、今はモニタリングがしっかりされているので、むしろ、無農薬をうたっているほうがヤバイ、というのが、真面目に働いている人にとっての常識。毒性の強いストリキニーネを使うアホがいて、どうやらそんなことをしている人がたくさんいるらしい。
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20090730#p6
 
 
結局、毎日規則正しい生活をしましょう。食事はバランス良く、そして軽い適度な運動を・・・程度こと以上のものは、クナイプ療法にはないですよ。試しにPubMedをざっとあさりましたが、めぼしいものないです。クナイプ療法でひくと全体で24本しかなく、2000年に入ってから僅か3本で、内容あるものはなし。
 
カルトと比較してポジティブに紹介するような内容のものではないと思います。セラピー以降、あやうい薫りが漂いつつあるので、しっかりくれと応援コメント。

では

今日は暑いですね!
知り合いからこんな論文をいただきました。
「ドイツにおける健康関連分野での森林利用に関する研究」(URLはアブストラクト)
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/119/0/469/_pdf/-char/ja/

なかなか興味深い内容でした。田中さんの上記ご指摘とも親和性が高いと思います。
DAさんのご指摘も,自分自身が日頃うっすら感じていることが,多く書かれていました。

森林セラピーなどから受ける印象は,森林から受ける癒しに関して,あまりにも人々の期待が大きすぎること,それに乗じて森林による効用を過大評価しすぎていること,です。
「自然は素晴らしい! というよくあるトンデモの典型」の状態に,科学的な検証をする側も入り込んでしまっている事が問題なのだと思っています。

自然を楽しむ際,自然を感じる際に大切な,直感のような主体的,身体的な「暗黙知」の部分まで,「形式知化」でもってすべて科学的な推論によって数値や言語化使用としていることに無理があると思いますし,(怪しげな?)エビデンスを提示することになっているように感じます。(暗黙知を知るためには,従来の科学的推論の方法とはまた異なる方法が必要なようです。)

しかし,森林に入って気持ちがよくなったり,落ち着いたり,楽しくなったりする事自体は,実際に体験できる「真」の現象です。田中さんは,療法でもセラピーでもそれほどこだわりがないように感じます。ただ,森林に入った際の様々な「良さ」について語る際に,便宜的に言葉を用いている部分が大きいように見受けられます。あくまでこちら側の推測だけですので,もし違っていましたら,深謝いたします。
DAさんの主張には賛成する部分も多いです。しかしご指摘の
「カルトと比較してポジティブに紹介するような内容のものではないと思います。セラピー以降、あやうい薫りが漂いつつある」
というような恣意は,私は感じませんけれども,どうなのでしょうか?

私は、とくにクナイプ療法に思い入れはないので、擁護するつもりも応援するつもりもないですよ。かと言って、クナイプ療法が悪いとも思っていません。きわめて健全な代替療法ですよ。(創成期のクナイプ療法は別として(^^;)
科学的かどうかとか、やりすぎたら問題があるのは、鍼灸だって漢方だって、西洋医学でも同じです。また無農薬野菜が身体に悪い可能性が高いことは、拙著でも繰り返し触れています。


ちなみに私は、『森を歩く』を執筆の際に気をつけたのは、森林療法と森林セラピーの言葉の使い分けです。セラピーとなると厳然と違いが出てきますからね。(ようするに怪しげな利権と怪しげなエビデンス?が飛び交う) 
その代わり、森に入って気持ちいいことを説明する形容として「癒し」は多用しました(笑)。気分を説明し出すとキリがないので一言で済ませたかったから。

それでも自然、とくに森林の効用をあまりに過大評価する人が多いのは問題です。森は水を溜めるとか山崩れを防ぐとか酸素の供給源とか……。クナイプ療法も、それを指摘する材料の一つですね。

クナイプは健全ではないから突っ込みいれたわけですが。。。

先に紹介した五十嵐氏の論文には、
現在のドイツで行われている療法の紹介があり、
そこには以下の記述があります。

--------------------------
その目的は、効きの穏やかな副作用も
ほとんどない薬草を使用することで、
近代科学によって開発された効きも副作用も強い
化学薬品の使用を極力減らすことである。
--------------------------

これは現代の薬に対する無理解の証明。
このような見方をする人達が、ハーブに含まれている毒性を
正しく評価できるわけがないじゃないですかぁ。


しかし、まあ、ドイツは変なものを生みますね。
ホメオパシーもドイツ発ですし。

以下、おまけ。
http://transact.seesaa.net/article/125332057.html
現代科学の結晶の薬を否定し、団体を作り・・・
似てますねぇ。

まあ、100年もやっていて、
ろくなエビデンスないのですから終わっています。

田中様,DA様

今日,amazonで『森を歩く』を注文しました。
こういうブログでのやり取りをしていただくと,本を読むのもぐっと楽しくなりますね。
ありがとうございます♪

仮に論者に「現代の薬に対する無理解」があっても、現代のクナイプ療法に危険性とは関係ないですよ。カウンセリングしたうえで、水浴などすることで問題が生じるとは想像できない。鍼灸の方が危険性高いかも。いや、西洋医学の副作用の確率とどちらが高いか。
効能は、どうか知りませんけどね。

ともあれ、拙著が売れたことは有り難い\(^o^)/

◯◯療法に弱いのは、日本人が癒されたいという社会状況になってきたからか、あるいはドイツから来た療法ということで飛びつくのか知りませんが、とにかく理論的な香りが少しでもあると飛びつくんですな。

まあ、完全に科学的な証明がない、とかいうと心理的には面白くないので、森は体と心に優しい、とか、フィトンチッドがあるから体にいいとか、聞くとそう思いたくなるもんですね。

お金、肉体といった具体的なものよりも、精神的なもの、スピリチャルなものに惹かれるのは若者だけではないようですね。

都会生活に疲れた若者や熟年が、森に入ると身体のねじれが元に戻るんでしょうね。きっと!

セラピー、療法、どちらでも同じですよ。
その人の身心が癒されたら、それでいいわけです。
厳正な評価がある訳でもなく、またあったとしても、自分が気持いいと感じれば言い訳です。

まあ、大抵の日本人、いや外国人でも森の中をゆっくりと小1時間から2時間も歩くと、気分がすっきりします。

それで、いいのだ!
と言えませんか?


これからは森林療法でもなく、森林セラピーでもない「森林ウォーカーズ」として、広めます(^o^)。
でも、「森林ウォーカーズ療法」になってしまわないか……。

 私が最も気に入っているのは、山でサバの麹漬けを焼いて食うことです。
 山の講のお祭りはいつもそうです。
 私にとっては療養ですね!
 ウオーカーズのメニューに入れてください。

私は開山祭と閉山祭に,かしわ手を打っていると
気持ちが落ち着きます。
これは癒しで,しかも結構スピリチュアルですね(^^)
その後,「おかしらつき」と言う事で煮干をかじりながらお神酒をいただくときには,結構気持ちが高揚します(笑。
森≒山だとしたら,やっぱり神様とか宗教って不可避なのですね。
でも本当は敬虔なものなんですけどね。

そして確かに小一時間ほど歩くと気分がよくなります。

森林療法あり,ウォーカーズあり。
いろんなことが「あり」ではあるんですね。

そうか、みんな自分なりの「癒し」の儀式?を持っているんですね。毎夜、寝る前にする就眠儀式みたいなものかもしれない。(私の場合は、寝酒か(^^;)。

よし、その儀式を発見するセミナーを開こう!
そして、誰でも癒せるのです! 前向きに癒されましょう! それが自己啓発につながるのです!
……とすると、受講生がわんさかと(笑)。

はじめまして。
たまたま、私の書いた「ドイツにおける健康関連分野での森林利用に関する研究」が、
コメントに引用されていることを知りました。

上記のものは、森林学会での発表ですが、
後に、日本気象学会誌に
論文として発表しております。
もし、ご関心がおありでしたらご覧いただけましたら
幸いです。
http://www.jstage.jst.go.jp/article/seikisho/45/4/165/_pdf/-char/ja/

森好きさん、ありがとうございました。

こうした基礎的な「研究の状態」を知ることは、リテラシーにも役立ちます。
改めて森林とは、研究分野としても幅広く、未知の世界が広がっていますね。

お返事ありがとうございます。
こちらが元ネタです。
http://www.shinrin-instructor.org/ren06/m.htm
よろしければご覧ください。

なお、森林に行くことは場合によっては、
健康に良くないこともあり得ますので、
(ハチに刺されるとか花粉症とか)
効果とデメリットを明確化し、
安全に楽しめるガイドラインを
作りたいと思っております。

今後ともよろしくお願い申しあげます。

元ネタ、パラパラと読みました。すでに2004年から取り組んでいるんですね。
これは貴重な情報源です。ありがとうございました。

森林療法や森林セラピーは、残念なことに取り組む人によっては変な方向(オカルトとか、金儲けとか)に行きやすい性質がありますから、しっかり研究成果を還元してください。

> しっかり研究成果を還元してください
お励まし、ありがとうございます。
一般向けには森林インストラクターのHPが唯一の場所になっておりますが、それも更新していないので、もう少し、気合を入れなくては!と思いました。

> オカルトとか、金儲けとか
ご心配頂き、ありがとうございます。
でも、大学におりますとそのようなことはあまり無いかと思っております。
オカルトに走れば、職がなくなりますし、また、大学に在職しながらお金儲けができるのはお金儲けの才能がかなりある方かと(笑)。
それはそれですごいです!

> 森林療法や森林セラピーは、
なお、私のしていることは森林療法・森林セラピーと言える程のものではなく、森林浴と思っております。
療法・セラピーという語は、一般的には医療行為以外のことも含む
広義の意味で使われていると思いますが、医学領域では、医療従事者による治療という狭義の意味で使われております。

私のいるところでは、療法・セラピーは後者の意味合いで使われており、医療従事者ではない私が治療・セラピーをすることはできないので、私が一般の方向けに、健康増進や疾病予防のために歩きを
おススメしているのは、森林浴と思っております。

勿論、人によって、立場も違いますし、捕らえ方も違って、勿論OKと思っております。
(ただ、私のいる場所で、 私が療法・セラピーと言ってしまうと、
 問題が生じるので、あえて明確に森林浴と言っていると思っていただければ幸いです)

もしも、ご関心を持ってくださるようでしたら、こちらもどうぞ。

http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsrt/35/2/291/_pdf/-char/ja/

益々のご活躍をお祈りしております!

森林ウォーカーズは森林Walkersに展開していたのですね。私のブログでしっかり宣伝させていただきました。
昨日のメールで久しぶりに森林ジャーナリストの「思いつき」ブログを熟読しまして、いろいろなお話しを楽しませていただきました。

森林セラピーから森林ウォーカーズ、はたまた森林セラピー、森林療法、森の会話と私も次々と展開しました。次は森の対話でいこうかと。

現在は森林セラピストに合格していながらも、無料での森のご案内を浜松城公園で展開しています。森林セラピーソサエティからは、会員証が送られてきません。いきなり脱会となったらどうしましょう。

森林セラピー認定地以外での活動はご法度ですから。これから私の展開はどうしたらよいのでしょう?実は面白い構想があったりするのですが、腹を決めないと。

森林セラピーソサエティから除名されるまで、頑張りましょう(^o^)。除名されること自体が、世間に問題点を浮き彫りにさせる効果がありますよ。除名されたら「森林ソラピスト」を名乗るとか……なんか、中国製のバッタもん商品みたいだなぁ。

ちなみに好日山荘の「グッディ・リサーチ」の記事は、次号より山登り系にシフトします。

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