日米の「緑の雇用」
最近、新聞で「緑の雇用」という言葉が、散見される。ただし、国際面に、だ。
そう、こちらはアメリカのオバマ政権が打ち出した「グリーン・ニューディール政策」のこと。グリーン・ジョプとも呼んで、これを直訳すると「緑の雇用」になる。
と言っても、アメリカの緑の雇用は林業とは関係なく、環境政策であり、主にエネルギーに関することのようだ。太陽光や風力など自然エネルギーをもっと利用して環境産業を起こそうという意図である。そして、新たな環境産業の元に最大400万人の雇用を生み出す構想である。
それに対応するかのように日本の民主党も同じような環境政策を打ち出そうとしているようだが、こちらは「緑の内需」なんて呼び方をする。さすがに「緑の雇用」では、すでにある林業政策……というか、山村への移住をうながす研修事業と混乱するからだろうか。
もうすぐ発足する民主党政権の森林・林業政策は、まだはっきりしない。当面ウォッチングするつもりだが、大枠として自民党時代と劇的に変わることはなさそうだ。マニフェストにもあまり登場しないし、基本的な考え方が一緒に思える。
ただ、日本の従来の「緑の雇用」は、単に人を山里に送り込むだけで、山仕事を新たに作り出す効果は少なかった。補助金で当面の作業を作っても、旧態依然の失業対策に近い。それは何ら新たな産業になり得なかった。
移り住んだ人にとっても、研修受けても補助金が切れたら仕事はないのでは、やる気を削がれるし将来が見えない。となると、山里を去るしかない。無理して残ることでは「緑のワーキング・プア」を生み出したんじゃないか、とさえ思う。
真に必要なのは、新たな産業としての雇用を生み出すことではないのか。それがビジネスとして利益を生み出す構造ができたのなら、自然と移住者が集まるはず。順序が逆だ。その点からは、アメリカ側の発想の方が正しい。
だから、日本も「緑の雇用」は止めて、「緑の内需」に吸収させた方がよい。
たとえば、輸入に頼る農林産物を国産に切り換える手だてを進めることで、外貨を払わず国内に資金を落とさせる内需になる。
林業(森林産業)を健全な魅力あるビジネスにすることで、雇用を増やすのが、世界に通じるグリーン・ジョブだろう。
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