戸別所得補償と新規就農
次期政権を取った民主党のマニフェストにある、農家の戸別所得補償制度。
マニフェストでは、農業における農産物の販売価格と生産費の差額を基本として補償対象にするようだ。販売農家でなくてはいけない。酪農業、漁業に対しても、同じような制度を作るらしい。
この政策に関しては、やる気のある農家が育たないなどの批判や、小規模農家が生き残れるという期待が入り交じっているが、私は少し期待している。ただし、一般とは少し違う点からだ。それは、新規就農者からの視点だ。
まずわからないのは、新規就農希望者は対象になるのか、という点である。Iターンで田舎暮らしを始めようとする人は、その多くが農業を指向するが、果たして補償の対象になるのだろうか。また農協との関係も気になるところ。農協外へ出荷する農家を支えないと、何も新しいことは始まるまい。
もし対象に含まれれば、かなり希望となる。何と言っても、農業は初年度が大変だ。技術だけでなくインフラのない新規就農者にとって、赤字覚悟の出発となるからだ。そこに最低限の金額が補償されれば、とりあえず食っていけそうな気がする。それが参入する意欲に結びつくだろう。
もちろん農地取得など難しい点は別にたくさんあるが、本気で就農を考えている人の背を、一気に押すことにならないか。これは、想像以上に大きな影響を与える気がする。新規就農者が増えたら、否応なしに田舎は変化するだろう。
もっとも完全実施は2年後で、来年度は制度設計を行う移行期間だとする。ようするに、まだ何も制度としては決めていないということだ。だから細部は検証しようがない。早く全体像を示してほしい。
ところで林業に関しては、間伐等の森林整備を実施するために必要な費用を森林所有者に交付する「森林管理・環境保全直接支払い制度」を導入する、とある。だが、こちらは全額という意味だろうか。こちらは森林所有者だけが対象だろう。
しかし山主はたいてい別に仕事を持っていて収入は確保されている。本当に大変なのは、森林組合などの作業員である。彼らの多くは、日当制で、金額的にも低すぎる。こちらの戸別補償も考えるべきではないか。
« 白神のガイド | トップページ | 刊行! 『ゴルフ場は自然がいっぱい』 »
「地域・田舎暮らし」カテゴリの記事
- 道の駅と富雄丸山古墳(2024.12.05)
- 熊野古道の雲海の村(2024.12.03)
- 道の駅「なら歴史芸術文化村」(2024.11.30)
- 流行る田舎のパン屋の秘密(2024.07.11)
- “秘境”よりの帰還(2024.07.10)
いつかアイディアを出し合っていた時に、「山村に3年以上住む人間には一人毎月15万円を払う」という戸別補償ならぬ個人補償をしようではないか、という案が出ました。環境上の機能を増進するような仕事(森林保全とか、棚田の草取り、草刈りとか)とか道路沿いの草刈りなどに最低○○日従事すること、みたいな条件を付けておけば、業界に補助金を流すよりも効果はいろいろ上がるのではないでしょうか。
投稿: 沢畑 | 2009/09/03 20:44
戸別(あるいは個別)補償という考え方は、想像以上にインパクトがあると思います。
出し方はいろいろ考えられるけど、過疎地域を支える人材を育てる可能性に期待したいですね。
その代わり、効果を出せない人材には、冷たく当たるかも(^^;)。
投稿: 田中淳夫 | 2009/09/03 23:27