里山のCO2吸収量
昨日、京都で森林総合研究所関西支所の公開講演会があった。
ようするに関西支所の行っている研究発表会である。それが「里山の二酸化炭素吸収量をはかる」と題したもの。
森林総研と言っても、林野庁の外郭団体なのだから、林業の研究しろよ、と思わぬではないが(^^;)、ここでは悪態つかずにおこう。
私は南都銀行の座談会があったのだが、その前に少しだけ顔を出す。時間的には、最初の触り部分しか聞けず、肝心の部分まで居られなかったのだが、一つ勉強になった点がある。
森林の二酸化炭素吸収(光合成)と排出(つまり呼吸)について紹介している。呼吸は、夜の葉っぱや枝、幹などが行うものである。こちらは酸素を消費してCO2を出すから、光合成で吸収した分との差が問題となる。この点は、私も繰り返し執筆しているところだ。
一般的には、光合成量と呼吸量を比べると、大雑把ながら2対1くらいになるとされていた。ところが、ここでは1対0,85という数値が出ているらしい。つまり、光合成が固定した炭素の85%を呼吸で排出してしまっていることになる。
森林のCO2固定量は思いのほか小さいのである。
これに里山全体だったら、別の排出源もあるだろうし、あまり期待できないことになる。もっとも、土壌など、植物以外の炭素固定要因もあるのかもしれない。この点は、最後まで聞いていなかったからわからない。
政府は、今後CO225%削減に向けて、国際的には吸収源を管理された森林だけでなく、もっと幅を広げるべく国際交渉に向かうと想像している。その中で、里山の整備も課題に上がるかもしれないが……この数字だと、あまり期待できないか。
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私も出かけたかったんですが、いけませんでした。
森林の土壌からも、微生物の呼吸で思いのほか二酸化炭素が出ているようです。したがって、田中さんがおっしゃるように、森林による二酸化炭素の固定=吸収は思った程はないようです。
でも、間伐して天然更新させれば、新しい草木が繁茂してかなりの二酸化炭素が吸収できるのではないかと思われます。少なくとも最初の10年間、生長する草木が二酸化炭素を光合成で吸収して生長するわけですから。
問題は、間伐した木材をドンドン使うシステムを作り上げないと、切り捨て間伐となり、木材の分解でかえって二酸化炭素が発生するのではないかと考えられます。
間伐材で割箸を生産して、使う新しいビジネスがこれから注目されることでしょう。
投稿: 高桑進 | 2009/10/25 21:47
この発表の数字は、1本の木の計測データのはずです。つまり、1本の木が吸収・排出するCO2で、こんな数字が出たのだと思います。
ここに土壌微生物も加えたら、完全にプラスマイナスゼロ、もしかしたら排出の方が多いかもしれませんね。
間伐するにしても、伐るのは里山だから雑木だろうし、使い道は何か斬新なものを考えないといけませんね。
投稿: 田中淳夫 | 2009/10/25 23:53