家具メーカーのジレンマ
先日、東京に行った際に、家具メーカーの社長と会った。
現在の家具業界は、ニトリとイケアの一人勝ち(いや、二人勝ちか?)だそうである。というのも、世界同時大不況で、ひたすら安さが追求されているからだ。
その社長の会社の製造する家具は、かなり高級品に思えたが、それでも国際的には中程度らしい。が、やはり売れなくなったそうだ。売上半減とかいう。ちなみに世界的な最高級メーカーにいたっては、ほぼゼロレベルまで落ち込んでいるという。
もはや品質が高ければ、どんな不況時でも買ってくれるコアなファン、コアなマーケットがある、という時代ではなくなったらしい。段階的にレベルを下げる(最高級品を買っていた人が中級品に落とす)こともなく、一気にもっとも安い品に移ってしまうのである。
安いということは、利幅も小さいわけだが、それは大量に販売することでカバーできる。家具もそうしたビジネスモデルになろうとしているのか。
ところが、これは家具だけでなく、たとえばユニクロなどもそうだが、安い彼らの商品は、決して品質がそんなに悪いわけではない。値段の割にはいい、つまりコストパフォーマンスがよいわけだ。おかげで需要が集中するのだろう。だから、利益も確保できる。
では、そうした価格追求型ではないメーカーはどうすればよいか。大量販売型の商品でない業界はどうするべきか。(そもそも木材は大量販売品ではない。樹木の生長速度に縛られ、また耐久商品であることにも縛られ、安ければ多めに買っておこう、とはならない。ニトリの家具は、その点からは木製品でないと言える。)高くても品質がいい、では戦えないのだ。
社長は、そこに環境の視点を持ち込もうとしている。低価格・大量販売を指向すると、必ず環境にぶつかるはずだ。持続可能な森林から伐りだした木だけでは間に合わないし、加工も安さを求めて海外生産になる。
そうではない商品とは。そこで合法証明や産地認証・国産材……などをキーワードにするべく努力している。
その心意気、理念、努力、行動力と忍耐力(国産材業界とつきあうには、忍耐力が欠かせない ^^;)には敬意を表する。
が、私は一応クギをさしておいた。環境だけでも売れる時代ではない、と。
私の知っている限りだが、木材の世界に環境を持ち込む販売戦略はそれなりにあるが、成功例は少ない。環境はオマケにしかならず、やはり買いたくなるのは別の魅力が必要なのである。その一つがデザインであり、ドラマ性だと思う。
さて、今後のマーケットは何を指向するのか。木材に何を求めるのか。悩みは深い。
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田中さま
いつも 考えさせられる記事のUP有難うございます。
先日の「国産材はなぜ売れなかったか」を拝見し
私なりの考えさせられました。
全業種にわたって、家具業界と同じことが
起こっているのは事実ですね。
高いものか 安いものしか売れない時代。
バブル崩壊後の所得格差が問題なのだと
私なりに考えていますが...
住宅も車と同様 買い替えの時代に入っているようにも思います。
>今後のマーケットは何を指向するのか。
>木材に何を求めるのか。悩みは深い。
その通りです。
今日も こんな相談が
杉材で 末口24~26 長11M 70本
何に使われるのかと聴くと 杉丸太を使い
ログハウスを建てるのだと
ほぼ 直材で70本 すぐ手配できるようで
出来ないのが 国産材の現状なのかと
考えさせられました。
投稿: 1150 | 2009/11/30 23:29
全小売り業界に、地鳴りが響いている気がします(^^;)。
高い商品が売れないだけでなく、品質が高い代わりに価格も高い品も売れないのです。安くて、安い割には品質がそこそこいいものだけが売れる。消費者は、ある意味貪欲になったのでしょうか。真っ当な対価を払いたがらない。あるいは、そんな不当に安い品を供給する小売業界の問題でしょうか。
11mの直材を70本。これは、やはりきついかな。
投稿: 田中淳夫 | 2009/12/01 00:32
デフレとはいいますが、過去のそれと今回とはちょっと状況が違うんでしょうね。
購買力は悲観するほど落ちているわけではない。しかし消費者意識の変化に気づかない事業は、これからどんどん潰れて行くでしょうね。
起業や資産投資するなら、50年ぶりのチャンスですよ。
投稿: kao | 2009/12/01 12:06
おそらく金持ちも、今はお金を使わなくなっているんでしょうね。
起業や投資のチャンスか。消費者が何を求めているか、まるで心理戦です(^^;)。
投稿: 田中淳夫 | 2009/12/01 19:48
家具業界については、
高級家具の流通は、百貨店頼みのところがあったので百貨店の展示スペースがなくなると大きく売り上げを減らすんでしょう。
イケアやユニクロは、商品開発から販売までしているところですね。(イケアは、代理店契約の時は撤退している)
90年代に家具メーカーは、デザインに力を入れたり薄利多売するなど努力していたのが取り上げられていたのだけどその後を聞かないなあ。
敵は、クローゼットだったり作り付けの家具にもあると思います。
その中に入れるのも押入れダンスが収納ケースやパイプハンガーに変わってきていたりしていて。木製品から鉄や樹脂に変わってきてますね
玄関の下駄箱も見当たらなくなってきてますね。
売れるのはダイニングテーブルとその椅子ですか。
リビングのソファーとかもありますか。
家電と違って中小のメーカが多いので気に入った同じ商品を何軒か店を回って値切るということはなかなか出来ませんね。(比較できるのは同じサイズとかの類似商品がほとんどです。)
投稿: -神戸のキコリ | 2009/12/02 05:20